2012 Fiscal Year Research-status Report
アトミックレイヤーデポジション(ALD)法による新規ハイブリッド矯正材料の開発
Project/Area Number |
24593098
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中尾 紀子 長崎大学, 大学病院, 助教 (20333578)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 郁哉 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (00274671)
田中 基大 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (90420629)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 歯科矯正学 |
Research Abstract |
本年度は、ALD法によるAl2O3原子層堆積成膜を矯正用アーチワイヤ-2種類(ニッケルチタン・ステンレス)へ行い、表面性状の観察ならびにワイヤーとブラケット間の摩擦測定を行った。 1.ALD法にてAl2O3原子層堆積成膜した矯正用アーチワイヤ-の作成。矯正歯科で使用される既製のニッケルチタンおよびステンレスワイヤー(サイズ:0.019”x 0.025”)をALD法にてAl2O3原子層堆積成膜した。膜厚36.7nmでは金色、膜厚72nmでは青色を呈した。 2.コーティングしたワイヤーの表面性状の観察。顕微鏡下で2種類のワイヤーの表面性状を観察し、他のコーティング法との表面粗さを比較検討した。未処理のワイヤーではニッケルチタンの方がステンレスより粗い。TiO2,SiO2コーティングでは表面粗さは変化無いが、epoxyコーティングでは表面粗さは粗くなった。 3.コーティングしたワイヤーの機能性評価。金属材料本来の機能性の維持を判定するために、成膜したワイヤー、他のコーティング法によるワイヤー、未処理のワイヤーとセラミックブラケット間の摩擦測定を行った。摩擦測定には試作した摩擦試験用ジグ、ブラケット固定用ジグを用いて、cross-head speed 10mm/min、移動距離5mm、ブラケットの傾斜0°10°で行った。未処理のワイヤーでは0°より10°ブラケットを傾斜させた方が摩擦力増大となった。epoxyコーティングでは未処理と比較し摩擦力が1.3倍となったが、ALD法にて成膜したワイヤーでは未処理とほぼ同程度の結果となり成膜の影響が少ないことがわかった。 ALD法による成膜は膜厚を薄くすることが可能で、審美性にも優れている。また成膜温度が低温なため、金属材料本来の機能性を維持することが可能と考えられる。本研究ではこのALD法を利用して新規ハイブリッド矯正材料の開発を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではALD法を利用して新規ハイブリッド矯正材料の開発を行った。 ALD法にてAl2O3原子層堆積成膜した矯正用アーチワイヤ-を作成し、膜厚と色の評価を行った。さらにコーティングしたワイヤーの表面性状の観察、セラミックブラケットとの摩擦測定により機能性の評価を行い、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、ALD法にてSiO2原子層堆積成膜した矯正用アーチワイヤ-を作成し、機械的性質を検討していく。成膜の十分な膜着強度と金属色遮断性(歯冠色調白色性)を持つ最適な成膜条件を設定する。また、口腔内で使用する材料に成膜するため、ALD法によってSiO2を成膜した試料から合金元素が溶出しないことを、溶出試験により効果を同定する。また、SiO2薄膜の細胞毒性試験も合わせて行う。 Al2O3、SiO2などは電気的絶縁膜や保護膜として使用されている。これまでのPVD(Physical Vapor Deposition)法やCVD(Chemical Vapor Deposition)法などの様々な薄膜成膜法や薄膜物質(Al, Si, Zr, Ti, Hf, 酸化物、窒化物、etc)の中で、高膜質の成膜により合金表面からの元素溶出の遮断が期待でき、唯一歯冠白色に成膜が可能な薄膜物質に、ALD法によるSiO2の成膜が考えられる。この方法により金属表面を歯冠白色に成膜できれば、理想的な新規ハイブリッド矯正用金属材料になると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は成膜法を確立する。審美性に最も適した条件により成膜した各試料について、それぞれの合金元素の溶出試験を行い、その効果を同定する。溶出試験はISO Standardに従い、浸漬溶液には1%乳酸溶液と0.9%NaCl生理食塩水と使用する。浸漬期間は1週間とし、測定には誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を使用する。2種類のワイヤーに含有される元素の析出量分析を行う。各ワイヤーの分析元素はニッケルチタンワイヤ-がNi, Ti、ステンレスワイヤーとブラケットはFe, Cr, Ni, Moである。合金元素の溶出はほぼ抑制されると予測できるが、溶出した元素があれば、成膜条件(膜厚、成膜物質等)の再検討を行い、再実験すると共に、その溶出元素のSol-solutionを使った細胞毒性試験と、SiO2薄膜自体の生態親和性を同定するために、SiO2薄膜上での細胞生存率測定試験も合わせて行う。
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Research Products
(4 results)