2013 Fiscal Year Research-status Report
日常生活におけるストレスは有床義歯による咬合支持回復の効果に影響するか?
Project/Area Number |
24592943
|
Research Institution | Osaka Dental University |
Principal Investigator |
前田 照太 大阪歯科大学, 歯学部附属病院, 教授 (10103110)
|
Keywords | 咬合支持喪失 / ストレスマーカー / 唾液 / 起床時コルチゾール反応 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き日常のストレスや気分との関連などを表すとされる起床時コルチゾール反応(CAR)の検証を健常被験者で行った.CARの測定、心理的、身体的両面が測れる自己評定式のストレス反応尺度〔PHRF-SCL(SF)〕を調べ、その関連を明らかにするため、健常有歯顎者男性12名(25~29歳)を被験者とし、唾液採集用チューブを手渡し、起床直後から15分おきに5回唾液の採取を依頼した.5名の被験者が、起床後約30分後にピークを示すCARが認められた.2名は15分後、他の2名は起床直後が最も高く、1名はピークを示さなかった.PHRF-SCLとの関連は見いだせなかった. どのような唾液中ストレスマーカーを組み合わせることが客観的評価につながるかを調べる目的で、健常被験者5名の口蓋に圧刺激を与え疼痛を誘発し、コルチゾール(Crt)、α-アミラーゼ(AA)、免疫グロブリン(sIgA)、クロモグラニンA(CgA)を分析した結果、CrtとAAが疼痛と相関がみとめられ、sIgAが不快感と弱い相関が認められた. 咬合支持域が一部またはすべてが喪失した患者に対する局部床義歯装着による咬合支持回復の効果について、義歯を装着していない患者6名について、義歯装着およびその約1ヶ月後に起床時コルチゾール反応のための唾液採取とPHRF-SCL検査を行った.義歯装着後、床下粘膜の不快症状が認められた3名の患者は、その当日CrtとAA活性が術前の義歯を装着していない時より上昇した.義歯装着1か月後にはCrtとsIgAが低下したが、サンプルが少ないため統計的には有意差は見られなかった.PHRF-SCLの高い患者は、新義歯に対する不快、疼痛のVASが高い傾向が認められた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度同様、CARの検証を健常被験者で行った.個人差がきわめて大きかったが、とくにピークを示す時間が異なっており、被験者がプロトコール通りに起床直後から唾液採取を行ったかどうか疑問が生じたため、再びプロトコールを説明し、データの採取をやり直した.また起床直後の1回目の採取時間を確認したところ、起床時間とずれていると考えられた被験者のデータは分析せずに省いた. また咬合支持の一部またはすべてが喪失している患者で、義歯を使用していないものがきわめて少なく、初めて義歯を装着する患者の見出すことが困難であるため、とくに患者のデータの収集が遅れている. これらの理由から当初の研究計画より進捗状況が遅れている.
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度同様、今年度も大臼歯欠損の患者から本研究の趣旨に同意し協力を得られるものが少なかったため、被験者の協力を他科にも求めた.しかし多くの同意を得られる被験者が少なく、義歯の経験のある患者も含めて研究データを集積する予定である.26年度は引き続き正常被験者のCARの検証と咬合支持喪失患者のデータの蓄積を積極的にすすめる. 研究実績の概要に述べたように、起床時コルチゾール反応は個人差のみならず、影響要因として前日の就寝時間、起床時間、睡眠時間、睡眠の質などあり、これらについて26年度はアンケート項目に加える.また鬱の影響も報告されているため、Hamiltonうつ病評価尺度も調査項目に取り入れる. ストレス反応尺度と不快感、疼痛との関連が示唆されたため、健常被験者に不快感、疼痛を与え、さらに計算など精神的負荷を与えた場合の唾液中ストレスマーカーの変化を調べる.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の多くは患者を研究対象としているため、義歯を装着したことがない大臼歯欠損患者で同意が得られる被験者の確保が難しく、研究が遅れているため本年度未使用額が生じた. 本研究では唾液中のストレスマーカーを分析するELISAキット、試薬等に研究費の大半を費やしている. 次年度も分析用ELISAキット等に使用する。
|