2012 Fiscal Year Research-status Report
顎骨腫瘍・嚢胞による骨吸収機序の研究―破骨細胞形成機序の解析―
Project/Area Number |
24592986
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
相川 友直 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (00362674)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木全 正彰 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (90448134)
宮川 和晃 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (50635381)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 歯原性腫瘍 / 歯原性嚢胞 / TGF-beta / RANKL / 破骨細胞 |
Research Abstract |
顎骨病変による骨破壊、骨吸収機序を明らかにすることを目的とし、顎骨嚢胞・腫瘍性病変が産生するサイトカイン、特にTGF-betaに焦点を当て、病変間質細胞での破骨細胞活誘導因子、RANKLの発現機序を検討した。 顎骨病変の内容液を保存し試料とした。病変間質細胞を分離しRANKL発現を検討した。 免疫組織染色で顎骨嚢胞・腫瘍歯原性上皮細胞はTGF-beta陽性、間質線維芽細胞はRANKL 陽性、リン酸化smad3陽性であった。また、病変内容液中には非常に高濃度のTGF-betaを含有し、角化嚢胞性歯原性腫瘍、エナメル上皮腫、濾胞性歯嚢胞、の順で高かった。また、顎骨病変はIL-1alphaも高濃度に含有していた。 IL-1は線維芽細胞でのCOX-2タンパクを上昇させ、PGE2生合成を上昇させた。その結果、RANKL発現を促進することが示唆された。しかし、TGF-betaはこれとは異なりCOX-2やPGE2合成を促進しなかった。一方で、TGF-betaはIL-1刺激によるCOX-2上昇、PGE2合成上昇を相乗的に促進した。TGF-betaによるRNAKL誘導はタンパク質合成を介さず、直接RANKL転写を促進することが示された。 以上より、顎骨腫瘍・嚢胞を構成する歯原性上皮はTGF-betaとIL-1alphaを産生し、それぞれのサイトカインは周囲の間質線維芽細胞に作用し、破骨細胞誘導因子 RANKL発現を誘導することが示された。IL-1alphaはCOX-2タンパク、PGE2合成を介してRANKL発現を促進し、TGF-betaはIL-1シグナルの相乗的な促進効果と、RANKL転写を促進する直接作用の二つの経路を有することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
病変から試料の採取および細胞分離・培養は計画通り行うことができた。 また、それぞれの試料を用いた解析も計画通りに行われ、病変内でのサイトカインの発現と局在が示された。 TGF-beta刺激によるRANKL発現誘導機序を解析を計画しており、RNAKL遺伝子上流の転写調節領域の遺伝子単離、ルシフェラーコンストラクトの作成もなされ、計画通り実験準備が整っている状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)TGF-betaシグナルによるRANKL遺伝子発現誘導の分子メカニズムを検索する。現在準備中のヒトRANKL遺伝子転写開始点上流にルシフェラーゼを連結したベクターを間質線維芽細胞に遺伝子導入し、TGF-beta刺激によるルシフェラーゼ活性を測定しTGF-betaが間質線維芽細胞のRANKL転写を調節するか否か検討する。 2)顎骨歯原性腫瘍・嚢胞間質線維芽細胞での破骨細胞形成支持能力の検討;間質線維芽細胞が産生するRANKLが破骨細胞形成を支持するか否かをin vitroで検討する。TGF-beta, IL-1alphaで刺激した間質線維芽細胞をヒト末梢血由来全単核球、もしくはヒトCD11b陽性リンパ球、もしくはCD14陽性リンパ球と共存培養して破骨細胞形成を確認する。破骨細胞形成はTRAP染色、Pit形成で評価する。 3)顎骨骨芽細胞でのRANKL発現および破骨細胞形成に対する嚢胞内容液の影響;間質線維芽細胞と骨芽細胞で同じ機序が働くか否かを検討する。実験にはヒト骨芽細胞様細胞株(MG63)もしくはマウス骨髄間質由来骨芽細胞株を用いる。そして、同様にRANKLを誘導するのであれば、発現誘導に関与するするサイトカインの同定を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度で411,564円の研究費が執行されなかったが、平成24年度の研究成果を平成25年5月の国際学会で発表することを計画している(発表者は本研究に従事する大学院生)。この成果発表にかかわる海外旅費に未執行予算を用いる予定である。残額は本年度は上記研究方針で使用する実験消耗品(細胞培養試薬、器具、遺伝子単離、分子生物学実験試薬、抗体、など)に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)