2013 Fiscal Year Research-status Report
ドパミン受容体サブタイプの選択的リガンドを応用した新しい全身麻酔法の開発
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24593056
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小川 慶隆 (清水 慶隆) 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (10294597)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
入舩 正浩 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 教授 (10176521)
森田 克也 広島文化学園大学, 看護学部, 教授 (10116684)
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Keywords | ドパミン受容体 / 意識消失 / 不動化 |
Research Abstract |
マイクロダイアリシス法により実験動物(ラット)末梢組織への各種侵害刺激によって、ドパミン神経経路の神経終末からドパミン遊離が増加することをin vivoで確認した。末梢組織への侵害刺激はラットの尾根部を動脈クレンメで挟む痛み刺激、電気刺激に3つの周波数を用いることで、感覚神経における伝導系の特性により3つの異なる神経線維(Aβ線維、Aδ線維、C線維)を選択的に評価した。各ドパミン神経系の神経終末(線条体、側坐核、前頭前野、視床)からのドパミン遊離の増加を調べた。これによって、侵害刺激の種類による、ドパミン遊離の増加の実態を部位別に確認をした。 次に各種侵害刺激によって引き起こされるドパミン遊離促進効果がカプサイシン投与による一次知覚神経(C線維)の破壊により影響を受けるか、マイクロダイアリシス法を用いて現在検討している。実験動物はラットを用い、出生1~2日後に高用量のカプサイシンを1回皮下注射することで、ラットC線維をほぼ完全に破壊した動物を実験に使用している。なお、破壊の程度は、角膜損傷やサブスタンスP濃度の低下で確認した。このC繊維を破壊したラットにガイドカニューレ及び透析プローブを挿入し、マイクロダイアリシス実験を行っている。C線維の破壊が侵害刺激によって起こるドパミン遊離促進効果は現時点の結果では、抑制される結果となっており、侵害刺激によって生じるドパミン遊離促進は感覚神経のうちC線維を介して起きている可能性があることがこれまでの実験結果では示唆される結果となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイクロダイアリシス実験により、1.末梢組織への侵害刺激による脳内のどのドパミン神経系の活性化。2.圧刺激や電気刺激など侵害刺激の違いによって引き起こされるドパミン神経系の活性化。3.C線維の破壊によって引き起こされるドパミン遊離の抑制。 について、本研究により末梢レベルでの侵害刺激が黒質線条体、中脳辺縁系でのドパミン遊離を引き起こす現象を確認している。 今後に予定している特異的神経毒(6-OHDA)の脳内選択的神経破壊モデルラットで行う、麻酔薬の意識消失及び不動化の行動薬理実験。脳内部位選択的なドパミン受容体サブタイプリガンドと麻酔薬を併用した際の意識消失及び不動化の行動薬理実験はマイクロダイアリス実験で得られた結果をin vivoで確認することを目的としており、これまでの研究は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は全身麻酔薬による意識消失や不動化が6-OHDAによるドパミン神経の破壊により影響を受けるか行動薬理学的手法を用いて検討する。脳内特定のドパミン神経部位の破壊が全身麻酔薬による意識消失や不動化を変化させれば、これらの麻酔要素の発現は、少なくとも部分的には、このドパミン神経部位を介して生じている可能性を示唆できる。実験動物としてラットを用いる。シナプス前ドパミン神経の破壊は神経毒である6-OHDAを使用して行う。特定のドパミン神経終末部位に6-OHDAを脳内投与することにより、この部位を選択的に破壊することが可能である。意識消失の評価は、正向反射の消失を行い検討する。正向反射はラットを仰向けにひっくり返したときすぐに正位に戻ろうとする反射のことで、30秒以上戻らない場合を正向反射消失とする。不動化の評価は、最小肺胞内(麻酔薬)濃度(MAC)の定量測定を行う。加速度センサーにより、自律運動の消失を確認した動物の尾根部を動脈クレンメで挟み侵害刺激を加え、50%の動物が体動を起こさなくなるのに必要な最小麻酔薬濃度を測定する。吸入麻酔薬の投与は自発呼吸下に、静脈麻酔薬の投与は静脈路からシリンジポンプを使用して持続的に行う。 今後のドパミン神経破壊モデルを用いた行動薬理学実験により、全身麻酔薬による意識消失や不動化が選択的なドパミン受容体サブタイプリガンドの脳内あるいは全身投与により影響を受けるか行動薬理学的手法により検討するため、D1からD5までの5種類のサブタイプに対して親和性の異なるリガンドを用いて研究を行う。今後の実験では、可能な限り選択的なリガンドを使用する予定である。これらのリガンドが全身麻酔薬による意識消失や不動化に変化を与えれば、これらの麻酔要素の発現にドパミン受容体サブタイプが関係している可能性が示唆される結果となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現在行っている、マイクロダイアリス実験は例数が不足しており、次年度も継続して行う予定にしている。マイクロダイアリス実験を継続するための予算を確保していることが、次年度使用額が生じた理由である。 マイクロダアアリス実験に使用する、実験動物、試薬、プローベ、ドパミン測定用移動相などを次年度使用額で購入する計画である。
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