2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24593368
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
江藤 望 宮崎大学, 農学部, 准教授 (90232959)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河原 聡 宮崎大学, 農学部, 准教授 (30284821)
窄野 昌信 宮崎大学, 農学部, 教授 (70253515)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 乳腺炎 / フルクトース / 抗炎症 / 人工ニューラルネットワーク |
Research Abstract |
乳腺炎の発症は、母乳育児を困難にする。発症危険因子として経験的に食事があげられているが、科学的根拠は全く解明されていない。このため、統一したガイドラインが存在せず、母親たちを混乱させている。本課題では食事成分が乳腺炎の危険因子であることを実験的に証明することを目的とした。 先ずスクロースを多量に摂食した親マウスは、仔が離乳した際、乳腺に炎症を発症することを血中CRP濃度、乳腺組織中の好中球数の計測により確認した。スクロースやその構成糖であるフルクトースの摂取は、肝臓に炎症をもたらすことがよく知られている。一方で、食事成分に含まれるフルクトースは、その大部分が肝臓で代謝を受けるので、今年度は血中に存在する濃度の決定を試みた。その結果、スクロース摂食マウスでは、マルトース摂食マウスと比較して、その血中フルクトース濃度が約1.7倍に上昇していた。 別途、ハイスループット食品機能性評価法を用いた炎症抑制食品成分のスクリーニングを試みた。35種類の食品成分及び薬剤(主にフラボノイド系、脂肪酸、高脂血症薬、アミノ酸等)、並びに19種類の宮崎県産農産物抽出物をHepG2細胞に添加して、MxA等13種類の細胞内マーカータンパク質の発現量について、合計約20,270種のデータを取得した。人工ニューラルネットワークにて解析し、抗炎症作用を有する複数種類の成分を推定した。更に、推定成分の抗炎症活性をNFκB認識配列を標的としたレポーターアッセイにより実測したが、いずれもTNFαによって誘導されるNFκBの活性化を阻害することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
後述のように、研究資金の有効利用を目的に、より安価な製品(微量成分分光光度計)を購入するために購入年度を1年延期した。これにより研究費減額分を吸収できたが、一部mRNA実験に遅れが生じた。しかし、H24年度に十分な予備実験を行っているので、H25年度に挽回可能であると判断している。代わりに、H25年度に実施予定だったin vivo実験を前倒しして実施したことから、概ね順調に進展していると考えられる。 また、抗炎症活性を有する食品成分のスクリーニングに関しては、in silicoによる推定だけでなく、培養細胞を用いた実測を行ったので、当初の予定以上に進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度にやり残した乳腺上皮細胞に与えるフルクトースの影響評価を先ず行う。すなわち、初代乳腺上皮細胞を用い、グルコースとフルクトースの含有比を変えた複数の基本合成培地で培養する。フルクトーストランスポーターの発現をはじめ、炎症関連、糖質・脂質代謝関連遺伝子の発現、蓄積トリグリセリド量を確認し、炎症発現の有無、及び炎症を発症するフルクトース濃度を決定する。 次いで、食事成分による乳腺炎の発症、或いは重篤化に乳汁のうっ滞は必要かどうかを検証する。母乳育児を支持する医療機関の指導にも拘わらず、児の飲み残しを搾乳していない授乳婦は多い。こうした授乳婦が、特定の食事成分を多量に摂ることで、乳腺炎を誘発しているという仮説が導かれる。そこで、モデル動物として、ddYマウスを用いた摂食実験により、仮説を検証する。食餌組成はAIN76組成に準じて調整し、調査対象となる食餌成分は、ヒトにおける平均的な摂取量を勘案して基本食餌組成に含ませる。仔マウスを強制離乳させる事により、乳汁のうっ滞を誘導した条件を加える。 摂食試験後に乳腺組織(組織全体 and/or 特定の細胞集団)、肝臓、血清、乳汁の4点を素材とし、多面的な生化学的測定を行う。トランスクリプトーム解析対象は、炎症関連、アポトーシス関連、代謝関連の遺伝子。遺伝子発現以外の測定項目は、糖質、炎症関連タンパク質、尿酸、Na+、トリグリセリド等とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24に購入予定だった微量成分分光光度計は、より安価な装置がH25年度に販売されることになった。研究費申請時からの減額分を吸収可能と思われたので、研究資金の有効利用のために購入をH25年度に延期した。
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