2013 Fiscal Year Research-status Report
オリゴ核酸の選択的デリバリーシステムを活用した新規骨粗鬆症治療薬の開発
Project/Area Number |
24593000
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
有吉 渉 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (40405551)
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Keywords | 破骨細胞 / シゾフィラン / dectin-1 / ドラッグデリバリー / カードラン |
Research Abstract |
本研究は、破骨細胞前駆細胞において恒常的に発現している糖鎖認識受容体であるdectin-1に注目し、dectin-1と特異的な結合能を有するシゾフィラン(SPG)の一部を核酸と置換した複合体を用いて、破骨細胞に選択的なドラグデリバリーシステム(DDS)を構築することを目的としている。 平成24年度の研究で、われわれは破骨細胞分化抑制に関わるターゲット分子としてTNF受容体ファミリーのシグナル伝達分子であるTNF receptor associated factor 6 (TRAF6)を選択し、SPG-TRAF6si複合体を破骨細胞前駆細胞株であるRAW細胞に添加したところ、破骨細胞分化因子(RANKL)による破骨細胞形成は有意に抑制された。平成25年度は、より生体に近い条件下での破骨細胞分化に対するSPG-核酸複合体の作用を同定するために、マウスの大腿骨・脛骨由来の骨髄細胞を用いて検討を行った。RAW細胞と同様に、SPG-TRAF6si複合体の添加により、RANKLおよびマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)により誘導される骨髄細胞からの破骨細胞形成は有意に抑制された。また、この抑制作用は支持細胞を介さず、破骨細胞前駆細胞に対して、直接的に作用することが示唆された。 また、これに付随して行った研究で、シゾフィランと同様にdectin-1への選択的な結合が報告されているβ1-3グルカンであるカードランは、RAW細胞および骨髄細胞の破骨細胞への分化を負に制御することが示された。また、この抑制が、dectin-1直下のシグナル分子であるsykを分解し、破骨細胞のマスター遺伝子であるNFATc1の発現抑制を介して誘導されることも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の目標は、「選択的ノックダウンによるphenotypeへの影響の確認」であり、平成24年度に得られた知見をもとに、RAW細胞に加えて、マウス骨髄細胞へのSPG-核酸複合体の導入を行い、破骨細胞の分化や骨吸収活性、また関連するシグナル分子の発現への影響を検討することであった。「研究実績の概要」の項目に示すように、SPG-TRAF6si複合体の導入は、RAW細胞、骨髄細胞の両培養システムにおいて、破骨細胞分化を強く抑制することが確認された。こうした観点から当該研究の進捗状況についてはおおむね順調に進展していると考えられる。ただし、破骨細胞の機能に関する評価は完了していない点等、追加しなければならない検討項目は依然、残されている。 また、上述したように、SPGと同じβ1-3グルカンであるカードランにも破骨細胞分化抑制能が観察された。これについては、核酸との複合化に関わらず、単体で破骨細胞分化抑制活性を示すことから、細胞内のシグナル分子への作用を中心に研究を展開した。その結果、抑制のkey moleculeとしてdectin-1直下のシグナル分子であるsykの分解を介して、下流のc-fosの発現抑制を経て、破骨細胞分化のマスター遺伝子であるNFATc1の自己増幅機構を抑制することを明らかにした。この結果についても、骨粗鬆症をはじめ、異常骨吸収を伴う疾患に対する治療薬への応用として有用な研究結果であると判断して、詳細な検討を追加していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、破骨細胞分化抑制のターゲット分子としてTRAF6を選択して検討を重ねてきた。しかしながら、TRAF6はRANKL添加後、初期に活性化される分子であり、また多くの生物学的活性に関与することが報告されており、今後、生体への応用を考えた場合、副作用を生ずるリスクも少なくない。これを踏まえて、TRAF6以外のターゲット分子の選択的なノックダウン法についても確立を目指す。現在のところ、候補遺伝子として、Orai1、NFATc1、OC-STAMP、Cathepsin Kを考えており、RAW細胞を用いた検討を始めている。 また、SPG-TRAF6siについては、さらに研究を重ね、破骨細胞の骨吸収能に及ぼす影響について、in vitroの培養系を中心に検討を行うとともに、今後の研究展開を見据え、実験動物を使用したin vivoでの検討の可能性について、模索していく。 カードランについては、その抑制の分子メカニズムに焦点を当てた検討を行う。現在のところ、sykの分解系として、autophagy系およびubiquitin/proteasome系が代表的経路として知られているが、それぞれの阻害剤を用いてカードランによるsykの分解がどのタンパク分解系に依存して誘導されるのかを同定する。また、同定された分解系については、その分解に関わる細胞内分子を中心に、細胞内トラフィックも含めた緻密な検討を重ねて、創薬開発に向けた知見を蓄積する。
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Research Products
(21 results)