2012 Fiscal Year Research-status Report
医療介入が必要な重症乳腺炎診断アセスメントツールの開発
Project/Area Number |
24593405
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
長田 知恵子 静岡県立大学, 看護学部, 講師 (30458393)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 日本 |
Research Abstract |
平成24年度の調査は、乳汁生成III期の母乳育児支援歴8年未満と8年以上の看護者を対象に、母乳外来や母乳育児相談室で実施した。対象看護者には、基本情報用の質問紙と協力母子毎にアセスメントツールへの回答を依頼し、回答は郵送で回収した。なお、実施するにあたり、静岡県立大学の倫理審査委員会の承認を得た。 調査実施期間は、平成24年12月から平成25年4月であった。対象看護者は10名で、乳汁生成III期の母乳育児支援歴0~16年(平均4.8年)、このうち経験年数8年未満の若手看護者が7人(平均1.0年)、8年以上の経験者は4人(平均11.5年)であった。協力母子は、46組であった。来院時の主訴は、「乳汁うっ滞(28.3%)」「白斑(18.9%)」「乳腺炎の軽症(9.4%)」「乳汁分泌不足(9.4%)」等であった。 若手看護者のコメントによると、「“乳汁の粘調性の中の乳汁のサラサラ”の程度がわからない」「硬結の有無の1(全くない)と2(わからない)の区別が難しい」というように、各項目の観るべきポイントはわかってもその程度に対するツールの説明が必要であることがわかった。また、「直接母乳困難事例には使いづらい」「双胎の事例はどうするのか」「陥没乳頭のケースで迷った」という意見があった。一方、母乳育児支援歴8年以上の看護者の意見では、「観察ポイントが明確なので、助産師経験年数に関係なく観ることができる」「とても使いやすかった。」という意見もあったが、「“乳汁の粘調性”では、トラブルのある腺とない腺で違うのでわかりづらい。」というように、より詳細に観ている経験者ならではの問題も挙がった。さらに、「ツールがすべて1なら、“問題なし”か」というように、今後調査をする際に、ツールの名称から結果に影響する可能性も示唆され、ツールをどのように説明したらいいのかについても検討するという課題が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
“授乳期の乳腺炎診断アセスメントツール”の開発過程において、研究1年目の現在、これまでのツール項目等の用語の適切性を見極めるため、内容妥当性および表面妥当性の検討を行ってきた。助産師10名、協力母子46組の協力により、平成24年度の研究は終了し、アセスメントツールの項目を追加修正することができた。 以上より、現在、アセスメントツールの項目の一部修正やツールの説明文作成等の課題は残るものの、当初の研究目的に基づいた研究は平成24年度の計画予定通り実施できたことから、研究1年目の現在、研究は概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の調査では、特に「乳汁の粘調性」に関する意見が多かった。経験年数の違いによってツールの使い方の不明瞭さが異なることがわかり、両者にとってわかりやすくするためには、ツールの説明文を作成する必要があると考える。また経験者がツールを使用する際に、“授乳期の乳腺炎診断アセスメントツール”というツールの名称と、項目の程度から診断名が推測されることが指摘された。これは、今後の調査結果に多大な影響を及ぼす可能性が示唆され、名称の検討や調査時の依頼方法の検討が課題であると考える。 また授乳期の乳腺炎はうっ滞性乳腺炎が多く、細菌性によるものではないこともあるため、必ずしも培養検査が必要とは限らず、臨床現場においても細菌培養検査は必須ではない。しかし、調査では根拠となる外的基準を示すことが必要である。平成24年度の調査時に専門家からも細菌培養の検査を行うことにより、さらにデータの信頼性が高まるとアドバイスをいただいた。そのため、平成25年度の調査において細菌培養検査を調査項目に含めることを新たに計画に含めることとした。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでの研究費の使用計画と大きく異なる点は、平成25年の調査に細菌培養検査を含めることによる検査代の加算である。 臨床現場では、細菌培養検査は乳腺炎すべてのケースに実施されてはいない。しかし、調査では外的評価基準となる信頼性の高いデータを得ることは、調査結果に大きな影響を及ぼすこと可能性があることから重要である。細菌培養検査は、2010年の診療点数によると1件で150点である。対象者数は75人(対象乳房150)程度であり、それら検体の採取にかかる費用や検体およびデータの輸送コストを考慮すると、約700,000円がかかると概算できる。 上記以外の研究費使用計画に大きな変更点はない。つまり、平成25年度の調査では、主に超音波検査および細菌学的培養検査を研究費として使用する予定である。
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