2012 Fiscal Year Research-status Report
Toll様受容体を標的とした歯周組織の炎症制御に関する基礎的研究
Project/Area Number |
24593126
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
吉村 篤利 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (70253680)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 高士 長崎大学, 大学病院, 講師 (10284697)
原 宜興 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (60159100)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | Toll-like receptor / 歯周炎 / グラム陰性菌 / LPS / 遺伝子多型 |
Research Abstract |
プラーク中の菌体成分は、Toll-like receptor (TLR)などのパターン認識レセプターにより最初に認識される。 菌体成分を認識すると直ちに自然免疫系は活性化し、歯周組織に炎症反応を惹起する。この反応は感染防御のために必須であるが、結果として歯槽骨吸収などの組織破壊も引き起こす。有益な感染防御能を損なうことなく組織破壊を最小限に抑えることができれば、歯周疾患の進行の抑制に役立つことは間違いない。本研究の目的は、TLRを介したプラークからの刺激を標的として、歯周組織の炎症反応を制御する方法を明らかにすることである。 まず本年度は、我々のこれまでの研究からプラーク中に含まれる菌体成分の中でも特に歯周組織の炎症反応に大きく影響を与えていると思われるTLR4を中心に解析を行った。TLR4はグラム陰性菌外膜のリポ多糖 (LPS) 等を認識するが、我々はこれまでに、TLR4遺伝子の3'側非翻訳領域(3'-UTR)に位置する一塩基多型rs11536889は、慢性歯周炎と関連していることを明らかとした。この遺伝子多型がTLR4の発現量や機能と関連しているとすれば、グラム陰性菌に感染した歯周組織の炎症が遺伝的背景により調節されていることになるため、当初の研究計画とはやや異なるが、本年度はこの点に焦点をあてて研究を進めた。その結果、rs11536889におけるマイナーアレルホモ接合C/C群はG/G、G/C群と比較してTLR4発現量が有意に多いことが明らかとなった。また、この発現調節にはマイクロRNAと呼ばれる約22塩基の非コードRNAとの結合が関与していることが明らかとなった。 本年度の実験から、TLR4遺伝子多型がTLR4発現量を調節し、LPS反応性に影響していることが明らかとなった。これらの結果はグラム陰性菌に感染した歯周組織の炎症を調節する遺伝的背景として重要と思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究から、TLR4遺伝子多型rs11536889が、マイクロRNAの結合を介してTLR4発現量を調節していることが明らかとなった。また、TLR4発現量は直接LPS反応性にも影響していた。これらの結果は、グラム陰性菌に感染した歯周組織の炎症が遺伝的背景によって調節されていることを示したものであり、期待以上の結果と言える。しかしながら、当初の研究計画では、TLR4以外にもTLR2やTLR9のリガンドを用いて細胞を刺激し、これらに対する反応が歯周組織の恒常性にどのような影響を与えるかを解析する予定であり、この点に関しては解析が遅れている。これらを総合的に判断して、全体としてはおおむね順調と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に予定していたTLR2、TLR4、TLR9のリガンドによる細胞の刺激実験に関しては、やや遅れている点もあるので、平成25年度には、まずTLR2リガンドを用いた刺激実験を行い、さらに当初予定していたプラーク刺激後の培養細胞の炎症反応の解析を行う。 TLR2リガンドを用いた刺激実験では、口腔上皮細胞をTLR2リガンドのリポペプチドで刺激し、代謝や増殖、アポトーシスへの影響を検討する。我々のこれまでの実験で口腔上皮細胞はTLR2を優位に発現しており、TLR2刺激の口腔上皮細胞の代謝へ与える影響は重要と思われる。TLR9リガンドを用いた刺激実験等に関しては、研究計画全体の進行状況を勘案して省略とする。 プラークを用いた実験に関しては、長崎大学病院に来院した歯周病患者に研究内容を説明し、同意を取得した上で、4mm以上の歯周ポケットが存在する部位からプラークを採取する。各患者から採取したプラークで、NF-κBレポーター細胞を刺激し、その活性化度と歯周組織の状態の相関性について検討する。また、多形核白血球や単核球、歯肉線維芽細胞を、TLR2、TLR4、TLR9のアンタゴニストの存在下または非存在下で刺激する。刺激後に培養上清中のTNF-αやIL-6、IL-8などの炎症性サイトカイン濃度を測定し、TLRアンタゴニストの効果を検討する。また、感染防御機能への影響を検討するために、TLRアンタゴニストを添加して多形核白血球や末梢血から接着法で分離したマクロファージをプラークで刺激し、ラテックス粒子貪食能を非添加の場合と比較する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の予算の9割以上は執行しており、平成25年度もほぼ予定通り執行予定である。物品費に関しては、培養のための消耗品や試薬の購入の際に定価と実際の購入価格が異なる場合があるため、予算の1割以下の範囲内で誤差が生じているが、平成25年度もほぼ予定通りの物品を購入予定である。また、平成24年度の研究成果は学会で発表予定であり、学会旅費を使用予定である。備品等は現有のものを使用予定であり、特に購入の計画はない。
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Research Products
(16 results)
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[Journal Article] Aggregatibacter actinomycetemcomitans lipopolysaccharide regulates bone sialoprotein gene transcription.2012
Author(s)
Li X, Zhou L, Takai H, Sasaki Y, Mezawa M, Li Z, Wang Z, Yang L, Wang S, Matsumura H, Kaneko T, Yoshimura A, Ogata Y
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Journal Title
Journal of Cell Biochemistry
Volume: 113
Pages: 2822-2834
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Assessment of the Plasma/Serum IgG Test to Screen for Periodontitis2012
Author(s)
Kudo, Naruishi, Maeda, Abiko, Hino, Iwata, Mitsuhashi, Murakami, Nagasawa, Nagata, Yoneda, Nomura, Noguchi, Numabe, Ogata, Sato, Shimauchi, Yamazaki, Yoshimura, Takashiba
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Journal Title
Journal of Dental Research
Volume: 91
Pages: 1190-1195
DOI
Peer Reviewed
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