2013 Fiscal Year Research-status Report
歯の予後予測に基づく個別化補綴治療の確立に向けた骨質研究
Project/Area Number |
24592945
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
松浦 尚志 福岡歯科大学, 歯学部, 准教授 (60330966)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 博信 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (00145955)
徳富 健太郎 福岡歯科大学, 歯学部, 助教 (20508981)
片渕 三千綱 福岡歯科大学, 歯学部, 助教 (90454933)
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Keywords | コラーゲン / 下顎骨 / 歯 / ミネラル / 骨基質 |
Research Abstract |
ヒト献体を用いて,まず下顎骨の主要骨基質の個体差および年齢と性への依存性を調べ,さらに骨基質と残存歯数との関係を検証した.献体は男性27体,女性21体の計48体を用い,年齢層は男性で56~93歳,平均76.7歳,女性で63~103歳,平均83.9歳であった.骨試料はオトガイから採取した.骨基質の分析はミネラルとコラーゲンについて行い,骨灰量から測定されるミネラル量,骨のアミノ酸分析から測定されるコラーゲン量およびコラーゲンリジン残基の水酸化の程度を骨基質の指標とした.3つの骨基質指標ともに献体間で大きな個人差を認めたが,年齢および性別に対しては非依存性であった.3つの骨基質指標をその平均によって多量群と少量群の2群に分類し,下顎残存歯数を比較した.ミネラル量では残存歯数が多量群(4.08±5.20本)と少量群(2.88±3.54本)との間に統計学的な相違を示さず(p=0.35),コラーゲンリジン残基の水酸化の程度についても同様であった(多量群:3.73±4.19本,少量群:3.27±4.72本,p=0.73).コラーゲン量での比較では,残存歯数が多量群(4.90±5.29本)において少量群(2.55±3.60本)の2倍近い本数を示したが,統計学的有意差は認められなかった(p=0.07).コラーゲン量の多量群と少量群の年齢差の相違は認められなかったが,年齢,性別,ミネラル量,コラーゲンリジン残基の水酸化の程度をcovariateとしたANCOVAによる統計分析を行ったところ,コラーゲン量と残存歯数との有意な関連は認められず(p=0.30),むしろ年齢が有意な関連を示した(p=0.005). 以上より,歯数の減少に寄与する年齢ほどの強い寄与因子ではないものの,骨基質中のコラーゲン量は歯の寿命に少なからず関与する可能性が推測された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
下顎骨中のコラーゲン量が少なからず歯の残存歯数に寄与する可能性が示唆され,本研究の仮説が的外れでないことが示され,次なるステップへと移行できるため.
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Strategy for Future Research Activity |
下顎骨の骨基質の中でもコラーゲン量が歯の寿命に少なからず寄与する可能性が示唆されたが,上顎骨のコラーゲンの様相は全く分かっていない.上顎骨のリモデリングのスピードは犬において下顎骨の1/2であると報告されており,コラーゲンの量とコラーゲンの質的性状を決定するリジン残基の水酸化の程度に代表される翻訳後修飾の程度の様相が上顎骨において異なる可能性が推測される.ヒト臨床研究に入る前に上顎骨と下顎骨のコラーゲンの相違の有無と骨の部位による相違の有無を明らかにしなければ,コラーゲン分析データを信用できるものとして使用することができない.そのため,ブタの上顎骨と下顎骨のコラーゲン分析を行うこととする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ヒト献体を用いた実験で骨の分析をオトガイの一か所と制限したため,若干の研究費の余りが生じた. ブタの骨の分析では,下顎骨のみならず上顎骨でも検討し,さらにそれぞれの骨で数か所検討予定である.従って,残りの研究費をも有効に使用できる予定である.
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Research Products
(3 results)