2013 Fiscal Year Research-status Report
抗菌界面活性剤のアクリルレジンへの安定分散とレジンのバルクおよび表面物性への影響
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24592927
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
根津 尚史 岩手医科大学, 歯学部, 講師 (40264056)
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Keywords | 抗菌界面活性剤添加アクリルレジン / 機械的物性 / 溶出成分分析 |
Research Abstract |
本課題は、抗菌性陽イオン界面活性剤である塩化セチルピリジニウム(CPC)を添加した床用アクリルレジンを調製し、CPCの添加がレジン物性に及ぼす影響と添加されたCPCの抗菌効果を評価することを目的とし、初年度にはレジンへのCPCの均一な添加の方法を検討するとともに、各添加方法で調製したアクリルレジンの機械的性質(曲げ強さ、硬さ)と吸水性および重合体からの成分(CPC、未重合モノマー)溶出特性について調査(実験)を行った。 この結果に基づき、CPC添加アクリルレジンの機械的強度についての解析・考察を行った。CPCとレジンモノマーの共溶媒であるエタノールにCPC粉末を一旦溶解する方法で添加した場合(共溶媒法)、CPCをレジン粉材に直接混合・添加した場合(単純添加法)よりも曲げ強さが低下するとともにビッカース硬さも小さくなった。床そのものとして使用するには不利であるが、重合型のアクリル系裏装材(準軟質裏装材)として使用できる可能性が浮上した。共溶媒法では、CPCを粉末状態で添加する単純添加法に比べてCPCの溶出が少ない点は、CPCの抗菌効果をその強さと持続期間の2方向で考えるとき後者に関連し、頻繁な再裏装を避けられる利点につながると考えられる。一方、吸水性が単純添加法よりも共溶媒法で高かった点については、粘膜に対する親和性が向上することが利点として働く可能性が示唆された。一般に、親水環境下では微生物が増殖しやすい点が問題視されるが、材料表面が抗菌性を有するならばこの問題は解決できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.本年度分の課題遂行上必要な現有分析機器(赤外分光光度計)の修理を昨年度申告の計画に沿って行ったが回復に至らず、優先課題としていたレジン着色成分の分析・同定を計画通り進めることができなかった。その結果、変色と機械的性質低下の関連性の解明ができていない。 2.試作レジンを用いて実際に義歯床を製作する応用課題については、連携・協力予定者のスケジュールの都合で進行が遅れている。 以上、2点が「進行がやや遅れている」とした理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
主要到達目的である抗菌性評価の実験を実施する。所属機関微生物学分野の協力の下、義歯性口内炎、誤嚥性肺炎の原因となるCandida albicansに対するCPC添加アクリルレジンの作用を、菌液濁度測定と培地阻止円測定により評価する。 これと並行して、単純添加法、共溶媒法の各方法で調製したCPC添加アクリルレジンの機械的強度の解析をより精密に行う。すなわち、曲げ強さおよび硬さ測定における負荷-変形曲線から外力に対する粘弾性応答の解析を行い、CPC添加方法と添加量の影響、裏装材としての力学的な適性を検討する。また、材料表面の接触角測定により、吸水性と親水性の関係を明示する。共溶媒法で生じた変色については、赤外のほか蛍光、円二色性などの光学物性測定により着色成分の分析を行う。さらに、可能であれば試作レジンを用いて義歯床を製作し、口蓋への吸着特性など実用的な性質の評価も試みる。 なお、使用分析装置の故障による課題遂行遅延については、平成26年度から所属機関がかわり、異動後の研究環境では同等機器の利用が可能なためこの障害は解決した。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.機器修理費:課題遂行上必須の現有機器(赤外分光光度計)の大掛かりな修理が年度末に見込まれたが、修理作業進行の都合で年度内の修理完了が困難とみられたため、その費用を翌年度予算に計上する必要があった。 2.機器移設費:助成期間内に異動があり、課題遂行に必要な現有機器(円二色性分散計、分光蛍光光度計)の移設と調整が必要となり、そのための予算を計上する必要が生じた。 1.機器修理費:前年度末に最小限の一次修理が完了し、この費用が想定額を大きく下回り年度内予算での支払いが可能となったため、年度繰越を見込んでいた修理費は以下の機器移設費に充てることとする。 2.機器移設費:現在移設作業が進行中であり、5月下旬をめどに機器調整も含めた移設作業が完了すると見込まれる。これに伴う費用(約58万円)の速やかな支出を予定している。
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