2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24593164
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
田中 庄二 明海大学, 歯学部, 講師 (60105616)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 昌弘 慶応義塾大学, 政策・メディア研究科, 特任准教授 (30458963)
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Keywords | 唾液 / メタボローム解析 / 歯周病 / 老化 / キット化 / 健常者 / 小児 |
Research Abstract |
今年度は、様々な年齢と歯周病の進行度の異なる患者の唾液のメタボローム解析を実施し、網羅的に定量し代謝物の変化を調べた。 1. 唾液中グリシンとプロリンは年齢と歯周病に非依存的に一定の比率を示すか否か検討した。その結果、1)計144物質の定量を行い、加齢においては40歳を境目に有意に濃度の高くなる代謝物が多く存在し、歯周病とともに酸化ストレス関係の物質の上昇を確認した。2)31の代謝産物と6種類のアミノ酸が、歯周病の進行と共に増加した。乳酸と糖分解の最終産物が歯周病の進行と共に上昇した。3)相関値R2>0.8のネットワークで、21の代謝産物と2つの代謝産物の2つのセットの集団が示された。 Aspartic acid、 Glutamic acidなどの13種類のアミノ酸が相関を示した。Glycineは、 Proline と同様にOrnithine, Putrescine, N-Acetyputresine, Lysineと相関を示し(R2>0.7)、一方 Proline は Glycineとのみ相関を示した。4)全代謝物でお互いに相関をとると、多くのアミノ酸がR2>0.7で高い相関を示し、加齢に伴い唾液中の ProとGlyの濃度比は、被験者によらず一定値 (0.63:1)を示した。これは、年齢や歯周病にも関係なく一定で、特に高齢者では高血圧やうつ病、また、それに伴う治療薬の影響もなく一定であることが分かった。Hypは、Proの100分の1の濃度であった。AspとGluの間にも、高い相関が得られた。Pro/Gly比は、口腔内または唾液腺の状態を反映する指標になる可能性があることが示唆された。歯周病及び老化マーカーは、重複する可能性があり、それぞれのマーカーが特異的であるか否かは不明でありさらに検討したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、様々な年齢と歯周病の進行度の異なる患者から、唾液を採取しメタボローム解析を実施し、網羅的に定量し代謝物の変化を調べた。その結果から、病態(疾患程度、年代別)との間の老化及び歯周病マーカーになりえる物質の探索・評価後、統計学的解析を実施し検討した。学会発表:1)唾液中グリシンとプロリンは年齢と歯周病に非依存的に一定の比率を示す(田中庄二 、秋田 紗世、片山 直、坂上 宏 、杉本昌弘.第55回歯科基礎医学会学術大会・総会、 2013年9月22日、2013.)その結果、全代謝物でお互いに相関をとると、多くのアミノ酸がR2>0.7で高い相関を示した。この中でも特徴的なのは、プロリンが常にグリシンの0.63倍で一定の比率にあることが分かった。これは、年齢や歯周病にも関係なく一定で、この一定の比率をとる原因の同定には更なる追求が必要であり、また、どのような状況で破綻するかを調べる必要があるが、この比率は口腔内または唾液腺の状態を反映する指標になる可能性がある。 投稿論文: 1)検査診断学への展望 -臨床検査指計:測定とデータ判読のポイント-老化マーカーとしての唾液中グリシンおよびプロリンの動態.坂上 宏、田中庄二、杉本昌弘. 第62回日本医学検査学会記念誌、696-699,2013. 2) Hiroshi Sakagami,Masahiro Sugimoto,Shoji Tanaka, Hiromi Onuma, Sana Ota, Miku Kaneko,Tomoyoshi Soga, Masaru Tomita. Metabolomic profiling of sodium fluoride-induced cytotoxicity in an oral squamous cell carcinoma cell line. Metabolomics DOI 10.1007/s11306-013-0576-z,2013. おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度と同様に、多くの被験者からの試料を採取し、患者の唾液のメタボローム解析を実施し、網羅的に定量し代謝物の変化を調査する。 【方法】1.唾液の採取は、学内倫理委員会のガイドラインに従い、被験者の同意を得て行う。2.代謝物の定量:全唾液中の高分子をフィルター濾過により除去後、キャピラリー電気泳動・飛行時間型質量分析装置(CE-TOFMS)にてイオン性代謝物を網羅的に一斉定量する。3.臨床データとメタボローム解析の検討:病態の疾患程度と年代別との間の老化及び歯周病マーカーになりえる物質の探索・評価を継続する。 様々な応用例を考慮して、関連して収集した臨床情報とあわせて解析し、唾液プロファイルによる新たなサブタイプの検索すなわち特定の臨床情報と強い相関を示す物質の探索などを行い、マーカーによる治療効果の予測性や、治療効果を評価するサロゲートマーカーとしての使用可能か評価試験を行う。また、小児から高齢者や全身疾患など様々な臨床変数を持つ症例で評価試験を行う。これらの試験を通して、唾液中代謝プロファイルと口腔内環境の関係を明確化し、このデータを基盤として、歯周病の早期発見のマーカーと数理モデルの開発・評価を行い、歯周病早期・高精度検出の基盤データと技術開発を行う。4.統計学的解析:データ解析は、慶應大学にて開発したMasterHandsを用いて、ピークの検出や代謝物の同定を行い、病態(疾患程度、年代別)の異なるグループ間統計解析は、JMP (SAS社)やGraphPad Prism(GraphPad Software社)を用いて行う。5.データをもとに、老化マーカー及び歯周病マーカーの特定さらにそれらマーカーの起源の探索を行い、さらに、検査キットの開発も検討する予定である。
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