2012 Fiscal Year Research-status Report
新しい外科的矯正治療スキームの検討:上顎移動術に起因する呼吸・睡眠機能の変調
Project/Area Number |
24593082
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
島崎 一夫 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 助教 (10420259)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 卓史 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30221857)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 外科的矯正治療 / 上顎骨移動術 / 呼吸機能 |
Research Abstract |
骨格性の顎顔面形態異常を有する不正咬合患者に対しては、外科的矯正治療が施行されることが多い。近年、外科的矯正治療後の随伴症状としての睡眠呼吸障害が大きな論点となっている。そこで、『外科的矯正治療が咬合や顔貌の改善のみならず、 呼吸機能の改善にもつながる理想的な治療計画を考案する』ことを研究の全体構想として掲げ、なかでも上部気道の一部である鼻腔底を構成する上顎骨に着目し、『外科的矯正治療における上顎移動術に起因する呼吸・睡眠機能の変調』について明らかにすることを本研究の具体的目的とした。 平成24年度は、主に生理的条件下における呼気シミュレーションの準備を行った。治療前にCTを用いて顎顔面頭蓋を撮影、DICOM データを取得し、各患者のCT DICOMデータを3 次元画像処理ソフトウエアに転送し、関心領域として骨と上部気道を抽出しボリュームレンダリングすることで、それぞれの3次元モデルを構築した。このようにして構築した3D モデルの気道表面性状は粗く、正確な流体解析を行うには表面を平滑にする必要があった。そこで次に、作成した形状データをスムージングし、メッシュ化を行っている。今後、その作業には時間を要すると思われる。また、鼻腔から咽頭部へと流れる呼気のシミュレーションを行うには呼吸圧や流速などが必要である。最適なシミュレーションを行うための適切な数値を手探りで模索している状態である。これらの初期モデルが完成すれば、今後の作業はスムーズに進行すると考えられる。 そして、外科的矯正治療における上顎移動術に起因する鼻腔の変化の影響を、流体解析を用いて流速や上部気道にかかる抵抗の変化を計算することで機能的に評価し、鼻腔の形態と呼吸機能の関連について明らかにすることができ、形態だけでなく機能も考慮した治療が実現できるため、患者のQOL の向上に寄与すると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
治療前にCTを用いて顎顔面頭蓋(眼窩上縁から下顎下縁まで)を1 mm スライス幅で撮影し、DICOM データを取得し、各患者のCT DICOMデータを3 次元画像処理ソフトウエアに転送し、関心領域として骨と上部気道を抽出しボリュームレンダリングすることで、それぞれの3次元モデルを構築した。このようにして構築した3D モデルの気道表面性状は粗く、正確な流体解析を行うには表面を平滑にする必要があった。この作業が当初考えていたよりも難航している。 レンダリングした鼻腔は、何個にも分かれて存在しており、そのままでシミュレーションを行うと、気流が途切れてしまう。その為に、実際の呼気とは異なった状態を表現してしまうのは明らかである。 これらの問題点を解決するために要している時間が、予定した達成度よりやや遅れてしまう原因となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策は、まずシミュレーション可能なボリュームレンダリングおよびメッシュ作成を行うことである。また、その後の最適なシミュレーションを行うために、至適メッシュ数などを十分検討したのち、流体解析により得られたシミュレーションと上部気道の形態変化との関連を検討する予定である。 その後、既に取得している顎変形症患者の治療前、手術後6 および12ヶ月における顎顔面頭蓋のCT DICOM データを用いて、まず生理的条件を考慮しない単純条件下における呼気シミュレーションを行う。対象は、上下顎移動術を施行した顎変形症患者6例(通法の上顎LeFortI型骨切り術による上顎上方移動3症例および馬蹄形骨切り術とLeFortI型骨切り術を併用した3症例)とする。それらのCTデータをメッシュファイルにてアウトプットすることで流体解析の前準備を終える。次に流体解析用ソフトウェア(ANSYS FLUENT)にデータを転送し、単純条件下において流体解析を用いて呼気のシミュレーションを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度研究費の使用計画は、ボリュームレンダリングならびに流体解析シミュレーションソフトウェアの年間保守費用の年間ライセンスに使用する予定である。 そして得られた本研究の成果は、適宜、顎変形症学会、日本矯正歯科学会などの国内の学会発表のみならず、海外の学会でも積極的に発表を行い、論文投稿も行うことで広く社会に向けて情報発信する予定である。
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