2013 Fiscal Year Research-status Report
プロテオーム解析に基づいた新規3次元培養モデルによる口腔癌浸潤能の検討
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24593066
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小宮山 一雄 日本大学, 歯学部, 教授 (00120452)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 直行 日本大学, 歯学部, 助教 (20386080)
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Keywords | 口腔癌 / 浸潤能 / myoma disk / SLIPI / NUSD-1 / MMP / cytokeratin / plectin |
Research Abstract |
腫瘍細胞が浸潤や転移を起こす際のメカニズムや,この作用の調節機能蛋白などの検討は活発に検討されているが未だ全容は明らかでない。その理由の一つとしてヒト癌細胞の組織浸潤を再現するモデルがないことが考えられる。申請者らはヒトmyoma diskを用いて腫瘍細胞の浸潤機構の解明を試みた。 本研究において株化癌細胞のCa9-22と,Ca9-22のSLPIをhomologus recombinationによりknock downsした癌細胞NUSD-1では,その組織浸潤能が顕著に異なることを明らかにした. ヒトmyoma diskに播種したCa9-22は浸潤能を示すのに対し,NUSD-1はmyoma diskの表層で重層化するものの組織内への浸潤が認められなかった。このモデルでNUSD-1の培地にSLPIを添加すると,NUSD-1はCA9-22と同様にmyoma disk内に浸潤能を示す様になった。 このとき,癌組織浸潤に際してECMを分解するMMPの産生を両培養細胞について免疫染色,遺伝子発現解析,プロテオー-ム解析などで検討を行ったが、その発現レベルに大きな相違は認められなかった.しかし, myoma diskに播種したCa9では,組織内に浸潤する細胞でMMP-2やMMP-9の発現の増加がみとめられた。この結果から腫瘍細胞で浸潤に必要なMMPの発現は、ECMとの接触により増強されると考えられた。また、NUSD-1においても両MMPsの一定の発現が見られたことからこの現症については,他のMMPsをも検討する必要がある。また,株化Ca9-22やNUSD-1をSLPやTGFを加えて培養後,サイトスピン標本を作製してplectin, desmoplakin ,LaminA/Cの発現を免疫染色で検討した結果,陽性細胞の減少を認めた。この結果からSLPIは上皮細胞間の接着性を減少し,浸潤能を促進するように働くことが示唆され、今後myoma systemでの検証が必要と考えた。新たな展開として,腫瘍の組織内浸潤とchemokine-chemokine receptor interactionsの検討をおこなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者らはHSC-2, HSC -3, HSC -4,Ca9-22,Ca9-22から作成したNUSD-1などの株化細胞をmyoma disk上に播種して培養後,細胞の重層化が不安定などの問題があったが,播種方法を改良することで,現在では本法により安定した結果が得られ、従来のゲル上に癌細胞を播種して浸潤能を評価する方法とは異なった、ヒト癌細胞のin vitro浸潤モデルを確立した. myoma disk使用し上記株化細胞の浸潤能を比較検討した結果,myoma組織内への浸潤能は細胞間で相違が認められた。特に, Ca9-22とNUSD-1の両細胞間で浸潤能の差は顕著であり,Ca9-22は早期にmyoma diskに浸潤するのに対し,NUSD-1では浸潤せずにmyoma disk表面で重層化した.しかし,NUSD-1の培養液にSLPIを添加することで,NUSD-1が浸潤能を獲得することを見いだした。 腫瘍細胞の組織浸潤に関与するとされるMMPsについて,株化細胞の解析では浸潤能の有無で発現に差は見られなかったが、myoma disk内へ浸潤する細胞では発現が上昇していた.このことから、癌における浸潤はECMとのクロストークが必要であることが推測されたが、このメカニズムの詳細には更なる検討が必要である.また,近年癌の浸潤と細胞接着因子の検討がなされていることから、プロテーム解析で変動の見られたplectin, desmoplakin , LaminA/Cについて,Ca9-22とNUSD-1にSLPIを添加して検討したところ、免疫組織化学で発現低下を確認した.現在myoma diskでの検討中である.また,癌浸潤と周囲環境の検索の必要から,M1およびM2 macrophage発現を癌組織において病理組織学的に検討し,浸潤/転移と相関する基礎データを得た。これらの細胞から分泌されるcytokine/chemokineと癌細胞浸潤との関連のmyoma diskでの検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
Ca9-22とNUSD-1とはmyoma disk内への浸潤が著しく異なることをみいだした.両細胞の遺伝子発現,蛋白産生を網羅的解析おこなった結果から,NUSD-1ではCa9-22と比較してcytokeratin-8, cytokeratin-18,Catenin, desmoplakin,plectinの発現が増加していた。近年,組織内へ浸潤する腫瘍細胞にはcytokeratinの発現の減少することが報告され,腫瘍細胞の浸潤との関連性が考えられてきている。また,その発現機構にはNF-kB, Akt, PI3Kなどの関与が言われている。Myoma diskを用いて,これらのシグナル伝達を阻害することによる細胞浸潤の変化を免疫染色,real time PCRなどを用いて各種MMP, cytokeratin-8, cytokeratin-18,Catenin, desmoplakin,plectinの発現を検討する。また,desmoplakin, LaminA/Cなど接着因子の発現抑制による検索も行なう。また,腫瘍の組織内浸潤とchemokine-chemokine receptor interactionsについて特にCCL21をCCR7中心に発現およびその制御機構について検討をする予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
投稿中であった論文がアクセプトされたが投稿料の請求が年度をまたいでなされたため. 抗体試薬;cytokeratin8, cytokeratin18,Catenin, desmoplakin,plectin,CCR7等,接着因子の発現抑制のための試薬;desmoplakin, LaminA/C,および NF-kB, Akt, PI3Kに対するのシグナル伝達機構の阻害剤他,細胞培養の試薬,器具,用品等の購入費用。研究成果の学会発表および研究調査のための旅費および研究成果投稿料を含む論文作成費に使用する。
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