2012 Fiscal Year Research-status Report
ウサギ咀嚼様運動時の咀嚼部位による下顎頭運動の変化と咀嚼筋活動の調節機構
Project/Area Number |
24593114
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
森田 匠 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (60367612)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 顎関節 / 顎関節症 / 関節円板 |
Research Abstract |
咀嚼運動時の咬合接触部位の違いによる下顎運動および咀嚼筋筋電図活動への影響を調べることを目的として,ウサギ大脳皮質咀嚼野の電気刺激で誘発される咀嚼様運動時の,咬筋および外側翼突筋の筋電図活動,並びに切歯点,下顎頭,関節円板運動の同時記録を行った.上顎切歯部で維持し,上顎左側臼歯咬合面をアルミで覆う様な可撤式の装置を作成し装着した.可撤式の装置は,最後方臼歯で咬合接触するタイプのものと最前方臼歯で接触するようなタイプのものと2種類作成し,咬合接触部位の違いが咀嚼様運動時の顎運動と筋電図活動に与える影響を調べた. 作業側咬合接触部位を最後方臼歯に設定した場合,下顎頭は咬合相で後下方へと移動した.咬合接触部位を最前方臼歯に設定した場合,後下方への移動は生じなかった.しかし,作業側関節結節を削除した状態で,最前方臼歯で咬合接触させた場合,正常な咬合状態の時よりも有意に大きく前上方への移動が認められた.以上より,硬い物を咀嚼する場合,最後方臼歯で咬合接触すると顎関節への負荷はかからないものの関節結節と下顎頭の間に空間が生じ,関節円板が一時的に挟まれない状態となることが明らかとなった.一方,最前方臼歯で咬合接触すると顎関節部への負荷が増加することが示唆された.いずれの現象も関節結節,関節円板,下顎頭の3者の協調を阻害する可能性のある要因であり,関節円板前方転位の発症メカニズムを考える上で重要な所見である. 咀嚼部位の違いに応じた感覚入力の運動制御への影響を調べる前段階の実験として,下歯槽神経への電気刺激により誘発される開口反射の咀嚼運動中の変調について調べた.一般に閉口相,咬合相では低閾値の開口反射は抑制されることが知られているが,抑制の程度は作業側と平衡側とで異なり,作業側の方が強く抑制される可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウサギ大脳皮質咀嚼野の連続電気刺激により誘発される咀嚼様運動時の筋電図活動並びに切歯点,関節円板,下顎頭運動の同時記録は技術的に確立できた.硬い素材の咀嚼運動時の咬合接触部位を変化させる方法は上顎前歯部で維持し上顎左側臼歯部を覆う可撤式の装置の咬合面被覆部の厚みの調整で行うことができた.咀嚼運動中の咬合接触部位が最後方臼歯になる場合と最前方臼歯になる場合とでは下顎頭運動は大きく異なり何れの場合も関節結節,関節円板,下顎頭の3者の協調を阻害する可能性があるという結果が得られており,硬い物を咀嚼する場合の咬合接触部位の違いによる下顎運動への影響の調査については順調に進展していると考える. 一方,咀嚼部位の違いに応じた感覚入力の運動制御への影響を調べる実験については,単純に局所麻酔による感覚入力の遮断を行った場合,皮質咀嚼野電気刺激による咀嚼様運動自体が減弱してしまう場合も多く,工夫が必要であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
硬い物を咀嚼した場合を想定した実験については概ねデータが取得できたと考えている.従って,より詳細なデータの解析を進めてく予定である.さらに今後は,柔らかい物を咀嚼した場合を想定した実験を進めるために,現在アルミニウムで作成している可撤式装置に改良をしながらデータを集めいていく予定である. 咀嚼部位の違いに応じた感覚入力の運動制御への影響を調べる実験については,単純に局所麻酔による感覚入力の遮断を行った場合,咀嚼運動そのものが減弱してしまう場合が多いことから,開口反射と非侵害刺激により誘発される咀嚼運動の変調の関係から感覚入力の影響を推測することも検討している.下歯槽神経への刺激は侵害刺激の場合,開口反射が促通されるものの非侵害刺激の場合は抑制される.平成24年度に行った実験から作業側と平衡側では開口反射の変調に違いがあることが分かっており,咀嚼側や刺激のタイミングによる開口反射や咀嚼運動の変調から感覚入力と咀嚼運動の関係を検討する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画に従って,実験動物としてのウサギを購入する.本研究は実験条件が多岐にわたるため,それぞれの条件で信頼に足るデータを得るためには多数の実験動物が必要である.また,データ取得に必要な電子部品等の購入を行う予定である. 動物の苦痛を最低限に抑えるとともに効率的な実験のために,麻酔薬などの試薬や適切な手術用器具を購入する. 研究成果を国内学会で発表するに当たり旅費を使用する予定である.
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Research Products
(2 results)