2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24593012
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
北野 尚孝 日本大学, 医学部, 専修指導医 (50424726)
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Keywords | 癌 / 遺伝子治療 / ゲノム |
Research Abstract |
平成24年度の研究までは、口腔扁平上皮癌細胞(SCCKN)でヌードマウスに移植腫瘍を作成して研究を行い、良好な結果を得てきた。実際には、E3C1による遺伝子治療でも最終的には大きな腫瘍を形成した。DNA溶液は腫瘍あたり上限100μlであり、腫瘍のサイズに比して少ない印象であったが、腫瘍増大の速度は変わらなかった。この結果から、E3C1による治療は注射部位よりも広い範囲に効いているのではないかと推察した。 平成25年度はまず、マウスの両側の背部に独立した2個のSCCKN移植腫瘍を作成した。pE3C1およびコントロールを移植腫瘍の一方に注射を7日に1回の割合で行った。その後、経時的に両側の腫瘍の大きさを測定した。コントロール群は治療開始後も腫瘍サイズが増大し18日目より死亡し始め、36日目に生存率は0%となった。一方、pE3C1群は、治療開始後120日目から死亡し、163日目には生存率は0%となった。さらに、pE3C1群は両方の腫瘍の増大速度が抑制されていた。この結果より、直接pE3C1を腫瘍に注射しなくてもpE3C1による遺伝子治療が可能ではないかと考えられた。 この結果を得て、7日に1回の割合でヌードマウス移植腫瘍にpE3C1による遺伝子治療を皮下注射で行うことを考えた。さらに、他の扁平上皮癌細胞株(A431)においても良好な研究結果が得られるかを検討した。治療開始後は、経時的に腫瘍の大きさを測定した。コントロール群は治療開始後も腫瘍サイズが増大し29日目より死亡し始め、46日目に生存率は0%となった。一方、pE3C1群は、53日目まで全頭生存し、100日目でも6匹中1匹が生存し、その個体の腫瘍は消失していた。また、pE3C1群で死亡したマウスの腫瘍の増大速度は抑制されていた。この結果より、ヌードマウスの移植腫瘍に対しpE3C1の皮下注射により腫瘍を根治できる可能性が考えられた。また、根治できなくとも腫瘍の増大速度を抑制し延命効果があることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究実施計画では、口腔扁平上皮癌細胞(SCCKN)により作成されたマウス移植腫瘍を用いた研究で、7日に1回、pE3C1遺伝子を直接、腫瘍に注射することにより遺伝子治療を行い良好な治療効果を得た。その結果を踏まえて本研究では、pE3C1遺伝子を直接、腫瘍に注射せずに遺伝子治療の効果が得られるかを検討した。さらに、平成24年度の研究実施計画で、「E3C1遺伝子単独の治療にて根治または腫瘍増大の抑制による延命効果が認められたことにより、今後はE3C1遺伝子がどのように腫瘍やマウスに作用しているのかを検討していく。」としていたが、口腔扁平上皮癌細胞(SCCKN)だけではなく、他の扁平上皮癌細胞株(A431)においてpE3C1遺伝子による遺伝子治療の有効性を検討することとした。それは、2個の独立した移植腫瘍で直接注射群と非注射群の腫瘍の増大速度が変わらなかったことから、皮下注射による投与法でも十分治療効果が得られると考えられたからである。さらに、SCCKNに有効である治療はA431にも有効性を示す可能性が強く示唆されたためである。そして本年度の研究より、皮下注射によるE3C1遺伝治療で根治できる可能性や延命効果があることが判明し、扁平上皮癌に対する遺伝子治療のプロトコールを確立するにあたり有効な結果が得られたと考えている。また、正常マウスに皮下注射によるE3C1遺伝治療を6週間行ったが、副作用を疑うような所見は何も得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
皮下注射によるE3C1遺伝子を用いた遺伝子治療にて、A431によるマウス移植腫瘍の根治または腫瘍増大の抑制による延命効果が認められた。このことにより、今後はE3C1遺伝子を用いた遺伝子治療が腫瘍転移をコントロールできるかについて検討していく。そして、E3C1遺伝子による遺伝子治療は全身投与が可能で少量で効果があり、副作用がなく腫瘍特異的に働くので、現実的な悪性腫瘍の治療法として開発を続けていきたいと考えている。
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