2012 Fiscal Year Research-status Report
上皮間葉形質転換能を有する口腔癌幹細胞の同定と癌幹細胞を標的とした新規癌治療開発
Project/Area Number |
24592979
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
中田 憲 秋田大学, 医学部, 助教 (50400510)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉山 俊博 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00127242)
福田 雅幸 秋田大学, 医学部, 准教授 (20272049)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 口腔癌 / 癌幹細胞 / Snail / 上皮間葉形質転換 / 浸潤 / 転移 |
Research Abstract |
近年,癌再発や転移の原因として「癌幹細胞仮説」が提唱されている.この仮説は,癌組織中に自己複製を無限に行う癌幹細胞が存在し,不均等分裂により一部が自己複製のサイクルから逸脱して多系列の分化細胞を供給しながら癌組織を構成する考えである.化学療法や放射線療法で大部分の癌細胞は排除されるが,正常な幹細胞と同様な防御機構を兼ね備えた癌幹細胞は残存し,癌幹細胞そのものが再発部や転移巣などで治療抵抗性の原因であると示唆されている.すなわち,癌幹細胞を標的とした新しい治療法を確立することは,再発や転移のリスクが少ない癌治療の開発になると期待される.そのためには,癌幹細胞を同定し,癌幹細胞の特性を明らかにすることが重要である.また,浸潤能を獲得した一部の癌細胞は,転写因子である「Snail」分子を発現させ上皮間葉形質転換を示し,浸潤や転移に有利な形質に可逆的に変化することが示唆されている.申請者は,Snail分子を発現し上皮間葉形質転換能を有する細胞こそが癌幹細胞であると考えている.そこで本研究では,口腔癌の癌幹細胞の分離・同定を試み,上皮間葉形質転換能はSnailを発現した癌幹細胞の特性であることを明らかにする.さらに,Snailは癌幹細胞周囲の癌免疫を抑制し,より浸潤や転移に有利な環境へと癌幹細胞を遊走させることを証明し,SnailやSnailに誘導される分子を阻害することで癌幹細胞を標的とした新たな癌治療法の開発を目的とする. 本年度は,Snail分子を発現する癌幹細胞は,浸潤能や転移能を高めるため上皮間葉形質転換を行い,自己の姿を変化させ,周囲の免疫環境を潜り抜けることを明らかにすることを試みた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Snail遺伝子を組み込んだ発現ベクターの調整に時間を要し,Snail分子を強発現する口腔癌細胞株(HSC-3,HSC-4,KON)の作製が遅れた.
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Strategy for Future Research Activity |
口腔癌に類似した腫瘍形成を示す新規癌幹細胞の表現型の同定をSCIDマウスからSCIDマウスへの移植実験で試み,その口腔癌幹細胞がSnail分子を発現していることを明らかにする.すなわち,作製したSnail分子を強発現する口腔癌細胞株を各種組織幹細胞マーカー(CD10, CD24, CD31, CD34, CD90, CD133, CD150, Sca-1, Integrin, ESAなど)でフローサイトメトリーを行い,詳細な表現型の細胞群に選別し,細胞群をSCIDマウスの背部皮下に移植する.3か月後に移植部の組織切片を作製し,in vivoにおける口腔癌に類似した腫瘍が形成されるか否かを検討する.さらに,形成された腫瘍が口腔癌に類似していれば,再度移植部の腫瘍組織を細胞に分散させ,移植前の細胞群を選別し,別のSCIDマウスの背部皮下に移植し,口腔癌に類似した腫瘍形成能を検討する.以上により,ヒト口腔癌の癌幹細胞はSnailを発現し,癌幹細胞の残存と腫瘍再発の関係を詳細に検討する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は,Snail分子を発現する癌幹細胞は,浸潤能や転移能を高めるため上皮間葉形質転換を行い,自己の姿を変化させ,周囲の免疫環境を潜り抜けることを明らかにすることを試みてきた.Snail遺伝子を組み込んだ発現ベクターの調整に時間を要し,Snail分子を強発現する口腔癌細胞株(HSC-3,HSC-4,KON)の作製が遅れ,後のSnailの免疫抑制能の評価が間に合わず当該助成金が生じた. 今後の研究費は,細胞培養関連試薬とフローサイトメトリー用抗体,移植実験に使用する予定である.
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