2013 Fiscal Year Research-status Report
ウサギ咀嚼様運動時の咀嚼部位による下顎頭運動の変化と咀嚼筋活動の調節機構
Project/Area Number |
24593114
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
森田 匠 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (60367612)
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Keywords | 顎関節 / 関節円板 / 咀嚼運動 / 開口反射 |
Research Abstract |
咀嚼運動時の咬合接触部位の違いによる下顎運動および咀嚼筋筋電図活動への影響を調べることを目的として,ウサギ大脳皮質咀嚼野の電気刺激で誘発される咀嚼様運動時の咀嚼筋筋電図活動と下顎運動の同時記録を行った.咬合接触部位を最後方臼歯に設定した場合,下顎頭は後下方への異常な運動を示す場合と,後下方への移動が生じない場合が認められた.下顎頭が後下方へ動く場合とそうでない場合では,筋電図活動が大きく異なっており,後下方へは移動しない場合に特に作業側咬筋筋電図活動の振幅と持続時間が大きく増加していた.この様な変調の制御機構について,低閾値刺激により誘発される開口反射に着目し実験を行った.低閾値開口反射の生理学意義については明らかとなっていない点もあるが,咀嚼運動中において閉口相と咬合相で反射の振幅が減弱されることから,咀嚼運動中強い咬合力を発揮するために役立つ仕組みと考えられている.開口反射は四肢の逃避反射と異なり両側性に生じることが知られているが,グラインドを伴う咀嚼運動では左右の咀嚼筋で活動のタイミングや強さが大きく異なる.従って,咀嚼運動中の低閾値開口反射の変調が左右で異なるとすれば,低閾値開口反射は咀嚼運動中の咬合力(筋活動量)の調節に大きく関与していることを明らかにすることができ,本研究における感覚入力の運動制御への影響を調べる指標として用いることができると考え実験を行った.ウサギ咀嚼様運動時に,左側下歯槽神経に電気刺激を与えて低閾値開口反射を誘発し,左側顎二腹筋前腹の筋電図活動の記録を行ったところ,刺激側が作業側となった場合には平衡側となった場合よりも有意に強く開口反射が抑制されることが明らかとなった.さらに,作業側時において閉口相終末期に誘発した低閾値開口反射は,最大開口位,閉口相中期,咬合相中期に誘発した場合よりも有意に抑制されておりフェイズ依存的に変調を受けていた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までの研究では,咀嚼運動中の咬合接触部位が最後方臼歯になる場合と最前方臼歯になる場合とでは下顎頭運動は大きく異なり何れの場合も関節結節,関節円板,下顎頭の3者の協調を阻害する可能性があるという結果が得られたものの,感覚入力が咀嚼筋活動に与える影響やそれに伴う下顎運動の変調についてどのように実験を進めていくかという点について課題として残った.今年度は感覚入力の運動制御について研究を進めるために低閾値刺激により誘発される開口反射を利用して感覚入力の影響を調査することを試み,低閾値刺激により誘発される開口反射が咀嚼運動時の筋電図活動(咬合力)の調節に深くかかわっている可能性について明らかにできた.最後方臼歯で咬合接触が生じた場合に咬筋筋活動が著しく増加する場合とそうでない場合があり,そのよう感覚入力に伴う変調の違いについて検討するための手がかりとなる知見が得られたという点については概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
咬合接触部位の違いによる下顎頭・関節円板運動および咀嚼筋筋電図活動については概ねデータが取得できたので,今後は感覚入力の運動制御に及ぼす影響を中心に実験していく予定である. 平成25年度の実験で低閾値刺激により誘発される開口反射は,平衡側より作業側でより強く抑制され,さらに閉口相終末期のちょうど咬合接触が起こる前後の時点で特に強く抑制されることが分かったので,この様な変調が歯根膜からの感覚入力のによるものなのか,咀嚼筋の筋紡錘からの影響が大きいのか明らかにするために咀嚼サイクル中に下歯槽神経刺激をするタイミングを精密に調節し,変調に歯根膜感覚が不可欠であるのか調査していく.なお,咀嚼運動中に任意のタイミングで下歯槽神経に刺激を与えるシステムはすでに完成している.さらに,可撤式の装置を装着した状態で低閾値開口反射を誘発し, 装置によって変化する咬合接触部位の上下的位置や前後的な位置が開口反射の変調にどのような影響を与えるか調査し,咬合接触の違いによる感覚入力の変化が運動制御に与える影響を検討していく予定である.
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