2012 Fiscal Year Research-status Report
POCTとして唾液中亜鉛結合タンパク質を指標とした迅速な味覚障害評価法の臨床応用
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24592928
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
島崎 伸子 岩手医科大学, 歯学部, 常任研究員 (30337258)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 味覚障害 / 唾液 / 炭酸脱水酵素 / イムノクロマト / 濾紙ディスク法 / ELISA / 高齢者 |
Research Abstract |
【目的】耳下腺唾液中37kDa亜鉛結合タンパク質である炭酸脱水酵素(CA)VI型(Gustin)が味覚機能に関与するとの報告に基づき、CAVIに対する抗体を作製し、ELISAによるGustin濃度を検出する方法を確立した。現在まで味覚障害患者のGustin濃度は、健常者の3分の1程度、血清亜鉛値とGustin濃度との相関、亜鉛内服治療による比較検討を行ってきた。さらに、味覚障害患者に対してPOCTとしてイムノクロマト法を用いた体外診断薬を簡便迅速に応用することを目的とし、味覚正常者の唾液における基礎的反応性評価試験を行った結果、陽性コントロール(合成ペプチド)と希釈バッファーにおいて発色の差異が見られることを明らかにしてきた。そこで味覚障害患者の唾液を検体としてイムノクロマトの有効性を検討した。 【方法】1. イムノクロマト法による測定:健常成人と味覚障害を主訴として冨田耳鼻咽喉科を訪れた患者の耳下腺開口部より唾液を吸引採取し、サンプルとした。また、味覚閾値測定を濾紙ディスク法にて施行した。金コロイド溶液は40nm、メンブレンはHi-Flow Plus120、テストライン用抗体はヒトCAVIの合成ペプチドに対して作製した抗体、コントロール用抗体はSwine anti-rabbit IgG抗体を用いた。またライン発色はイムノクロマトリーダにて測定した。 2.至適唾液希釈濃度の検討:陽性コントロールとして唾液サンプルを10倍から1280倍までの希釈系列に調整し、陰性コントロールにはPBS(-)を用い、イムノクロマトリーダにて測定した。 【結果と考察】唾液希釈倍率は10倍から80倍の間で、濃度依存的にライン発色が認められたため、同範囲内で希釈し測定した。味覚障害者では発色反応が薄く、CAVI濃度が健常者より低い傾向が認められた事により、味覚障害の診断法として確立される可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は、味覚障害患者の唾液を検体としてイムノクロマトの有効性について基礎的検討を行った。イムノクロマト法はAnalyteが毛細管現象により多孔質支持体内を移動することを利用した方法で、検体に含まれる抗原の有無を10分程度でone stepで簡単に診断することが可能である。唾液サンプル中のCAVIと金コロイドで標識された感作抗ヒトCAVI抗体が反応し、結合物を作る。次にこの結合物が移動し、抗ヒトCAVI抗体に補足され、サンドイッチの結合物を作り、その結果コロイドが凝集し、テストライン部に赤紫色の線が表示される。すなわち、唾液サンプル中にCAVIが少ない場合は発色反応が薄くなり、味覚障害の可能性があることになる。 対象は実験に同意の得られた健常成人と味覚障害を主訴として冨田耳鼻咽喉科を訪れた患者とし、耳下腺唾液を開口部より吸引採取し、サンプルとした。また、味覚閾値測定を濾紙ディスク法にて施行し、その他必要な背景は該当病院へ出張をし、確認した。 唾液希釈倍率は10倍から80倍の間で、濃度依存的にライン発色が認められたため、同範囲内で希釈し測定した。味覚障害者のCAVI濃度は、健常者より低い傾向が認められた。しかし、被験者の多くは東京の耳鼻科病院の協力によるものであるため、頻繁には唾液採取の現場に向かうのは困難であるため、やや遅れた状況となっている。一方、現在行っているイムノクロマト法はハーフストリップ法であり、基準データを構築するには、さらなる被験者数を増やし、イムノクロマト法の完成を目指すことが必須である。
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Strategy for Future Research Activity |
イムノクロマト法のベースとなるハーフストリップにては、基礎的データは進んでいるも、フルストリップでの研究を本年度はすすめてく予定である。さらに、イムノクロマトの確立のためには、味覚異常者および味覚正常者、若年者、高齢者、義歯装着者、非装着者などの各々の段階の被験者数を増やし、基準となるデータを構築する必要がある。さらに、簡便迅速な体外診断薬を目指しているので、唾液の濃度、発色の濃度、発色までの時間も含め、詳細な検討も加えていく予定である。また、平成25年度後半は、採取した実験データの解析とまとめも行い、味覚と唾液、炭酸脱水酵素の3つの関連性を高めるような研究につなげていく。研究成果を味と匂学会など関連学会にて報告し、論文は専門学会誌に投稿を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
イムノクロマトの確立のために、基礎的に必要となる合成ペプチドや抗体は 必要品目となる。また、消耗品であるデータ保存用USBや解析に必要なソフト、ガラス器具なども合わせて必要となる。また、処理速度を速めるために、パソコンも場合によっては必要となる。
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