2012 Fiscal Year Research-status Report
日常生活におけるストレスは有床義歯による咬合支持回復の効果に影響するか?
Project/Area Number |
24592943
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Dental University |
Principal Investigator |
前田 照太 大阪歯科大学, 歯学部附属病院, 教授 (10103110)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 咬合支持喪失 / ストレスマーカー / 唾液 / 起床時コルチゾール反応 |
Research Abstract |
本研究の目的は、大臼歯部欠損患者に義歯を装着し、その前後の内分泌系と免疫系の様々な唾液中ストレスマーカーの変化と日常のストレスや気分との関連などを表すとされる起床時コルチゾール反応(CAR)との関連を検証することにより、咬合支持回復が身体に及ぼす影響と日常のストレスとの関係を科学的に明確にすることである.またどのようなストレスマーカーを組み合わせることが客観的評価につながるか、かつ簡便で妥当性の高い評価法を開発することも目的の1つである. 今年度はまずCARの検証を健常被験者で行った.日常のストレスや気分との関連などを表すとされる起床時コルチゾール反応の測定、心理的、身体的両面が測れる自己評定式のストレス反応尺度〔ストレスチェックリスト・ショートフォーム;PHRF-SCL (SF)〕を調べ、その関連を明らかにするため、健常有歯顎者男性9名(25~29歳)を被験者とした.被験者に唾液採集用チューブのサリベットを手渡し、起床直後から15分おきに5回唾液の採取を依頼した.その結果4名の被験者が、起床後約30分後にピークを示すCARが認められた.2名は15分後、他の2名は起床直後が最も高く、1名はピークを示さなかった.またPHRFの値との関連は認められなかった. 咬合支持域が一部またはすべてが喪失した患者に対する局部床義歯装着による咬合支持回復の効果について、義歯を装着していない患者4名について.義歯製作過程で、アポイントごとに唾液の採取を行い中長期の観察を行った.但しサーカディアンリズムを考慮して、アポイントはほぼ同じ午後の時間に行った.また印象採得、義歯装着およびその約1ヶ月後に起床時コルチゾール反応のための唾液採取とPHRF-SCL(SF)の検査を行った.義歯装着1か月後にはコルチゾール濃度と免疫グロブリンが低下したが、サンプルが少ないため統計的には有意差は見られなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度はまずCARの検証を健常被験者で行った.個人差がきわめて大きかったが、とくにピークを示す時間が異なっており、被験者がプロトコール通りに起床直後から唾液採取を行ったかどうか疑問が生じたため、再びプロトコールを説明し、データの採取をやり直した.また起床直後の1回目の採取時間を確認したところ、起床時間とずれていると考えられた被験者のデータは分析せずに省いた.また大臼歯欠損の患者から本研究の趣旨に同意し協力を得られるものが少なかった.これらの理由から当初の研究計画より進捗状況が遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は大臼歯欠損の患者から本研究の趣旨に同意し協力を得られるものが少なかったため、次年度は被験者の協力を他科にも求め、多くの研究データを集積する予定である.25年度は引き続き正常被験者のCARの検証と咬合支持喪失患者のデータの蓄積を積極的にすすめる. 研究実績の概要に述べたように、起床時コルチゾール反応は個人差のみならず、影響要因として前日の就寝時間、起床時間、睡眠時間、睡眠の質などあり、これらについて25年度はアンケート項目に加える.また鬱の影響も報告されているため、Hamiltonうつ病評価尺度も調査項目に取り入れる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究に用いる唾液分析用ELISAまたはEISAキットは、比較的使用期限が短く使用前に新規購入しなければならない.今年度は大臼歯欠損の患者から本研究の趣旨に同意し協力を得られるものが少なかったため、唾液分析に使用するELISAまたはEISAキットの使用量が少なく、次年度使用額が生じた.次年度は被験者の協力を他科にも求め、多くの研究データを集積する予定である.唾液分析についてはアミラーゼ、sIgA、NGF、CgA、コルチゾール、DHEA-SのELISAまたはEISAキットを使用し、分析結果の正確性を期するために1サンプルにつき3以上のウェルを使用する.これらは本研究を遂行するに当たり必要不可欠なものであるため、ELISAキットを消耗品として研究経費の多くを使用する.また分析のための実験補助費を計上した. さらに25年度は国内での研究成果発表を計画している.
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