2014 Fiscal Year Research-status Report
子ども虐待事例の家族生活力量向上をめざすアクションリサーチ
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24593431
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
小林 恵子 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50300091)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 子ども虐待 / 家族生活力量 / ストレングス / 保健師 / ケア / 評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、研究者が子ども虐待事例に対するケアを実施している保健師を対象に、支援に困難を感じている子ども虐待事例検討会を実施し、家族生活力量のアセスメントに基づき、ストレングス・モデル(Rapp、1998/1998)を用いてケア実践をサポートする。 事例検討会は、検討、実践、モニタリング、評価の過程を螺旋的に展開させ、支援開始時と支援終了時(あるいは検討後)に家族生活力量、虐待の改善等を評価することである。 2014年度は、2013年3月に実施した20事例の追跡調査の分析を継続するとともに、さらに5事例を調査している。新たに追加した事例を除く20事例の分析を進めており、概要は次のとおりである。虐待発見のきっかけは「健診」が25%、「病院からの通報」15%、「家庭訪問」と「学校からの通報」がそれぞれ10%であり、乳幼児健診や乳児全戸訪問事業などの保健事業や医療機関や学校などの関係機関からの発見が大半を占めていた。虐待の種別はネグレクトが55%と最も多く、また、母親がうつ等、精神疾患等健康問題を抱える事例が60%であった。虐待重症度は軽度40%、中等度25%であり、比較的軽度から中等度の事例が大半を占めていた。支援後、保健師が「改善した」と思う事例が45%、「どちらとも言えない」と思う事例が50%であった。事例はいずれも事例検討を行った支援者が支援に困難感を感じている事例であるが、約半数に改善がみられ悪化した事例はなかった。支援前後の家族生活力量の変化をみると、「健康維持力」、「問題対処力」、「養育力」、「社会資源活用力」、「関係調整・統合力」、「住環境調整力」、「経済家計管理力」が有意に向上していた。一方、「家事運営力」、「役割再配分補完力」は有意な差は見られなかった。75%の事例で家族生活力量の改善がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
事例検討会でストレングスモデルを用い家族のもつ強みに着目し、強みを伸ばす支援を検討し、家族生活力量を高めるよう働きかけるというケアにつなげ、それを評価することで虐待や家族問題の改善、家族生活力量の向上につながっていると考える。検討事例は30例以上と目標数をほぼ収集できているが、事例検討後の保健師のケアによる家族生活力量のデータ収集と分析を進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
子ども虐待事例検討会において、引き続き追跡調査をしていく予定である。分析を進めている20例の事例については、データを統計量と質的データとあわせた分析をさらに進めるとともに、特に、事例ごとに支援者の抱える困難感、家族の問題の種類等を分析し、家族の強みをどのように見つけ、支援していくことが有効かを分析していく予定である。 さらに追加した新規事例の分析を進め、分析と成果公表を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
事例の分析で専門家からの助言を受ける機会を設定せず、謝金が不要になったこと、入力を研究者自身で行い人件費が削減されたこと、学会発表のための翻訳料が不要となったこと等によるものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
備品・消耗品として研究に必要な図書やUSBなどを整備する。旅費として、学会に参加し、先進的な取り組みや理論について情報収集するとともに成果発表旅費を計上する(海外、国内旅費)。データ収集のための旅費を計上する(国内旅費)。謝金等として、子ども虐待の有効な支援内容の分析、看護、福祉の専門家から専門的知識の提供を受ける。海外文献の翻訳等、研究資料の整備や質問紙調査集計作業等について事務補助者への謝金を計上する。学術雑誌投稿のため、ネイティブチェックの費用を計上する。 なお、研究の最終年度のため、研究成果報告書作成のための人件費や印刷費を計上する。
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