2014 Fiscal Year Research-status Report
日常生活におけるストレスは有床義歯による咬合支持回復の効果に影響するか?
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24592943
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Research Institution | Osaka Dental University |
Principal Investigator |
前田 照太 大阪歯科大学, 歯学部附属病院, 教授 (10103110)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 咬合支持喪失 / ストレスマーカー / 唾液 / 起床時コレステロール反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き日常のストレスや気分との関連などを表すとされる起床時コルチゾール反応(CAR)の検証を高齢被験者で行った.CARの測定,心理的,身体的両面が測れる自己評定式のストレス反応尺度〔PHRF-SCL(SF)〕を調べ,その関連を明らかにするため,健常高齢男性6名(65~78歳)を被験者とし,唾液採集用チューブを手渡し,起床直後から15分おきに5回唾液の採取を依頼した.いずれの被験者も起床直後が高いがCARのピークは示さなかった. どのような唾液中ストレスマーカーを組み合わせることが客観的評価につながるかを調べる目的で,身体的,心理的ストレスを組み合わせ,それぞれの刺激に対してのマーカーの反応の違いを分析し,主観的評価との関連について検討した.健常被験者8名の口蓋に実験的口蓋床{1,違和感刺激を付与するための口蓋後方まで被覆させたもの(以下d),2, 疼痛刺激を付与するために上記口蓋床に直径2.5mm厚さ0.5mmのアクリル板を貼付けたもの(以下p)} を装着,コントロールとして非装着の3種の条件下で,精神的負荷を模した暗算をさせた. α-アミラーゼ(AA),コルチゾール(Crt),NGF,免疫グロブリン(sIgA),クロモグラニンA(CgA)を分析した結果, 計算負荷時には,CgA,NGF,AAが有意に上昇した.口蓋条件についてはAAはcontと比較しd,pで上昇し,NGFでは減少を示した(p<0.05).その中でもCgAは条件pで有意に高い値を示した.sIgAでは有意な変化を認められなかった.しかし,特性不安とは(r=0.57)中等度の相関を示し慢性ストレスの指標として有用であることが示唆された.マーカーそれぞれ刺激に対して同じように有意な反応を示すが,CgAは精神的ストレスがあると疼痛をより感知しやすく,その指標としてCgAが有用であることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度同様、CARの検証を健常高齢被験者で行った.個人差が大きかったが、とくにピークを示す被験者がいなかったため,被験者がプロトコール通りに起床直後から唾液採取を行ったかどうか,高齢者特有のものであるか疑問が生じた.そのため再びプロトコールを説明し,データの採取をやり直し,さらに被験者を増やす必要性が考えられた.また起床直後の1回目の採取時間を確認したところ,起床時間とずれていると考えられた被験者のデータは分析せずに省いた. また咬合支持の一部またはすべてが喪失している患者で,義歯を使用していないものがきわめて少なく,初めて義歯を装着する患者の見出すことが困難であるため,とくに患者のデータの収集が遅れている. これらの理由から当初の研究計画より進捗状況が遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も大臼歯欠損の患者から本研究の趣旨に同意し協力を得られるものが少なかったため,被験者の協力を他科にも求めた.しかし多くの同意を得られる被験者が少なく,義歯の経験のある患者も含めて研究データを集積する予定である.引き続き正常被験者のCARの検証と咬合支持喪失患者のデータの蓄積を積極的にすすめる. 研究実績の概要に述べたように,起床時コルチゾール反応は個人差のみならず,影響要因として前日の就寝時間,起床時間,睡眠時間,睡眠の質などあり,これらについてはアンケート項目に加えさらに高齢被験者のデータを追加する. ストレス反応尺度と不快感,疼痛との関連が示唆されたため,健常被験者に不快感,疼痛を与え,さらに計算など精神的負荷を与えた場合の唾液中ストレスマーカーの変化を調べ,ぞれの刺激に対してのマーカーの反応の違いを分析し,主観的評価との関連についてさらに検討する.
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Causes of Carryover |
本研究の多くは患者を研究対象としているため、義歯を装着したことがない大臼歯欠損患者で同意が得られる被験者の確保が難しく、研究が遅れているため本年度未使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究では唾液中のストレスマーカーを分析するELISAキット、試薬等に研究費の大半を費やしている. 次年度も分析用ELISAキット等に使用する。
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