2013 Fiscal Year Research-status Report
唾液中の口腔癌関連タンパクをメタボローム解析でプロファイルする
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24593010
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
片倉 朗 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (10233743)
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Keywords | 唾液 / 口腔癌 / タンパク / メタボローム解析 |
Research Abstract |
口腔癌の癌化のリスクファクターを判定する方法として口腔癌細胞の代謝産物(メタボロミクス)に注目し、CE-MS(キャピラリー電気泳動ー質量分析計)によるメタボローム解析により網羅的に唾液中の低分子マーカーの検索を試みた。 口腔癌一次症例(舌癌)7症例と対照群の口腔内に急性炎症病変をもたない45-65歳までの健常者4例に対してメタボローム解析を実施し、両群の結果を比較した。比較検討にはStudent's t-testを使用しp<0.05を有意差ありとした。CE-MSに導入された唾液中の代謝物は、電気泳動によりキャピラリーないで分離後、MSで検出される。試料中のすべての陽イオン性物質は陰極方向に、陰イオン物質は陽極方向に移動する。各物質の移動速度はその電荷と水和イオン半経比に基づくため、比率の異なる物質はキャピラリー内で分離され出口に接続したMSで各成分固有の質量に基づき選択的に検出される。CE-MSに特化したデータバンクによる物質の同定される。 今回、唾液から413の代謝物由来と考えられるピークを検出し、このうち209物質は既知であつ標準物質として、204物質は未既知として同定した。その中で有意差のあった物質、同定した物質中は2物質、未同定物質中は33物質に両群を比較し有意差を認めた。未同定の物質では有意差があるものが多く、新しいマーカー分子が含まれている可能性がある。同定できた2つの物質は、健常者ではまったく検出されず癌患者だけで検出されることを示している。 舌癌患者と健常者の全唾液をCE-MSによってメタボローム解析を行いバイオマーカーとなるタンパク質の検索を行ったところ、特徴的に発現する代謝物を検出できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
口腔癌患者の唾液中に特徴的に発現する代謝産物を効率的に同定できた。CE-MSを用いた分析法は唾液に対しても有用であることいえることがわかった。また、CE-MSによるメタボローム解析により口腔癌患者の全唾液中の代謝物の解析で、口腔癌患者で35種の特徴的代謝産物を確認できた。そのうち2種は同定できるタンパクであり、33種は未知の物質であった。これらの物質は、癌患者で濃度が上昇している物質と低下している物質の両方を含み、今後はそれらの複数物質の組み合わせで唾液を検体として高精度な癌の鑑別ができる可能性が高いと考えられる。口腔癌組織では正常組織とは異なった代謝が行われている可能性、その産物をバイオマーカーとして応用できる可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
CE-MSによるメタボローム解析により口腔癌患者の全唾液中の代謝物の解析を行い、得られた35種の特徴的な代謝物のうち、2種は同定できるタンパクであり、33種は未知の物質であった。これらの物質は癌患者で濃度が上昇している物質と低下している物質の両方を含み、今後はそれらの複数物質の組み合わせで唾液を検体として高精度な癌の鑑別ができる可能性が高いと考えられる。 口腔癌組織では正常組織とは異なった代謝が行われている可能性、その産物をバイオマーカーとして応用できる可能性が示唆された。 今後はターゲットとしたタンパク質の合成に関与するmRNAをトランスクリストームから解析し、CE-MSで得られた結果との整合性を検証する。 また、唾液中に特徴的に変化をきたすと分かった代謝物質で後退の作成が可能である物質は、手術標本により免疫病理組織化学的にその局在について検索を行って腫瘍由来であることを確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ターゲットとするタンパク質の限定が遅れ、解析の見積りを外注ラボに依頼したが、解析条件が折り合わなかったため、依頼を取りやめた。また、データ管理用のパソコンを購入する予定であったが、発注はしたものの品切れにより、納品が4月以降にずれ込んだ。 これまで得られた研究成果を国内学会・海外学会で発表する予定である。また、スタディの追加、ターゲットとするタンパク質の解析などに使用する。
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