2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24593164
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
田中 庄二 明海大学, 歯学部, 講師 (60105616)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 昌弘 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 特定講師 (30458963)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 唾液 / 歯周病 / 老化 / メタボローム解析 / キット化 |
Research Abstract |
今年度は、健常者と歯周病患者の進行度及び歯周病と加齢に伴い変動する唾液中の代謝産物をメタボローム解析により網羅的に測定した。 1.メタボローム解析を用いた老化および歯周病マーカーの検索について検討した。その結果、1)グリシン濃度は加齢とともに上昇した。2)グリシン濃度は、健常者、軽度、中等度歯周病患者の順に増加し、重度歯周病患者で若干減少した。3)ブチル酸、カダベリン、ピペルジン濃度は、健常者と比較し、軽度、中等度、重度の順に増加した。 2.歯周病患者における唾液と歯肉溝滲出液中の代謝プロファイルについて検討した。その結果、1)歯周病患者の唾液を比較すると、(1)多くの解糖系代謝産物が歯周病の進行とともに上昇した。(2)アミノ酸では、バリン、ロイシン濃度が上昇した。セリン濃度は軽度患者でのみ高かった。(3)アセチル化した物質が多く上昇した。2)炎症部と健常部の歯肉溝滲出液のアミノ酸のパターンは、歯周病の中等度と重度で大きく変化した。3)唾液中で歯周病の進行とともに変化した物質と、炎症部・健常部の歯肉溝滲出液において必ずしも相関しなかった。4)このGCFのアミノ酸プロファイルの変動が、唾液中代謝プロファイルの変動に直接反映されないが、限定的に影響している可能性が示唆された。 3.同一患者のテンプレート装着前後の唾液を採取し、メタボローム解析を用いて、代謝物の変動を調べた。その結果、テンプレート治療後は、アミノ酸の中ではグリシンだけが有意に上昇し、他の物質はわずかに低下、あるいはほとんど変化しなかった。このようにグリシンのみが特異的な動きをしており、全代謝物とグリシンのバランスが治療前後で変動していることが示唆された。 歯周病及び老化マーカーは、重複する可能性があり、それぞれのマーカーが特異的であるか否かは不明でありさらに検討したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、健常者と歯周病患者(軽度、中等度、重度)進行度のグループ分けを行い、学内倫理委員会のガイドラインに従い各被験者から唾液を採取し、歯周病と加齢に伴い変動する唾液中の代謝産物をメタボローム解析により網羅的に測定した。その結果から、病態(疾患程度、年代別)との間の老化及び歯周病マーカーになりえる物質の探索・評価後、統計学的解析を実施し検討した。 そして、1)メタボローム解析を用いた老化および歯周病マーカーの検索(田中庄二、第25回日本口腔診断学会・第22 日本口腔内科学会)2)歯周病患者における唾液と歯肉溝滲出液中の代謝プロファイル(田中庄二、秋田紗世子、町野守、坂上宏、杉本昌弘、曽我朋義、冨田勝.第54回歯科基礎医学会学術大会)について2演題の学会発表を行なった。論文では、同一患者のテンプレート装着前後の唾液を採取し、メタボローム解析を用いて、代謝物の変動を調べた(Tanaka S, Taga H, Maehara K, Kaneshima A, Machino M, Onuma H, Kaneko M, Sakagami H, Sugimoto M, Soga T and Tomita M: Pilot study of changes in salivary metabolic profiles induced by template therapy.IN bibo 26:1015-1020、2012)1編を投稿した。さらに、現在「坂上宏、田中庄二、杉本昌弘:老化マーカーとしての唾液中グリシンおよびプロリンの動態」についての論文を日本医学検査学会記念誌に投稿中(印刷中、2013.)であり、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も同様に、多くの健常者及び歯周病患者からの試料を採取する。 【方法】1.唾液の採取は、学内倫理委員会のガイドラインに従い、被験者の同意を得て行う。2.代謝物の定量:全唾液中の高分子をフィルター濾過により除去後、キャピラリー電気泳動・飛行時間型質量分析装置(CE-TOFMS)にてイオン性代謝物を網羅的に一斉定量する。3.臨床データとメタボローム解析の検討:病態(疾患程度、年代別)との間の老化及び歯周病マーカーになりえる物質の探索・評価を行う。治療前の歯周病の唾液検査としてのアプリケーションだけでなく、様々な応用例を考慮して、関連して収集した臨床情報とあわせて解析し、唾液プロファイルによる新たなサブタイプの検索(特定の臨床情報と強い相関を示す物質の探索など)を行い、マーカーによる治療効果の予測性や、治療効果を評価するサロゲートマーカーとしての使用可能かの評価試験を行う。また、早期診断の可能性を評価するため、歯周病患者でも早期の症例などを中心にした試験や、小児から高齢者や全身疾患など様々な臨床変数を持つ症例で評価試験を行う。これらの試験を通して、唾液中代謝プロファイルと口腔内環境の関係を明確化し、このデータを基盤として、歯周病の早期発見のマーカーと数理モデルの開発・評価を行い、歯周病早期・高精度検出の基盤データと技術開発を行う。4. 統計学的解析:データ解析は、慶應大学にて開発したMasterHandsを用いて、ピークの検出や代謝物の同定を行い、病態(疾患程度、年代別)の異なるグループ間統計解析は、JMP (SAS社)やGraphPad Prism(GraphPad Software社)を用いて行う。 5.データをもとに、老化マーカー及び歯周病マーカーの特定さらにそれらマーカーの起源の探索も検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究費は、大部分が消耗品であった。 研究代表者(田中)の明海大学では、小児(幼児、学童期、思春期)、若年成人、成人、高齢者、有病者など(健常者から有病者すなわち糖尿病、心血管系疾患患者など)からの試料がかなりの件数になり、これら試料採取における唾液採取用のチューブ、前処理用チューブなどの消耗品の計上経費が今年度と同様、大部分を占める。新たな設備備品の購入の必要性はないので計上していない。 研究分担者(杉本)の慶應義塾大学先端生命科学研究所では、前処理に必要な遠心分離機やメタボローム測定のためのキャピラリー電気泳動・質量分析装置が完備されており、本研究費で新たに測定機器を購入する必要はないので同様に計上は行っていない。また、試薬に関しても購入の必要はない。限外濾過用チューブなど、唾液測定の前処理で必要なチューブの消耗品を申請内容に含める。1年間での国内での学会発表を平成25年度で2回想定している。国際学会出張費の一部は、大学の奨励金で支払われるので、不足分を申請している。国内打ち合わせは、25年度でも2~3回を想定している。1件当たりの学会誌投稿料を5万円と想定し、25年度で2編投稿する費用として申請した。
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