2012 Fiscal Year Research-status Report
リン酸三カルシウムを基材としたベクトルマテリアルの開発
Project/Area Number |
24592957
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
河野 文昭 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (60195120)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浜田 賢一 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (00301317)
篠原 千尋 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (50332820)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | TCP / HAPセメント / 圧縮強さ / 間接引張強さ / アモルファス |
Research Abstract |
ハイドロキシアパタイト(HAP)に代表されるリン酸カルシウム系材料は骨補填材として臨床応用されている。アパタイト (HAP) 焼結体は高い強度を示すことから骨代替材料として用いられるが、生体吸収性に劣る。そこで本研究では強度だけでなく溶解性と生体吸収性を両立できるリン酸カルシウムセメントとして、リン酸三カルシウム(TCP)系HAPセメントにボールミリングをかけてアモルファス状態の粉末にして早く最終の強度を到達することを期待した。ボールミリングは粉末X線回折(XRD)を用いて確認した。 セメントの基材粉末にはβ-TCP粉末を用いた。セメント練和液として、 第1水溶液(L1)として塩化カルシウム(CaCl2)、 第 2水溶液(L2)としてリン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)をリン酸含有溶液として使用した。 練和時の粉液比(P:L1:L2)は4:1:1 に練和し、セメント硬化体を得た。得られた硬化体を37℃湿度100%の恒温槽中で、24時間および3日、1週間、2週間保持した。 機械的性質は圧縮強さ(CS)と間接引張強さ(DTS)により評価し、セメント硬化体の表面と破断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。 その結果、 ボールミリングを掛けたセメント硬化体のCSとDTSがコントロールより有意に上昇した。 さらに2週間保持したコントロールより24時間保持したボールミリング硬化体の硬度のほうが高かった。SEMで 観察し、硬化1週後のセメントでは稠密な表面で気泡も少なく、TCPの消失とアパタイトが生成がを推定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生体内で高い吸収性と薬物徐放性を有する骨補填材を創製するため,リン酸カルシウムセメント中にイオン半径の大きいバリウムの導入を試みた。αーTCPに直接バリウムを導入しただけでは,硬化速度が遅く,固体化しない。そこで,セメント基材粉末をαーTCPからβーTCPに換え,これをアモルファス化し,バリウムの導入を試みる予定である。アモルファス化したTCPセメントを塩化カルシウムとリン酸二水素ナトリウムで硬化させると,従来型TCPセメントに比べると,圧縮強さ,間接引張強さが約10倍にあることがわかった。また,SEM観察で気泡発生率が少なく,このため高強度が得られた。この結果は,予想に反したものであり,本年度は,この試作TCPセメントの基本的な性質について検討し,硬化挙動や結晶性の状態を検討した。バリウム導入実験は行っていないものの概ね良好な研究の進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の結果を基に高強度のTCPセメントにバリウム導入を試み,擬似体液内での溶解度を測定し,体内において溶解度をコントロールできる材料の作成を試みる。セメントの基材を変更したものの溶解性を向上させすことは可能であるため,引き続き最適条件を検討する。併せて,本セメントは,非常に高強度なため,アクリルセメントと同様の利用法を適するようにセメント硬化体の吸収を抑制する方策を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.昨年度の結果を基に高強度のTCPセメントにバリウム導入を試み,擬似体液内での溶解度を測定し,体内において溶解度をコントロールできる材料の作成を試みる。 2.1.で作成したセメント硬化体の機械的強さの測定を行う。 3.骨芽細胞を用いて細胞培養試験を行い生体親和性,骨伝導性の試験を行う。 4.アモルファスTCP硬化体の擬似体内での溶解速度を測定し,硬化体の溶解を抑制するために焼成温度,時間等の条件を変えて,検討する。 次年度への繰越額は,細胞培養試験で遺伝子解析を行うため,これに使用する予定である。
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