2012 Fiscal Year Research-status Report
早産児の「発達ケア」モデル構築とその効果に関する研究
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24593412
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Seirei Christopher University |
Principal Investigator |
大城 昌平 聖隷クリストファー大学, リハビリテーション学部, 教授 (90387506)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 早産児 |
Research Abstract |
本研究は、早産児の「発達ケア」のモデル施設を構築し、モデル施設における「発達ケア」が児の神経行動発達,親子の関係性発達に及ぼす効果を検証することである。それにより、「発達ケア」の理論と実践をわが国に定着・発展させ、わが国の新生児医療の資質の向上と子どもの発達、親子の関係性の改善を図ることを目的としている。 研究期間は3年間で、国内2つ母子周産期センターで、専門職者に「発達ケア」の教育トレーニングを施行し、「発達ケア」のモデル施設を構築(平成24年度)して、その効果検証(平成25-26年度)を行う計画である。 平成24年度は、都立墨東病院(東京)と高槻病院(大阪)の2つ母子周産期センターの協力を得て、「発達ケア」のモデル施設の構築を目標とした。該当2施設において、施設職員に対し、「発達ケア」の理念と実践方法を学ぶための教育トレーニングを実施した。教育トレーニングは、Dr. Alsらの開発したNIDCAP(新生児の個別的発達ケアの評価とプログラム:Newborn Individualized Developmental Care and Assessment Program)に基づいた関係職種者向けの教育プログラムである。教育プログラム内容は、①基礎知識、②行動観察、③環境構築、④ケアの実践、⑤ケアチームの構築、⑥家族支援などによる理論と実践からなるプログラムである。教育トレーニングにはNIDCAPトレーナーのgretchen Lawhon氏を招聘した。該当施設では教育プログラム実施後も、「発達ケア」チームを組織し、組織的かつ継続的な「発達ケア」の取り組みが行われており、我が国において早産児の「発達ケア」を推進するためのモデル施設を構築することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、都立墨東病院(東京)と高槻病院(大阪)の2つ母子周産期センターの協力を得て、早産児の「発達ケア」のモデル施設を構築することができたことが大きな研究成果であった。該当2施設の関係職員に「発達ケア」の教育トレーニングを行い、その後も継続的かつ組織的に、「発達ケア」の取り組みが実施されている。今後も我が国の「発達ケア」モデル施設として、その発展と役割が期待できる。 また、平成25‐26年度は、この2つのモデル施設等を対象施設として、早産児の「発達ケア」の効果検証を行う予定であり、モデル施設における「発達ケア」の効果を実証的に検討することで、早産児の「発達ケア」の理論と実践を我が国に定着・発展させ、新生児医療の資質の向上を図ることが期待できる。 同時に「発達ケア」の効果検証を行うための基礎的な検討も行った。NICUに入院している早産児を対象として、脳波測定器Amplitude integrated electroencephalograph(aEEG)を用いた睡眠発達研究を実施した。睡眠発達は神経系の発達とも関連があると考えられるため、「発達ケア」の効果を睡眠発達と神経行動発達の観点から検討することができると考えられた。この基礎研究の実施により、平成25年度から「発達ケア」モデル施設における「発達ケア」の効果を、睡眠発達研究等により実証的に検証する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25‐26年度は、都立墨東病院(東京)と高槻病院(大阪)の2つ母子周産期センターの「発達ケア」モデル施設等を対象施設として、早産児の「発達ケア」による児の成長と発達(脳発達および短期的行動発達)、親子の愛着形成と育児、およびケアスタッフのケア技術や意識変化についての検討を行い、「発達ケア」の効果を検証することを目標としている。具体的な研究方法は、モデル施設の都立墨東病院と高槻病院に管理されている早産児とその家族、およびスタッフを対象として対象児の医学的(合併症の有無、呼吸管理期間、体重増加など)および脳発達の指標として脳波計による睡眠発達の測定、神経行動発達指標としてブラゼルトン神経行動評価による発達評価を行う。また母子関係では親のケア参加、母子相互作用過程、母親の心理変化、育児姿勢について、また育児ストレスについて観察および質問紙および聞き取り調査により行う予定である。同時に、ケアスタッフのケア技術や意識変化などについて観察評価や質問紙および聞き取り調査により行う。これらにより、「発達ケア」の効果を実証的に明らかにする。「発達ケア」の効果を科学的に検証することで、早産児ケアの改革と子どもの発達、親子の関係性の改善、さらに両親の育児支援の改善に結び付くことが期待できる。またこれらの研究成果を踏まえて、専門職者を対象とした「発達ケア」のセミナー開催やテキスト等の出版により、わが国の新生児医療の質の向上を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度(25年度)の研究目標は「発達ケア」モデル施設等における早産児の「発達ケア」の効果を児の成長と発達(脳発達および短期的行動発達)、親子の愛着形成と育児、およびケアスタッフのケア技術や意識変化について検討し、「発達ケア」の効果を検証することである。そのための研究費の使用計画は、1)モデル施設におけるNIDCAPトレーニング費(講師謝金、交通費等)、2)調査測定のため研究旅費および研究補助者への謝金費、3)研究対象者への調査協力費、4)脳波測定のための備品、消耗品等の費用、等を予定している。
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