2012 Fiscal Year Research-status Report
口腔粘膜創傷治癒におけるレプチンの新規治療薬としての可能性
Project/Area Number |
24593016
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
片岡 志基 鶴見大学, 歯学部, 臨床助手 (80624676)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
里村 一人 鶴見大学, 歯学部, 教授 (80243715)
舘原 誠晃 鶴見大学, 歯学部, 助教 (90380089)
徳山 麗子 鶴見大学, 歯学部, 助教 (20380090)
井出 信次 鶴見大学, 歯学部, 学部助手 (00611998)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | レプチン / 口腔粘膜創傷治癒 / 創傷治療薬 |
Research Abstract |
未曾有の超高齢社会を迎えたわが国では、口腔粘膜疾患、ドライマウスなどの口腔内科的疾患が増加してきている。一方、悪性腫瘍に対する化学療法や放射線療法、造血幹細胞移植に代表される先進的治療技術の実施に伴って発症する重篤な口腔粘膜炎の管理、口腔ケアの必要性・重要性が注目されてきている。今後ますます多くの国民がこのような治療の対象となると予想されることから、口腔粘膜炎の発症予防、進行抑制、さらには効果的治療のための手段を確立しておくことが喫緊の課題といえる。一方、レプチンは白色脂肪組織から分泌され、摂食抑制とエネルギー消費亢進、骨形成促進作用、血管新生促進作用などが報告されている。興味深いことに、このレプチンが最近、唾液中に存在することが明らかとなっているが、その口腔内における生理的役割については未だ不明である。しかし、これまでのレプチンが血管新生促進作用を有することや、皮膚における創傷治癒を促進していることなどを考え合わせると、レプチンが口腔粘膜においても創傷治癒に促進的に働く可能性があることに着目した。そこで、今年度は、口腔粘膜上皮細胞におけるレプチン受容体の発現についてラビットおよびヒトの口腔粘膜組織およびそれぞれの培養細胞においてその発言を確認し、それら受容体がシグナル伝達にかかわり機能性受容体であることを確認した。そこで、口腔粘膜上皮細胞に対するレプチンの影響について、その増殖・分化・細胞遊走について検討したところ、レプチンが細胞遊走を促進していることが確認できた。今後は、実際にレプチンを用いて創傷治癒促進が可能かどうかについて検討を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、今年度は、口腔粘膜上皮細胞におけるレプチン受容体の発現の検討、レプチン受容体の機能の確認、口腔粘膜上皮細胞の増殖に対するレプチンの影響について検討する予定であったが、概ね順調に解析を進められており、現時点では本研究は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでに得られている結果を基に、さらに詳細に口腔粘膜上皮細胞の増殖に対するレプチンの影響の検討のため、口腔粘膜上皮細胞の培養時に各種濃度のレプチンを添加し、その増殖に対する影響をクリスタルバイオレット法などにより検討する。また、口腔粘膜上皮細胞の培養において、コンフルエント時に培養dish の中央で2 mm 程度の幅で細胞を剥離し(スクラッチアッセイ)、この空隙への細胞の増殖と遊走について、レプチン添加群と非添加群において比較検討する。また、口腔粘膜上皮細胞の分化に対するレプチンの影響の検討のため、口腔粘膜上皮細胞の培養時にコンフルエント後から各種濃度のレプチンを添加し、その分化に対する影響について、上皮細胞のそれぞれの分化段階で発現するマーカーであるinvolucrin、transglutaminase、keratin 1、4、10、13、および14、filaggrin、defensin、caspase 3 および14 などを指標に検討する。さらに、口腔粘膜創傷治癒に対するレプチンの治癒促進効果の有無の検討のため、マウス、ラット、ウサギ、ハムスターなどに対して、次亜塩素酸水溶液や酢酸溶液を含浸させた濾紙を一定時間貼付することで、口腔粘膜に薬剤性化学損傷を作製する。これを口内炎モデルとし、創傷作成後、前項までの実験により得られた有効な薬理濃度のレプチンを、ドラッグデリバリーシステムを利用した徐放型ゼラチンハイドロゲルに含ませ、これを創部に貼付する。コントロールには徐放型ゼラチンハイドロゲルのみを貼付する。創傷作成後1、3、5、7、10、14 日目に組織を摘出し、創傷部の大きさの変化、上皮化面積の比較、上皮下の新生血管の数、肉芽組織の増生、上皮細胞の分裂、上皮細胞分化マーカーの発現などについて検討することにより、レプチンの創傷治癒促進効果の有無につき検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は研究計画に基づき、細胞培養用試薬、分子細胞生物学的検討試薬類、生化学的検討試薬類、組織学的検討試薬類、実験用動物、などに物品費を使用し、成果発表のために旅費を使用するとともに、人件費、謝金、論文印刷費などを計上している。次年度以降は、さらに詳細な細胞に対するレプチンの影響について検討するとともに、in vivoにおけるレプチンの治療効果の検討のために動物実験を行う必要があるため、これらの研究費を計上するものであり、先行している研究結果とともに、本研究を順調に進展させていく予定である。
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