2012 Fiscal Year Research-status Report
フィクスチャ埋入時の偶発症予防に寄与する上顎洞周囲血管神経の形態観察
Project/Area Number |
24592959
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
田松 裕一 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (80266569)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西原 一秀 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (30253892)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 解剖学 / 上顎骨 / 上顎洞 / インプラント / フィクスチャ / 血管 / 神経 / 偶発症 |
Research Abstract |
歯科インプラント治療は有用な補綴治療方法であるが,偶発症の問題点も指摘されている。上顎骨に注目した場合,フィクスチャを埋入するために歯肉弁の形成,ドリリングあるいは上顎洞底の挙上を行う際に,上顎洞底や上顎洞壁に沿って走行する血管や神経を損傷することによる予想外の出血や術後の麻痺などが挙げられる。上顎骨の複雑な形態や,有歯顎と無歯顎では歯槽骨と血管・神経の位置関係が大きく異なることなどが要因と考えられるが,これらの形態についての解剖学的な報告は少ない。そこで,本研究は上顎骨にフィクスチャを埋入するための歯肉弁形成,ドリリング操作あるいは洞底挙上術などに際し,外科的処置に伴う偶発症を防止するために,上顎洞内部および周囲の血管・神経の走行形態を詳細に観察・解析・提示することを目的とした。 本年度は実習用遺体から観察材料を摘出し,頭蓋の眼下底部のやや上方で水平断,翼口蓋窩部で前頭断,鼻腔壁のやや内側で矢状断して観察試料を作成し,観察・撮影の準備をおこなった。歯槽孔に入る後上歯槽動脈,眼窩下溝を走行する眼窩下動脈・神経を実体顕微鏡で観察しながら剖出・明示した後,デジタル実体マイクロスコープにて撮影・記録した。次に脱灰過程に備えて歯肉・骨膜など血管・神経以外の周囲の軟組織を可及的に除去し,上顎骨体を中心とする観察用試料ブロックとして調整した。 これまでに得られた肉眼観察による所見の一つとして,眼窩下孔を出た後の眼窩下動脈の枝と後上歯槽動脈の枝が上顎骨体外壁の頬骨下稜の下で交通する血管が頻繁に認められた。この交通枝には解剖学的名称が定められておらず,また成書での記述も明確でない場合が多く,術者による認知が必ずしも十分でない可能性があり,特に歯を喪失して一定期間が経過し歯槽突起が吸収された上顎骨において注意が必要と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
観察試料の確保と肉眼的剖出に時間を要し,マイクロCTの撮影まで至らなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床解剖学的視点に基づいた肉眼的観察を継続し,さらにマイクロCTとSihler染色による神経の観察まで精力的に進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度に計画していながら執行できなかった染色用薬品類の購入やマイクロCTの撮影に必要な費用に充当する。
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