2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24593138
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Dental University |
Principal Investigator |
田中 昭男 大阪歯科大学, 歯学部, 教授 (10121823)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 歯周組織 / 再生歯科医学 / 歯根膜幹細胞 / 歯周病 / 新規合成ペプチド / 骨芽細胞分化 / 骨形成能 / 病理学 |
Research Abstract |
各臓器組織には幹細胞が存在し、その細胞によって臓器組織は維持されている。歯根膜組織にも幹細胞の存在が明らかにされ、歯根膜の維持に関与しているといわれている。歯周組織再生の鍵を握る歯根膜幹細胞を抽出し、それに対する新規骨形成剤ペプチドの作用を明らかにし、新たな骨形成に関わる因子を見出すことを目的とする。 健全なヒトから、歯並びの矯正を行う際に歯の移動スペースを確保するために便宜的に抜去した歯、あるいは水平に埋伏している智歯が将来、一部萌出して歯肉の炎症がもとで開口障害を起こさないように予防的処置のため抜去した歯を、医の倫理委員会の承認を得て、用いた。歯に付着している歯根膜組織を外科用メスで剥離し、細胞をばらばらにするために酵素で処理して細胞の懸濁液を調製し、セルストレイナーと呼ばれる篩いにかけて一個一個の細胞に分けた。幹細胞かどうかは近年よく用いられている幹細胞マーカー(STRO-1)を用いる方法を採用して確認した。この歯根膜幹細胞の継代3~5代の培養細胞に新規合成ペプチドを添加して培養した。硬組織形成能の確認は、骨芽細胞分化の特徴を示すアルカリホスファターゼ(ALP)活性、オステオカルシン産生、オステオネクチンmRNA発現、カルシウム沈着を測定することによって行った。 その結果、細胞増殖は培養期間のすべてに亘って有意に増加し、多量の石灰化粒状物がみられた。また、ALP活性、オステオネクチン遺伝子発現、およびオステオカルシン産生は対照群に比較して有意に増強した。 以上のように歯根膜幹細胞に新規合成ペプチドを添加して培養すると、骨芽細胞としてのマーカーの発現が増強し、骨芽細胞へと分化したことを認めたことから、新規合成ペプチドは歯周組織の再生にとって重要な役割を担うことが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
歯根膜から分離培養した細胞が歯根膜幹細胞であるかどうかの確認は幹細胞マーカーのSTRO-1の免疫染色によって実施した。得られた歯根膜幹細胞に新規合成ペプチドを添加して培養した結果、ALP活性、多量の石灰化粒状物がみられ、細胞増殖は培養期間のすべてに亘って有意に増加した。また、ALP活性、オステオネクチン遺伝子発現、およびオステオカルシン産生は対照群に比較して有意に増強した。初年度の目的は歯根膜幹細胞の分離培養とそれに対する新規合成ペプチドの作用を明らかにすることであったので、目的は達成された。さらにこの成果をまとめて国際雑誌に投稿し、受理され、印刷公表されることになっている。現在、Web上に印刷公表に先立って公開されているので、当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.分離培養した歯根膜幹細胞を24wellプレートに播種し、コンフルエントになったのちに1、10、100 ng/mLに調整した新規骨形成剤ペプチドを含む培地と交換して1、3、7日後に細胞を回収する。回収した細胞のALP活性を吸光度で測定し、DNA量はdsDNAアッセイキットを用いて測定する。最も高いALP活性およびDNA量を示したときの新規骨形成剤ペプチドの濃度を以後の研究に使用する。 2.至適濃度で培養した歯根膜幹細胞を回収し、PBSで洗浄して市販キットを用いてtotal RNAを抽出し、Spectrophotometerで定量し、バイオアナライザーによって定量的RNA解析を行う。 3.市販キットを用いてtotal RNAからcDNAを合成し、それとプライマー試薬などによってハイブリダイズしてdsDNAを合成し、次いでcRNAへ転写する。 4.転写したcRNAを増幅し、Cyanine3/Cyanine5などで標識したcRNAをカラムで精製し、SpectrophotometerでcDNAを定量する。 5.cDNAを市販のマイクロアレイにのせハイブリダイズし、蛍光検出スキャナーで取り込み、画像データを数値化して全遺伝子を専用ソフトウエアーで解析する。遺伝子解析に当たっては業者の受託解析システムを利用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(B-A)が875円であるが、培養試薬の購入費に充当する。
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