2013 Fiscal Year Research-status Report
インプラント周囲上皮の口腔粘膜疾患に対するリスク評価法の確立
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24592968
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
矢島 安朝 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (10183667)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 穂高 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (50433959)
本間 慎也 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (70408334)
伊藤 太一 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (80312015)
古谷 義隆 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (80385179)
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Keywords | インプラント周囲上皮 / 口腔粘膜上皮 / 付着上皮 / マイクロアレイ法 / 免疫組織化学染色法 / レーザーマイクロダイセクション法 |
Research Abstract |
インプラント治療患者は、口腔癌の好発年齢層と重なり、またインプラントの粘膜貫通部は慢性的な炎症を伴う環境下であることから、 インプラント周囲上皮は癌を含む粘膜疾患のリスクが高いと考えられる。インプラント周囲炎に関する研究は数多くされているが、インプラント治療に伴う口腔粘膜への影響や粘膜疾患の発症に観点をおいた研究はされていない。本研究の目的は、①インプラント周囲上皮の経時的な遺伝子発現プロファイルを作成、口腔粘膜上皮との比較検討を行ない、②4-NQOを用いた口腔癌の自然発癌実験モデルを用いて、同定された腫瘍関連遺伝子の発現を比較 ・同定し、インプラント周囲上皮の悪性化における特異的な遺伝子を特定することで、インプラント治療に伴う口腔粘膜疾患へのリスク評価法を確立することである。 平成25年度は、動物実験により得られたインプラント周囲上皮および口腔粘膜上皮の遺伝子発現解析を中心に行なった。実験群はインプラント体埋入後のインプラント周囲組織、対照群は治癒後の口腔粘膜組織としGeneChip(Rat genome 430 2.0 array)にてHybridization後に、アレイ統計解析ソフトGeneSprings GXを用いて、網羅的遺伝子発現の検索を行った。発現差の多い遺伝子を抽出し、その後発現差を定量するために定量的RT-PCRを行ない、腫瘍の形成や細胞増殖に関与しているCeacam1, Ifitm1, Muc4の3遺伝子が口腔粘膜上皮に比較してインプラント周囲上皮に多く発現していることが明らかとなった。 現在、これらの遺伝子の局在性を検討するために、免疫組織化学染色法やレーザーマイクロダイセクション法によるインプラント周囲上皮のみのサンプリングを行っている。今後、上皮内において発現上昇が確認された遺伝子について、4-NQOによる自然発癌モデルによって、その発現変化と局在を検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、動物実験によりえられた、インプラント周囲上皮および口腔粘膜上皮のマイクロアレイ法による遺伝子発現解析およびターゲット遺伝子の定量的RT-PCR法を中心に行なった。対象組織のサンプリングには実体顕微鏡をを用い、抽出したtotalRNAの品質評価にはキャピラリー型電気泳動法を用い確認を行った。その結果、マイクロアレイ解析に十分は量および質であることが確認できた。マイクロアレイ解析にはアフィメトリクス社のGeneChipを使用し、解析にはgenespring GXを使用した。解析結果から、口腔粘膜組織と比較しインプラント周囲組織において発現変動が認めたれた(Fold Change 2.0以上)の遺伝子を抽出し、その中には腫瘍の形成や細胞増殖に関与している遺伝子が、インプラント周囲上皮に発現していることがわかった。定量的RT-PCRでは遺伝子の詳細が不明なものや、プライマーがないものに関しては省略し、その中でも発現変度の大きかったCeacam1, Ifitm1, Muc4の3遺伝子の発現量の定量を行なった。インプラント周囲組織における遺伝子発現プロファイルの作成、定量的RT-PCR法による遺伝子発現の定量化は終えており、おおむね計画通りに進展してると思われる。現在はターゲット遺伝子の局在を検討するために免疫組織染色法を行なっているが、口腔組織における染色条件は確立しておらず、抗原賦活化、ハイブリダイゼーションの条件を模索中である。また、実体顕微鏡におけるサンプリングにおいては、結合組織を含む様々な細胞を含むことが考えられることから、今後はレーザーマイクロダイセクション法を用いた対象組織のサンプリングを検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度では、現在までに作成したインプラント周囲組織の遺伝子発現プロファイルから腫瘍発生関連遺伝子を抽出し、これらの遺伝子のタンパクレベルでの発現ならびに局在を免疫組織化学染色にて検討をする。また、これらの遺伝子が上皮組織に限局した発現であるかを確認するために、学顕微鏡下で対象組織のみをサンプリングできるレーザーマイクロダイセクションを法用い、インプラント周囲上皮と付着上皮、口腔粘膜上皮のサンプリングを行い、順次それらの組織においてもマイクロアレイ解析を行っていく。これらの評価から最終的に抽出された遺伝子に対して4-NQO発癌モデル実験による発現変化について検討を行っていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験動物におけるインプラント脱落やマイクロアレイ解析を行うのに必要な条件を満たすtotal RNAの抽出に時間を要したことから、レーザーマイクロダイセクション(LMD)法によるマイクロアレイ解析の開始が遅れ、実験動物の購入・飼育等に必要な費用の一部を次年度に繰り越す必要が生じた。また、それに合わせて使用期限が短いLMD法関連の試薬、自然発癌実験関連の試薬についても、購入を次年度に繰り越すこととした。 平成26年度前期では、LMD法による試料採取用にラットへのインプラント埋入を継続するとともに、自然発癌実験を並行して行っていく。実験手技の確立と大学院生による実験協力が得られることから、昨年度よりも効率的に実験を行うことが出来、実験の進捗状況については概ね順当に進められると考えられる。次年度使用額は、昨年度に購入を予定してLMD法関連試薬、自然発癌実験の関連試薬の購入を予定している。
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Research Products
(1 results)