2013 Fiscal Year Research-status Report
口腔内細菌が及ぼすヘリコバクター・ピロリ定着への影響の解析と口腔内マーカーの探索
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24593166
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
米澤 英雄 杏林大学, 医学部, 助教 (60453528)
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Keywords | ヘリコバクター・ピロリ |
Research Abstract |
ピロリ菌は胃粘膜表層でバイオフィルムを形成している。細菌が形成するバイオフィルムの大きな役割として、浮遊状細菌とはことなる表現型を示すことが多くの細菌で明らかとなっている。われわれはピロリ菌の形成するバイオフィルムにおいても、クラリスロマイシンへの抵抗性の上昇、抗菌薬排出に関与するEfflux pumpの発現が上昇していることを明らかとし論文にて報告した。またピロリ菌保険適応除菌療法にて使用されているアモキシシリン、メトロニダゾールについてもクラリスロマイシン同様、ピロリ菌バイオフィルム形成により抵抗性が上昇していることを明らかにし、現在論文投稿中である。以上より、他のバイオフィルム形成細菌と同様に、ピロリ菌もバイオフィルムを形成することで、形質の変換が起きていることを明らかにした。またこの形質の変換には、Global regulatorであるCsrAが強く関与していることを明らにした。 ピロリ菌の主要な感染は2-5歳で経口的におきる。口腔内は約800種類以上、数にして1兆個程度の細菌が存在している。口腔内細菌は凝集しやすい特徴を持つ細菌が多く、ピロリ菌は口腔内細菌と凝集状態を保ち、胃内に到達していることが推測される。また2-5歳は歯牙萌出にともない口腔内細菌叢の変化が起きる時期である。そこでピロリ菌が経口感染する際に、影響を与える口腔内細菌の可能性として、う蝕原因細菌であるStreptococcus mutansに焦点をあてた。ピロリ菌とS. mutansを共培養し、その際のピロリ菌ウレアーゼの発現について検討を行ったところ、ウレアーゼが強く発現していることを見いだした。そこでピロリ菌とS. mutansを共培養した状態でマウスへ感染させると、ピロリ菌単独の場合と比較して、初期定着数が増加することを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ピロリ菌が形成するバイオフィルムは浮遊状細菌とは異なる表現型を示すこと、そのメカニズムとしてGlobal regulatorであるCsrAが関与していること、そしてピロリ菌と口腔内細菌であるS. mutansの共培養におけるウレアーゼ発現上昇や、マウス実験モデルを用いた定着への影響を明らかとするなど、計画通りに研究は達成できていると考える。本来S. mutansとの共培養におけるウレアーゼ発現のメカニズムにも、CsrAやクオラムセンシングであるLuxSによる制御であると考えたが、より複雑なメカニズムであり、もう少し検討が必要であると考える。本年度、これら制御を明らかとする予定である。 若年者ピロリ菌感染者と非感染者との口腔内細菌叢を比較することで、ピロリ菌感染に影響を及ぼす口腔内細菌のスクリーニングを行うことを目的とするメタゲノム解析を、本年度はピロリ菌陽性唾液2検体、陰性唾液2検体にて行った。現在データ解析を行っている。来年度はさらに検体数を増やして解析を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
ピロリ菌とS. mutans共培養におけるウレアーゼ発現上昇のメカニズムの解明を行う。現在CsrAが関与していることは明らかと出来ているものの、その発現制御のメカニズムは他の因子が複雑に関与していることが推測できる。さらにCsrAは大腸菌においてsRNAがCsrAの遺伝子発現制御機構に関与していることが報告されている。一方でピロリ菌ではそのような因子は解明されていない。そこでCsrAの制御機構に関与するsRNAの同定またはピロリ菌におけるCsrAの制御機構を明らかとすることで、ピロリ菌とS. mutans共培養におけるウレアーゼ発現上昇のメカニズムの解明に繋がると考える。 ピロリ菌感染に影響を与える口腔内細菌の包括的な検討は、ピロリ菌陽性患者唾液および非感染患者唾液のメタゲノムで明らかとする。現在それぞれ2検体の解析を行っているが、本年度はさらに唾液5-10検体の解析を行う。それによりピロリ菌感染に影響を与える可能性のある口腔内細菌を探索する。得られたデータより、実際の細菌を分離し、in vitroにおけるピロリ菌定着因子への影響をmRNAやタンパクレベルにおいて検討を行う。
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