2013 Fiscal Year Research-status Report
生体活性無機ナノ粒子-有機ハイブリッド膜の創製とその化学的特性の評価
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24592953
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
大川 成剛 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (80143791)
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Keywords | 電解 / ハイブリッド被膜 / チタン / PMMA |
Research Abstract |
生体活性をもつナノ粒子の無機化合物と有機薄膜とのハイブリッド膜の創製を最終目的としている.生体活性をもつ無機化合物としてはリン酸カルシウムが挙げられるが,はじめにジルコニア,アルミナとルチルを選択し,これら酸化物をステアリン酸処理し,脱溶媒処理した.つぎにチオフィン系導電性試薬を非プロトン溶媒に溶解し,これをMMA(メチルメタクリレート)に加えた.この溶液にステアリン酸処理した酸化物を加え電解液とした.鏡面研磨したチタン板をカソード,Pt板をアノードとし電解処理を次のようにおこなった.試料と対極との距離を2 mmとし,20 VDCを3,600 s印加した.この際,マグネットスターラーを用いて電解液を撹拌した.カソードのチタン板上に有機無機の複合体が生成した.その分析には,X線マイククロアナライザー(EPMA),フーリエ赤外分光(FTIR)と原子間力顕微鏡(AFM)を用いた. その結果,EPMAの結果から有機物中に酸化物が分散していることが分かった.またFTIRの結果から, 3000 cm-1付近のC-H, 1731 cm-1 C=O, 1385 cm-1 CH3, 1240-1150 cm-1 C-O-Cに吸収スペクトルが確認された.これらのピークからMMAが電解重合しPMMA(ポリメチルメタクリレート)が生成したことが推測された.さらに導電性モノマーであるチオフィン由来のC-Cの1520,1385と753 cm-1のスペクトルも確認されたことから,有機薄膜はチオフィンを含むPMMA様有機物であると思われる.これは,いずれの酸化物においても確認された.PMMA様の有機薄膜と酸化物とのハイブリッド被膜の3次元AFM像とEPMAの酸化物の元素分布から,酸化物の粒子の大きさはサブミクロンと推測された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電解によってナノ酸化物を含有する有機被膜を創製し,その化学的特性を解析することを目的とした.有機薄膜を創製するにあたり,最適な電解条件と電解液の組成を決定することである.電解液はチオフィン系導電性試薬を非プロトン溶媒に溶解し,これにMMAを加えた.この電解液の組成決定がおおむね予定通りに進み,電解による有機被膜の合成ができた.つぎに,無機-有機ハイブリッド膜を生成する方法として次の2つの方法を検討した.まず始めに金属基板に有機薄膜をコーティングし,つぎに酸化物を電解により有機薄膜上に析出させる.これらの操作を繰り返すことで,目的とするハイブリッド膜を創製する.第二の方法は,一回の電解によってハイブリッド被膜を創製する方法である.いずれの方法においても,酸化物の表面処理が必要となり,種々の表面処理を検討した.本研究では,ステアリン酸をアルコールに溶解し,酸化物を加え加温し,その後,脱溶媒処理し,酸化物の粉末を得るステアリン酸処理を採用した.処理した酸化物を準備した電解液に加え,電解処理をおこなった. 以上の二つの方法を検討したところ,第二の方法が安定したハイブリッド膜の生成に適していた.創製された無機-有機被膜の特性をEPMA, FTIRとAFMにて解析したところ,有機被膜はPMMAであった.また,酸化物の粒径はサブミクロンであった.さらに,電解液に水やメチルアルコールを加えると電解重合が進むことがわかり,これらは重合を促進する役割があると推察された. つぎに電極(金属基板)上でおこる電解重合の挙動を検討するために,クォーツクリスタルマイクロバランス(QCM)用の電解セルを製作した.このように研究課題はおおむね順調に進展していると思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
実験用に製作した電解セルにチタンまたはステンレスをコーティングした水晶発振子を取り付け,QCMによる粘弾性測定の結果から電解重合の機序の検討を継続しておこなう.QCMの水晶発振子を電極とすると,電解液中のMMAからPMMAが生成する際に水晶発振子(電極)表面に付着するMMAの粘性変化が検出される.これにより電極表面でおこる電解挙動が推察できる.電解重合には,導電性の試薬の他に水やメチルアルコールが関与していることが推察されたので,電解条件が電解によるラジカルの生成におよぼす影響について検討する. 電解によって創製されたハイブリッド被膜における無機(酸化)物と有機被膜との結合について調べるため,ハイブリッド被膜の接着試験をおこなう.その破壊面観察から酸化物と有機被膜との結合様式を推測する.結合が不完全であれば,酸化物をシラン処理して,同様な電解方法によりハイブリッド被膜が創製できるか検討する.また,FTIRやX線光電子分光(XPS)により創製したハイブリッド被膜の特性を解析する.さらに,AFMを用いて被膜の表面形状を観察する. 酸化物の代わりに生体活性であるリン酸カルシウムと有機被膜のハイブリッド構造をもつ機能性被膜の創製を目指す.その際にリン酸カルシウムの表面処理がキーとなると推測される.すでに,リン酸カルシウム水溶液を電解処理すると電極基板上にハイドロキシアパタイトが析出することを確認している.この結果を基にリン酸カルシウム水溶液とMMAの二相混合液を電解液として電解処理すると,生体活性をもつナノ粒子のリン酸カルシウムとPMMAのハイブリッド被膜が創製されるかを検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
表面分析装置の使用料の概算見積額と確定した支払額に差があったため. 表面分析装置の使用料に充てる.
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Research Products
(2 results)