2013 Fiscal Year Research-status Report
頭頚部癌における予後予測因子SIRT1の細胞内局在に依存した細胞生物的機能の解明
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24593043
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Research Institution | 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所) |
Principal Investigator |
菊地 慶司 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), がん生物学部, 主任研究員 (90372094)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 映 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), 病理診断科, 任期付医師 (10456395)
野口 誠 富山大学, その他の研究科, 教授 (50208328)
高野 康雄 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), 臨床研究所, 所長 (60142022)
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Keywords | 頭頚部癌 / SIRT1 |
Research Abstract |
25年度はSIRT1の高発現がHNSCC細胞の高分化に関係しているのではないかという前年度の観察と、SIRT1が上皮細胞の分化を促進するとの報告を考え合わせ、SIRT1はHNSCCにおいてがん幹細胞から増殖系列への分化に促進的に関与しうるのではないかという仮説を立て、HNSCC由来のがん細胞株でSIRT1の発現のノックダウンあるいはSIRT1の高発現ががん幹細胞あるいは上皮幹細胞のマーカーとされる遺伝子群の発現に及ぼす影響を検討した。 1)SIRT1ノックダウンの効果:HSC2細胞でSIRT1の発現をRNAiによりノックダウンした場合、上皮幹細胞のマーカーとされるTAp63遺伝子の発現が低下することが見いだされた。一方、ES細胞あるいはがん幹細胞のマーカーとされる遺伝子群(nanog、oct-4等)については大きな変動は認められなかった。 2)SIRT1高発現の効果: SIRT1蛋白のN末端側にEGFPを融合した発現ベクターを作成し、HSC2細胞に導入後、EGFPの蛍光が陽性の細胞群をセルソーターにて濃縮することを繰り返しEGFP-SIRT1を安定発現する細胞集団を得た。同様の方法によりEGFPのみを発現する細胞集団を取得した。なお、EGFP単体では細胞全体に分布するが、EGFP-SIRT1は核に局在し、これまでに細胞質に移行することは認めていない。通常の培養条件下においてはEGFP-SIRT1を高発現の細胞とEGFPの発現細胞との間でTAp63遺伝子の発現レベルに差はなかった。HSC2細胞でTAp63遺伝子の発現は5-aza-deoxycytidineにより増強されるが、その増強の度合いはEGFP-SIRT1を高発現させた細胞で高いことが認められた。 以上の結果からHNSCC細胞においてSIRT1はTAp63遺伝子の発現を促進している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
EGFP-SIRT1の安定発現細胞株を取得することにより、SIRT1の細胞内局在が可視化できるようになったこと、また免疫組織化学染色・蛍光免疫染色法においてSIRT1の発現と局在を正しく評価できる抗体の検索が可能となった。またSIRT1の細胞学的機能について、遺伝子発現の面からSIRT1がTAp63をひとつの標的として上皮細胞の分化・がん化に関与している可能性が示され、これは想定以上の知見が得られたものと考えている。しかし、NOGマウスに頭頚部がんの組織片を移植してSIRT1の細胞内局在を検討するという実験にとりかかることができず、この点からやや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
1. SIRT1によりTAp63遺伝子の転写がどのように調節されるのかを明らかにする。現在のところTAp63遺伝子の転写調節の機構には不明な点が多く、SIRT1との関係を明らかにする以前に、TAp63遺伝子のより基本的な転写調節領域・転写開始点の同定から始めなければならないのではないかと考えている。その結果を踏まえてクロマチン免疫沈降法等により、TAp63遺伝子の発現調節領域にどのような転写因子群が結合しており、その構成・アセチル化状態がSIRT1の有無によって変動するのかどうかを検討する。 2. SIRT1が上皮細胞の分化および扁平上皮がん細胞の分化/脱分化に関与しているとすると、血清の存在下で長らく継代されてきた既存の頭頸部がん細胞株ではSIRT1の機能を十分に解析できない可能性がある。この点もふまえ、頭頸部がんからNOGマウス経由でのがん細胞株の樹立、および直接に試験管内培養系(無血清)によるがん細胞株の樹立を行い、SIRT1の機能解析に供していく。 3. TAp63遺伝子は上皮幹細胞のマーカーとされる一方、がんにおいては癌抑制遺伝子として機能しているのではないかとの報告もある。HNSCCにおいてSIRT1はTAp63の発現を促進することで癌抑制に機能している可能性がある。HNSCC 症例でのTAp63の発現の様態、HNSCC 細胞でのTAp63の機能をあわせて検討することで、SIRT1高発現のHNSCCが高分化かつ予後良好であることの分子論的な背景を明らかにしていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)免疫染色での抗SIRT1抗体の性能評価が困難であったため、頭頚部がん組織の免疫組織化学的検討・臨床病理学的検討が進展しなかったこと、および2)頭頚部がん組織片のNOGマウスへの移植を実施しなかったため、NOGマウス購入として計上した予算が未使用となった。 頭頚部がん組織の免疫組織化学的検討・臨床病理学的検討に必要な物品の購入、および頭頚部がん組織片を移植するNOGマウスの購入にあてる予定である。
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Research Products
(6 results)