2012 Fiscal Year Research-status Report
口腔内pHの日内変動と幼若永久歯の萌出後成熟に関する研究
Project/Area Number |
24593109
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
渡部 茂 明海大学, 歯学部, 教授 (60113049)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 幸嗣 明海大学, 歯学部, 助教 (30570650)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | エナメル質脱灰 |
Research Abstract |
24年度は唾液中pHの日内変動について研究を行なったが、個人の変動の大きさや、無線pH計の不具合等の問題点が生じた。個人変動は被験者の一日の行動を制限、統一し、pH計はセンサーの改良を行なうことで、25年度引き続き実験を継続する予定である。本来25年度に行なう予定のエナメル質―唾液間ミネラルの移動について、前倒しで行なった実験結果についての経過を報告する。 歯の脱灰・再石灰化の現象は、歯-唾液間でのミネラルの移動によって生じている。マイクロX線CT(MCT)を用いて、臨界pH付近での牛歯エナメル質と人工唾液間のミネラル移動について検討した。健全エナメル質(ST群)の表層から深層に向けて150 Mm間隔で得たHounsfield unit value(HUV)をコントロールとして、pH5.5及び7.0に調整した人工唾液浸漬10日間後のエナメル質各層のHUVを比較した。一方、その際の人工唾液中カルシウム(Ca)、リン酸塩(P)の濃度を測定した。その結果、1.pH5.5浸漬群では、人工唾液中Ca, P濃度が有意に上昇し、エナメル質のミネラル密度はST群に比べ有意に減少した。このことは、臨界pH付近ではエナメル質から人工唾液へミネラルが移動したことを示唆している。2. pH5.5浸漬群でのエナメル質からのミネラルの放出は、表層(0-150 Mm)から最も多く行われていた。一方、pH7.0浸漬群においては有意な変化は認めなかった。3.pH5.5浸漬群で脱灰されたエナメル質を、pH7.0の人工唾液に浸漬した結果、エナメル質ミネラル密度は有意に増加した。同時に人工唾液中Ca濃度の減少が確認された。このことは、pH7.0の人工唾液中ミネラルがエナメル質中に取り込まれたことを示唆している。 以上の結果から人工唾液pHの変動によりエナメル質中のミネラルが移動することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度に行う予定であった課題、唾液pHの日内変化については、pH計のセンサーの不具合や、個人差の問題があって達成度は低いが、25年度に行う予定の研究を先に行ったため、全体の進展としてはおおむね順調と言える。25年度は24年度の研究でできなかった問題点を改善して引き続き行う予定である。 エナメル質ー唾液間ミネラルの移動に関した研究では、昨年度2編の英論文を投稿し、受理された。今年度もそれに関した論文の投稿を1編準備している状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は 1.前年度行ったエナメル質ー唾液中ミネラル移動の測定について、論文にまとめて公表する。2.牛歯では歯による差が大きいので、エナメル質粉末で作成されたアパタイトペレットを脱灰再石灰化研究に適用し、種々の条件で睡眠した場合、睡眠中の歯の脱灰について検討を行なう。3.前年度やり残した、唾液pHの日内変動について、pH計のセンサーの改良、対象者の条件設定を見直して行なう。これ等の結果より、エナメル質と唾液の関係を明らかにし、最終年度の課題、「エナメル質萌出後の成熟」についての実験へつなげていく予定である。3の内容については以下に示す。 1.ISFET電極内臓無線型計と、同有線型pH計を用い、有線型は食事中のpH測定時に用いる。2.センサーは無線計の場合、歯に直接ゴム製バンドで固定する。有線型の場合はレジンで床を作成し歯に固定する。固定する部位は上顎両中切歯唇面、上顎第1、第2大臼歯頬側面の2箇所とし、同時測定を行う。3.測定は安静時の場合、午前8時より12時、13時より17時、18時より22時、22時より24時に分割して、その間連続モニターする。就寝中は24時より7時まで測定する。食事中の測定は7時より8時、12時より13時、17時より18時の3回、有線型pH計にて測定する。4.対象者は十分な説明の後に研究協力の得られた6名の成人とし、実験期間中特別な行事がなく、ほぼ安静にすることを要請する。口腔内にう蝕や欠損歯がなく、安静時唾液分泌速度が0.3ml/min 前後で喫煙者を除く健康者とする。安静時測定中は飲食を禁ずる。3度の食事は各被験者同じメニューとする。睡眠は研究室の一角の控え室にて通常のベッド睡眠とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「次年度使用の研究費」は、前年度、文房具などに当てる予定で申請したが、アパタイトペレットが比較的高価で、また多く必要となることが予定されることから、翌年度に繰り越し、脱灰再石灰化の実験に適用することとした。
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Research Products
(8 results)