2013 Fiscal Year Research-status Report
ホスホプロテオームを用いた新たな歯周病バイオマーカーの探索
Project/Area Number |
24593147
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
前田 和彦 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (00346165)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保庭 雅恵 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (00303983)
永田 英樹 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (50260641)
関根 伸一 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (70506344)
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Keywords | 歯周病 / バイオフィルム / P. gingivalis / S. oralis / バイオマーカー / プロテオーム / ショットガンプロテオミクス / リン酸化 |
Research Abstract |
有力な歯周病細菌の一つであるPorphyromonas gingivalisが口腔内に定着するためには、初期デンタルバイオフィルム形成菌への結合が重要である。多菌種間でバイオフィルムを形成する際に、菌体内タンパク質のリン酸化活性が高まる。このことを利用して、本研究では、ショットガンホスホプロテオミクスの解析手法を用いて口腔内の複数のリン酸化されたタンパク質やペプチドのパターンを検出し解析することで、新たなバイオマーカーの探索をし、リソースとして構築することを目的とする。 1)P. gingivalisのショットガンプロテオミクス 本研究では、口腔レンサ球菌との混合培養がP. gingivalisのタンパク質発現に及ぼす影響について検討したところ、分子量300 kDa以下で等電点3-12の範囲に343のタンパク質が同定された。COGsデータベースで検索した結果、同定したタンパク質は19種類に分類できた。P. gingivalis単独群と混合バイオフィルム群との群間解析の結果、混合バイオフィルム群では3つのタンパク質が増加し、28のタンパク質が減少した(p <0.05)。 2)S. oralisのショットガンプロテオミクス 本研究では、P. gingivalisがS. oralisのタンパク質発現に及ぼす影響について検討したところ、分子量305 kDa以下で等電点3-13の範囲に250のタンパク質が同定された。S. oralis単独群とS. oralis-P. gingivalis混合群との群間解析の結果、混合群では単独群と比べ2つのタンパク質が増加し、2つのタンパク質が減少した(p <0.05)。S. oralisのgapdh発現量は、混合群の方が単独群と比較して6.8倍増加した(p <0.01)。また、S. oralisの菌体表層GAPDH量も、混合群の方が単独群と比較して2.2倍増加した(p <0.01)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)P. gingivalisのショットガンプロテオミクス P. gingivalisと口腔レンサ球菌を単独で培養した後、両菌を12時間混合した。培養液の粗タンパク質画分からトリプシン処理により得られたペプチドをショットガンプロテオミクスにより解析したところ、分子量300 kDa以下で等電点3-12の範囲に343のタンパク質が同定された。COGsデータベースで検索した結果、同定したタンパク質は19種類に分類できた。P. gingivalis単独群と混合バイオフィルム群との群間解析の結果、混合バイオフィルム群では3つのタンパク質が増加し、28のタンパク質が減少した(p <0.05)。 2)S. oralisのショットガンプロテオミクス P. gingivalisとS. oralisをそれぞれ単独で培養した後、両菌を混合し、12時間反応させた。反応液の粗タンパク質画分からトリプシン処理により得られたペプチドをショットガンプロテオミクスにより解析したところ、分子量305kDa以下で等電点3-13の範囲に250のタンパク質が同定された。S. oralis単独群とP. gingivalis- S. oralis混合群との群間解析の結果、混合群では単独群と比べ2つのタンパク質が増加し、2つのタンパク質が減少した(p <0.05)。S. oralisのgapdh発現量は、混合群の方が単独群と比較して6.8倍増加した(p <0.01)。また、S. oralisの菌体表層GAPDH量も、混合群の方が単独群と比較して2.2倍増加した(p <0.01)。 この1)と2)の結果をベースにして酸化チタンのカラムを使用してホスホショットガンプロテオミクスにてリン酸化タンパク質を濃縮し、配列決定を調査しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
P. gingivalis, S. oralis, S. gordonii, A. actinomycetemcomitans, F. nucleatum等をそれぞれ培養し、細胞溶解液に溶解し、それぞれタンパク質を抽出する。抽出したタンパク質をトリプシンで消化し、酸化チタンのカラムでリン酸化ペプチドを濃縮精製し、超低流量の流速でのナノ液体クロマトグラフィーによる保持時間とLC-MS/MS質量分析によるスペクトラムデータ解析によって、質量電荷比(m/z)と保持時間を2軸とし、ピーク強度を濃淡で表した2次元画像解析する。統計学的手法を用いて有用なピークの選択が可能となることから、バイオマーカー候補を選出する。 P. gingivalis, S. oralis, S. gordonii, A. actinomycetemcomitans, F. nucleatum等をそれぞれ一晩培養し、それぞれの菌体を混合し、細胞溶解液に溶解し、それぞれタンパク質を抽出する。抽出したタンパク質をトリプシンで消化し、酸化チタンのカラムでリン酸化ペプチドを濃縮精製し、超低流量の流速でのナノ液体クロマトグラフィーによる保持時間とLC-MS/MS質量分析によるスペクトラムデータ解析によって、得られたデータをポジティブコントロールと比較検討することで、明らかに差のあるピークを選出し、統計学的手法を用いて有用なバイオマーカー候補を選出する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
複数の菌体等をそれぞれ培養し、細胞溶解液に溶解し、タンパク質を抽出する。抽出したタンパク質をトリプシン処理し、酸化チタンのカラムでリン酸化ペプチドを濃縮精製し、ホスホショットガンプロテオミクス解析によって、コントロールと比較検討することで、明らかに差のあるピークを選出し、統計学的手法を用いて有用なバイオマーカー候補を選出するのに条件を検討するため。 サンプル処理とホスホショットガンプロテオミクスの試薬と解析に使用予定である。
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