2013 Fiscal Year Research-status Report
ビスホスホネート性顎骨壊死におけるカルシウム作用の解明とその制御に基づく予防戦略
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24592983
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
新井 直也 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80323723)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨原 圭 富山大学, 大学病院, 助教 (70404738)
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Keywords | ビスフォスフォネート / カルシウム / 相乗作用 / 上皮細胞 |
Research Abstract |
ビスフォスフォネート製剤関連顎骨壊死は、骨代謝だけでは説明がつかず、初期病変として粘膜障害が注目されている。本研究は、ビスフォスフォネートにある本来は弱い粘膜細胞毒性が、カルシウムの動員により増強されるとの仮説に立ち、上皮細胞に対する障害を本剤とカルシウムの協調作用の観点から解明することを目的としている。 ゾレドロネートは現在最もよく使われる注射用BPであるが、最高血中濃度が1uM程度であり、持続的な濃度はその1/10から1/100程度とされる。しかし、そのような臨床と相関のある濃度では、培養上皮細胞の生存にほとんど影響を与えないことが知られている。そこで、1uM以下の低い濃度でのゾレドロネートの作用について、カルシウムの及ぼす影響を調べた。培養細胞には、ヒト上皮細胞株(HaCaT細胞)を用い、細胞増殖活性、アポトーシス誘導を評価した。 MTT法による細胞増殖アッセイの結果、標準のカルシウム濃度では1uM以下のゾレドロネートに増殖抑制効果はない。しかし、カルシウム濃度が増加すると、0.5uMのゾレドロネートにカルシウム濃度依存的な増殖抑制作用が認められた。また、Annexin-V/PIの二重染色によるフローサイトメトリーの結果、1uM以下のゾレドロネートがカルシウム存在下にアポトーシスを誘導することが明らかになった。さらに、こうしたゾレドロネートとカルシウムの相乗作用は、カルシウムキレート剤であるEGTAにより打ち消された。 本結果より、低濃度であってもゾレドロネートが上皮細胞に対して毒性を発揮しうることが示され、ビスフォスフォネート顎骨壊死のメカニズムを解明する上で、重要な手がかりと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度には以下の1~3を遂行した。 1.低濃度のゾレドロネートおよび種々の濃度のカルシウムを培地に添加した際の細胞増殖に与える影響をMTT法にて解析し、「研究実績の概要」に記した重要な知見を得た。 2.アポトーシスへの影響を、Annexin-V/PIの二重染色によるフローサイトメトリーにて解析し、「研究実績の概要」に記した重要な知見を得た。 3.薬物代謝酵素であるチトクロームP450系酵素のうち、上皮細胞など普遍的に発現しているCYP1A1, CYP1B1, CYP2C8、またQRやQPRTといった解毒酵素の発現をRT-PCR法にて解析した。その結果、ゾレドロネートによる発現の変動は観察されなかった。 25年度には含嗽薬等を用いた上記カルシウム作用の制御実験を実施した。カルシウムキレート剤であるEDTAと比較しながら、代表的な含嗽薬であるイソジンガーグル、ネオステリングリーン、アズノール、コンクール、およびそれらの主成分であるポピンドンヨード、塩化ベンゼトニウム、アズレンスルホン酸ナトリウム、グルコン酸クロルヘキシジンのカルシウムの相乗作用に対する抑制作用をMTT法にて調査した。その結果、EDTAのようにカルシウムの作用を抑制するものはなかった。尚、これまでのゾレドロネートとカルシウムの相乗作用については、学術雑誌に投稿し掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
含嗽薬やその成分にゾレドロネートの細胞毒性を抑制する作用を期待したが、細胞増殖アッセイからは有用性はみとめられなかった。従って、その先に予定していた詳細な実験に関しては保留とした。 一方、上述のカルシウム研究を続ける中で、ゾレドロネートに対するカルシウムの相乗作用が、カルシウム溶液のpHの上昇とともに増強されることを見出した。また、それがリン酸カルシウム塩の形成と相関がある可能性を示唆する結果が得られている。そこで、計画にあった含嗽薬の作用のかわりに、pHの影響について調査を進める。含嗽薬の代わりにpH調整培地を使うという点で、実験方法自体に大幅な変更はない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の研究結果より、ゾレドロネートに対するカルシウムの相乗作用には、pHの上昇が影響することが見出された。そこで、含嗽薬の作用に関する詳細な研究を進めることは一旦保留とし、計画の一部を変更して、pHの影響についての詳細な調査を進める必要が出てきた。 次年度使用額は、実験変更にともなう試薬やプラスチック器具の購入にあて、その後は先述の通り、ほぼ申請書の内容に沿った使用を計画している。
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Research Products
(1 results)