2012 Fiscal Year Research-status Report
口腔と全身疾患の共通基盤としての肥満と慢性炎症における遺伝・環境相互作用
Project/Area Number |
24593148
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小島 美樹 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (20263303)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保庭 雅恵 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (00303983)
永田 英樹 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (50260641)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 歯の補綴 / 高血圧 / 食生活 |
Research Abstract |
本年度は、口腔と全身疾患の関連を推定する3つの経路のうち、食生活経路に焦点をあてて研究を実施した。 経年的に蓄積された事業所健診情報データベースを活用して、同一受診者の医科と歯科の健診データを連結した。42歳時に医科健診と歯科健診の健診情報がある者5137人のうち、46歳時に両方の健診情報を追跡できた者を抽出した。42歳時の歯科健診情報において欠損補綴を必要とする部位を有した者を分析対象とした。高血圧は、収縮期血圧≧140mmHgまたは拡張期血圧≧90mmHgとした。46歳時に欠損補綴を必要とする部位を有した者(治療放置群)と有しなかった者(治療完了群)で塩辛い・油っこい・甘いもの、野菜の摂取傾向の変化を比較した。多重ロジスティック回帰モデルを用いて、46歳時の高血圧に対する治療放置の調整オッズ比を算出した。調整変数は、性、42歳時の高血圧の有無、喫煙、飲酒、運動とした。 46歳時(4年後)の健診情報を追跡できた者は4528人であり(追跡率88.1%)、このうち、42歳時に欠損補綴を必要とする部位を有した者は307人であった。治療放置群(N=140)は治療完了群(N=167)と比較して、4年間で塩辛いものをよく食べるようになった者の比率が有意に高かった(22.1% vs. 12.0%, P=0.017)。また、治療放置群は治療完了群と比較して、46歳時に高血圧を有する者の比率が有意に高く(24.3% vs. 13.8%,P=0.018)、治療放置の調整オッズ比は2.19(95%信頼区間1.14-4.22, P=0.019)であった。 歯の欠損の治療放置は、塩分の高い食事パターンと高血圧の持続につながる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、口腔と全身疾患の関連性を推定する3つの経路、細菌感染経路、食生活経路、遺伝的素因経路とその相互作用の解明を目的としている。 現在までに、食生活経路については、事業所健診のリンケージデータを用いておおむね計画通りに進行している。細菌感染経路については、唾液サンプルを用いたPCRデータ(Porphyromonas gingivalis,Tannerella forsythia, Prevotella intermedia, Treponema denticola)を用いて予備分析を実施中であるが、歯肉溝滲出液(GCF)を用いた炎症マーカーの分析については、GCFのサンプリングが遅れている。遺伝的素因経路については、肥満関連遺伝子(PPARγ2・CAPN10)の多型(SNP)検出に用いるための頬粘膜細胞のサンプリングが遅れている。 歯肉溝滲出液(GCF)および頬粘膜細胞のサンプリングは大阪大学歯学部附属病院の健診受診者を予定しており、倫理審査委員会への申請の準備を行っている。しかし、院内の被験者のみではサンプルに偏りが出る可能性があること、また、信頼性の高い分析結果を得るためには多数のデータが必要であることから、院外でのサンプリングも視野に入れて検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)口腔検体試料の採取:歯肉溝滲出液(GCF)や頬粘膜細胞などの口腔検体試料の採取が、当初の計画よりも遅れていることから、応募者が関わる市民健診や職域健診に協力を依頼して、サンプリングの対象フィールドを確保する。また、院外でのサンプリングに備えて口腔試料の保管と運搬方法について検討を加える。 2)唾液中細菌叢と全身状態との関連分析:予備分析において、Porphyromonas gingivalis,Tannerella forsythia, Prevotella intermedia, Treponema denticolaの細菌叢の複雑化と糖・脂質マーカーとが関連する傾向が出ていることから、今後さらに分析を進める。 3)口腔と全身疾患の関連における食生活経路の解明:胃や心電図データを用いて、食習慣を介した歯の状態と全身状態との関連を分析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
口腔検体試料の採取の開始が遅れており、次年度に使用する予定の研究費が生じた。次年度では、頬粘膜細胞を用いた肥満関連遺伝子のSNP検出と歯肉溝滲出液(GCF)の炎症マーカーの定量を行う。 1)肥満関連遺伝子(PPARγ2・CAPN10)の多型(SNP)検出: PPARγ2遺伝子とCAPN10遺伝子DNA抽出キットを用いて細胞からDNAを抽出する。既報のPPARγ2遺伝子とCAPN10遺伝子の塩基配列を参考にしてプライマーを合成した後、リアルタイムPCR装置を用いて遺伝子を増幅して、PPARγ2多型(12Ala/12Ala・12Pro/12Ala・12Pro/Pro)、CAPN10多型(Del/Del・Del/Ins・Ins/Ins)を検出する。 2)炎症マーカーの定量:歯肉溝滲出液(GCF)中に検出される全身の炎症マーカーであるC-Reactive protein(CRP)と歯周病との関連が高い炎症マーカーであるIL-1β、IL-6、TNF-αをマイクロプレートリーダーを用いてEIA法で測定する。
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