2012 Fiscal Year Research-status Report
再生組織移植におけるマクロファージ・ポラリゼーションの解析と再生医療への応用
Project/Area Number |
24592981
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤原 夕子 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (50466744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星 和人 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (30344451)
森 良之 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (70251296)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 再生医療 / 軟骨再生 |
Research Abstract |
軟骨組織は自己修復力に乏しく、また体内から採取できる組織量も限られているため、軟骨再生医療の発展が期待されている。本研究の目的は、再生軟骨移植の組織反応の中心を担うマクロファージに関して、炎症性/抗炎症性マクロファージ(M1/M2マクロファージ)の存在比率(ポラリゼーション)を詳細に検討し、再生軟骨移植における組織反応制御への一助とすることである。 本年度は、まず、マウス再生軟骨移植モデルにおけるM1/M2マクロファージの局在同定を行った。C57BL/6Jの耳介軟骨から単離した軟骨細胞を増殖培養させ、ポリ乳酸(PLLA)多孔体へ播種して再生軟骨を作製したのち、同系マウス背部皮下へ移植した。抗F4/80抗体を用いた免疫組織化学染色において、移植後1週以降F4/80陽性マクロファージが観察された一方、Arginase Iを指標に検討したM2マクロファージは、移植後14日頃から局在が増加する傾向を示した。また、軟骨細胞とM1/M2マクロファージの共培養系における生存性の検証において、両者の共培養により、軟骨細胞ではなく、むしろマクロファージの生存性が低下することが明らかとなった。マクロファージのサブクラスと軟骨細胞分化との相関解析では、M1マクロファージの培養上清により軟骨細胞のCol2発現低下、M2マクロファージの培養上清により軟骨細胞のCol2の発現上昇が認められ、マクロファージのサブクラスに応じて軟骨細胞の分化度が変化する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に予定していた1)マウス再生軟骨モデルにおけるM1/M2マクロファージの局在同定2)軟骨細胞とM1/M2マクロファージの共培養系における軟骨細胞の生存性の検証3)マクロファージサブクラスと軟骨細胞分化との相関解析に関して検討を行い、有意義な結果が得られたため、順調に進捗していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの検討で、再生軟骨組織に認められるマクロファージにサブクラスがあること、またそのサブクラスに応じて軟骨細胞の分化度に違いが出ることが示唆された。本年度は、マウス再生軟骨同系移植モデルを用いて、更に詳細な検討をおこなっていく予定である。具体的には、マクロファージ・ポラリゼーションが再生軟骨移植に及ぼす効果の検証を行うため、M1傾向を示すことが報告されているC57BL/6JマウスとM2傾向を示すことが報告されているBalb/cマウスを用いてそれぞれ再生軟骨同系移植を行う。移植後継時的に再生軟骨組織を摘出し、組織学的観察(HE染色、トルイジンブルー染色)、免疫組織化学的観察(I,II,X型コラーゲン,アグリカン、F4/80、IL-6, IL-10, Arginase Iなど)により、マクロファージの特性が再生軟骨組織の成熟に及ぼす効果を検証する。次いで、マクロファージ機能不全誘導薬を用いた機能評価を行う。マクロファージ機能不全を一時的に誘導するclodronate liposome (Dr. Nico van Rooijen, Vrije Universiteit, Netherlandより供与済み)を、前述の再生軟骨移植において腹腔投与し、投与時期や期間をずらすことにより機能不全を誘導する時期を調整する。継時的に摘出した再生軟骨組織において、組織学的、免疫組織化学的、生化学的解析を行い、各サブクラスのマクロファージが再生軟骨移植において及ぼす効果を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
クリーンベンチ、インキュベーター、PCR関連装置、動物飼育施設、ミクロトーム、顕微鏡など、研究の実施に必要な設備は有している。そのため、研究経費は、実験動物、抗体、試薬、各種カルチャーディッシュ、ピペット類などの消耗品に使用する予定である。また、国内や海外の学会に参加し、情報収集や成果発表を行う。
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