2013 Fiscal Year Research-status Report
口腔と全身疾患の共通基盤としての肥満と慢性炎症における遺伝・環境相互作用
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24593148
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小島 美樹 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (20263303)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保庭 雅恵 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (00303983)
永田 英樹 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (50260641)
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Keywords | 歯周病 / 歯周病菌 / 脂質異常 / 齲蝕 / メタボリックシンドローム / 肥満 |
Research Abstract |
本年度は、口腔と全身疾患の関連を推定する3つの経路のうち、細菌・炎症経路に焦点をあてて研究を実施した。 【研究1】都市部一般住民コホート研究(吹田研究)に参加し同意を得た50~82歳の250人を対象とした。脂質異常の既往者を除外した。採取唾液からPCR法により4菌種の歯周病菌(P. gingivalis,T. denticola,T. forsythia,P. intermedia)を検出し、検出菌種の数により対象者を3群(0-1菌種群、2-3菌種群、4菌種群)に分けた。動脈硬化指数TC/HDL比3.5以上とLDL/HDL比2.0以上に対する菌種数群のオッズ比を性、年齢、BMI、喫煙、飲酒で調整して算出した。菌種数の増加に伴いCPIは有意に高くなり、HDLコレステロール値は有意に低くなった( P<0.001)。4菌種群のTC/HDL比3.5以上に対する調整オッズ比(95%信頼区間)は2.74(1.27-5.93)、LDL/HDL比2.0以上では3.40(1.58-7.35)であった。以上の結果から、歯周ポケット内細菌叢の複雑化と歯周炎、動脈硬化指数との間に正の相関関係が見られた。 【研究2】事業所健診を受けた42歳および46歳の男性4716人を対象とした。未処置齲蝕をもつ者は2886 人(61.2%)、もたない者は1830 (38.8%) であった。未処置齲蝕をもつ者はもたない者と比較して、肥満(BMI25以上・腹囲90cm以上)、高血圧・脂質異常、高血糖の者が有意に多かった。未処置齲蝕の年齢と生活習慣を調整したオッズ比は、BMI25以上1.35 (1.19-1.53)、腹囲90cm以上1.38 (1.21-1.58)、高血圧1.22 (1.07-1.39)、脂質異常1.18 (1.03-1.34)、高血糖1.33 (1.13-1.56)であった。メタボリックシンドロームの調整オッズ比は 未処置齲蝕1-2本群では1.45 (1.18-1.79) 、3本以上群では1.77 (1.36-2.29)であった(P for trend = 0.005)。以上の結果から、未処置齲蝕は主に肥満を通じてメタボリックシンドロームと関連する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、口腔と全身疾患の関連性を推定する3つの経路、細菌感染経路、食生活経路、遺伝的素因経路とその相互作用の解明を目的としている。 現在までに、食生活経路については、事業所健診のリンケージデータを用いて、歯の補綴放置と高血圧との関連、歯の補綴放置と消化器健診所見との関連についての結果を得ており、おおむね計画通りに進行している。細菌感染経路については、唾液サンプルを用いたPCRデータ(Porphyromonas gingivalis,Tannerella forsythia, Prevotella intermedia, Treponema denticola)を用いて脂質異常との関連を示唆する結果を得ている。また、事業所健診のリンケージデータの分析の結果、齲蝕と肥満およびメタボリックシンドロームとの関連についても結果を得ている。しかし、歯肉溝滲出液(GCF)を用いた炎症マーカーの分析と遺伝的素因経路である肥満関連遺伝子(PPARγ2・CAPN10)多型(SNP)の分析が進んでいない。 歯肉溝滲出液(GCF)および頬粘膜細胞のサンプリングは、応募者が関わる健診の受診者を対象として実施することを考えているが、既存の健診の流れに、これらのサンプリングを組み込むことが困難なため、サンプリングの対象集団の決定が難航している。現在、他の調査フィールドも視野に入れて検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)口腔検体試料の採取:歯肉溝滲出液(GCF)や頬粘膜細胞などの口腔検体試料の採取が、当初の計画よりも遅れていることから、対象フィールドとする健診の範囲を広げて、サンプリングのための集団を確保する。また、院外でのサンプリングに備えて口腔試料の保管と運搬方法について検討を加える。 2)唾液中細菌叢と全身状態との関連分析:予備分析において、Porphyromonas gingivalis,Tannerella forsythia, Prevotella intermedia, Treponema denticolaの細菌叢の複雑化と糖・脂質マーカーとが関連する傾向が出ていることから、今後、データ数を増やし、他の全身検査値との関連の分析を進める。 3)口腔と全身疾患の関連における食生活経路の解明:予備分析において、歯の状態と消化器健診所見とが関連する傾向が出ていることから、今後、食習慣を介した歯の状態と全身状態との関連の分析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
歯肉溝滲出液(GCF)および頬粘膜細胞のサンプリングは、応募者が関わる健診の受診者を対象として実施することを考えているが、既存の健診の流れに、これらのサンプリングを組み込むことが困難なため、サンプリングの対象集団の決定が難航している。そのため、口腔検体試料の採取と定量が予定よりも遅れたことから、次年度に使用する予定の研究費が生じた。 引き続き、唾液中の歯周病菌の検出を行う。さらに頬粘膜細胞を用いた肥満関連遺伝子のSNP検出と歯肉溝滲出液(GCF)の炎症マーカーの定量を行う。 唾液中の歯周病菌Porphyromonas gingivalis,Tannerella forsythia, Prevotella intermedia, Treponema denticolaをPCR法で測定する。肥満関連遺伝子のPPARγ2遺伝子とCAPN10遺伝子DNA抽出キットを用いて細胞からDNAを抽出する。プライマーを合成した後、PPARγ2多型(12Ala/12Ala・12Pro/12Ala・12Pro/Pro)、CAPN10多型(Del/Del・Del/Ins・Ins/Ins)を検出する。歯肉溝滲出液(GCF)中に検出される全身の炎症マーカーであるC-Reactive protein(CRP)と歯周病との関連が高い炎症マーカーであるIL-1β、IL-6、TNF-αをマイクロプレートリーダーを用いてEIA法で測定する。
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