2012 Fiscal Year Research-status Report
病院における潜在的および顕在的DV被害女性への看護実践能力向上プログラムの開発
Project/Area Number |
24593396
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Okinawa Prefectural College of Nursing |
Principal Investigator |
井上 松代 沖縄県立看護大学, その他の研究科, 講師 (30326508)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新城 正紀 沖縄県立看護大学, その他の研究科, 教授 (50244314)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / データベース |
Research Abstract |
本研究は、医療者がDV被害女性の早期発見のために病院の問診票で暴力被害の情報を患者から得られる体制作りと被害者への適切な対応への実践力向上、支援体制確立を目的としている。当該年度は、病院勤務看護者のDVに関する知識と対応実践の現状を明確にするための質問紙調査を実施した。研究対象は本県の公的総合病院7施設に勤務する看護者2570名で、質問紙調査の回収は2095名(回収率81.3%)、そのうちのDV被害者早期発見に関する認識の質問30項目への全回答者1855名(有効回答率88.5%)が分析対象となった。その分析結果より以下のことが明らかとなった。1)病院勤務看護者のDV被害女性患者への対応経験は3割で、それは女性看護者約1500名対象の先行研究での性被害・暴力被害患者対応経験の2割(片岡ら2004)よりも多く、本研究のDV被害女性に限定した看護対応経験だけでも先行研究の結果を超える非常に高い頻度であった。2)DVに関する学習経験について、研修会参加等の専門的学習経験が全くない者が6割を占めた。3) DV被害者早期発見に関する認識の質問30項目の探索的因子分析結果より、第1因子5項目「リスク回避」、第2因子3項目「潜在的暴力」、第3因子7項目「患者像」、第4因子5項目「支援連携」の20項目4因子が抽出された。信頼性および妥当性がCronbach's alpha 係数と確認的因子分析により確認されたため今後の介入的教育プログラム(研修会)前後で対象者の認識の変化を確認する指標として利用可能性が高いことが明らかとなった。4)特に第3因子「患者像」の認識が最も低く、暴力によって様々な健康被害を生じ、患者として病院に存在することへの理解が低いことが明らかとなった。 本結果は、介入的教育プログラム実施への根拠資料および評価に利用可能であることから意義ある成果が得られたものと推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、医療者がDV被害女性の早期発見のために病院の問診票で暴力被害の情報を患者から得られる体制作りと被害者への適切な対応への実践力向上、支援体制確立を目的に計画、遂行された。当該年度(平成24年度)当初の計画では、1)病院勤務看護者のDVに関する知識と対応実践の現状を明確にする(質問紙調査:ベースライン調査および1次調査)、2)1)の調査結果を参考に介入施設への教育プログラムの計画を立て実施する、3)介入施設への教育プログラム実施後の変化を把握する(2次調査)の順に実施予定であった。平成24年度は、1)病院勤務看護者のDVに関する知識と対応実践の現状を明確にする(質問紙調査:ベースライン調査および1次調査)のために研究代表者が所属する大学の倫理審査委員会の承認を受け、沖縄県内の公立、国立病院の看護師を対象に調査を実施し、データ入力作業、解析を行い、学術雑誌(英文)への投稿のための論文作成に取り掛かった。解析は、探索的因子分析、確認的因子分析を行い医療者のDVへの意識および対応についての特徴を分類し、その特徴の関連について検討を行った。また、介入的教育プログラム実施に向けた専門家の検索やプログラム内容の検討のために研究代表者および分担研究者がDVに関連した様々な研修会に参加し情報収集を行った。そのため平成24年度は、実質的に1)のみの実施と2)の計画途中:教育プログラムに組み込む課題の抽出(研修内容のテーマ設定)まで実施した。今年度(平成25年度)は、平成24年度に実施できなかった2)と3)についても今年度の計画と合わせて行う予定である。若干計画の遂行が遅れている事実はあるが、今年度は確実な遂行に向け、計画実施の確実な管理運営を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度(平成24年度)で、大規模調査を終え、病院勤務看護者のDV被害女性患者の早期発見に関する認識の現状把握ができた。その根拠資料をもとに、次年度(平成25年度)、教育プログラムを作成し、調査対象施設7施設の中から介入施設を選定して、専門家による研修会を3回程度実施する。 そのためには、研究分担者との役割を明確にして、教育プログラムの企画・運営のための行動計画を策定し、研究を推進していく。また、同時に明確になった調査結果を関連の学術誌および学会に発表する。 さらに今後(平成25年度~平成26年度)、教育プログラムを実施する介入施設の管理者または担当者と密に連携し、施設毎にDV被害女性患者の早期発見への取り組みをサポートできる関係性を構築していく。介入施設で実施した教育プログラムの評価および効果について研究者と施設側と情報を共有していく。そして、DV被害女性患者を早期発見できる問診票の作成、DV被害女性患者への対応に関する体制作りや対応のためのマニュアル作成等への課題について、研究者は施設側と一緒に取り組み、看護者のDV被害女性患者に対する対応実践力の向上に向けたサポートを継続していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度(平成24年度)に予定していた計画の一部が次年度(平成25年度)に移動したため、その分の未使用の研究費も次年度に繰り越された。次年度に移動した計画というのは、教育プログラムの実施のことで、当初から県内外から3名の専門家を招いて研修会を開催する計画であった。そのための旅費と講師謝金等の研究費(46万円)が未使用で、それが次年度に繰り越された分である。 よって次年度(平成25年度)は、平成25年度の当初計画に、前述の前年度から移動した計画(教育プログラム)を含めて実施していく予定である。
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