2012 Fiscal Year Research-status Report
児童虐待による一時保護児童と家族の親子再統合に向けての子育て支援プログラム
Project/Area Number |
24593452
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
柳川 敏彦 和歌山県立医科大学, 保健看護学部, 教授 (80191146)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 則子 国立保健医療科学院, その他部局等, その他 (30150171)
上野 昌江 大阪府立大学, 看護学部, 教授 (70264827)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 児童虐待 / 親子再統合 / 児童虐待再発予防 / 児童相談所 / 子育て支援プログラム |
Research Abstract |
児童虐待の再発 予防に対する具体的、かつ効果的対応策の現状は十分に明らかにされていない。本研究の目的は、児童虐待の再発防止(3 次予防)の観点から、1.全国児童相談所の親子再統合 に関する調査を行うこと。2.前向き子育てプログラムの導入とその有用性の評価の2点である。 平成24年度は全国児童相談所225か所にアンケート調査を行った。回収は127か所(56.4%)であった。新規児童虐待相談件数は22年度(5児童相談所:3,855例)、23年度(122児童相談所:32,089例) の計35,944例であった。一時保護したのちの処遇は、自宅52.2%、里親3.6%、自宅以外親族1.5%、児童福祉施設入所中26.9%、一時保護施設入所中8.3%、入所解除6.8%、その他0.6%であった。児童相談所における対応は、面談による指導や家族支援プログラムが多くの児童相談所で行われ、その対象は両親が望ましいが現状はほとんどが母親への対応であった。現在行われているペアレンティングは、コモンセンスプログラム、My Treeペアレントプログラム、ペアレントトレーニング、完璧な親なんていない、トリプルPなどが試みられていた。また、介入型虐待ソーシャルワークの枠組み(サインズオブセーフティズアプローチ)も多くに相談所で採用されていた。 アンケート結果からトリプルPに関心を示した児童相談所のうち、次年度にプログラム実施を希望している6か所の児童相談所において、トリプルPの詳細な説明を行ったのちプログラム実践に向けての意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度の到達度は、①全国児童相談所225か所のアンケートを実施し、地域児童相談所の現況を把握したこと、②次年度の子育て支援プログラム実施が行えるようにファシリテーターを養成、あるいはすでに資格を取得しているファシリテーターを確保したこと、③プログラムを希望している児童相談所数か所を訪問し、子育て支援プログラムの概要の説明会を行い、プログラム実施を前提とした意見交換を行ったこと、④プログラム開発者であるサンダース教授の助言を得るため、クィーンズランド大学(豪州)を訪問し意見交換を行ったことである。 次年度プログラム実施について、地域児童相談所から被虐待児の保護者の選定についての困難性が指摘され、保護者のプログラム参加継続性についての心配、グループの形成(被虐待児の保護者のみとするか、地域保護者との混在とするか)の問題、プログラムの実施時期(一時保護中であるか、施設入所中であるか、自宅に復帰後を含めるか)などの課題が抽出され、次年度に向けて地域別にプログラム実施の方法を検討する必要性が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
子育て支援プログラム(トリプル P )の実施と評価を行う。児童相談所 6か所について、地域のニーズに応じてA 群(グループ標準トリプル P 実施群)、B 群(グループ SSTP 実施群)を設定する。A 群のスケジュール は1 セッション 2 時間×8 週間(5 回のグループセッション、3 回の個別電話相談)である。 B 群のスケジュールは1セッション 2.5 時間×9 週間(6 回のグループセッション、3 回の個別電話相談)である。 ともに、5-10 名の母親グループで実施する。効果の測定は①プログラム実施直前、②プログラム実施直後、③プログラム実施 3-6 カ月後に質問紙調査を行い、プログラム短期効果およびプログラム持続効果(長期効果)の測定を行う。質問紙は、サンダースらがプログラム効果測定に用いたものに準拠し、従来の国外の研究とも比較可能となるように質問紙を選択する。 以下列記するが、研究参加者の負担とならないように工夫する。子どもの状態は、① アイバーグ子ども行動調査票(Eyberg&Pincus, 1999)、② 発達行動チェックリスト(Einfeld&Tonge,2002)③ 子どもの長所短所調査票(Goodman,1997,1999)などを用いる。親の状態は、① 子育てスキル(Arnold,1993)、② 子育ての自信(Sanders&Woolley,2005)、③ 親の精神状態:うつ、不安、ストレス(Lovibond,1995)、④ 夫婦間の質指数(Norton,1983)、⑤ 子育て意見の衝突の程度(Dadds&Powell,1991)⑥ 両親の怒りの感情調査票(Hansen&Sedlar,1998)、⑦ 両親の虐待ポテンシャル(Milner,1986)、⑧ プログラム満足度調査(Sanders, 2000)などを用いる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
方法で示したように 6地域でのプログラムを実施する。1地域1~2グループの計10グループのプログラムを計画している。 1グループのプログラム実施には、プログラム参加者のテキスト購入費用(教材費、送料)、3 回のアセスメント冊子(複数の質 問紙からなるもの)印刷、アセスメント冊子郵送料、ならびにアセスメント解析費用を要する。プログラム(標準トリプル P:8 セッション、SSTP:9 セッションはファシリテーターへの謝金、交通費 は、1 セッションごとに発生する。以上から、1グループ5人で約18万円、10人で約20万円を要するため、今回はプログラム実施に要する金額は200万円程度と試算している。 また、養育者(主として母親)が参加する間の本人または児童が乳幼児の場合の保育料が必要であり、研究打ち合わせに係る予算等は間接経費と組み合わせて、予算経費の枠内で使用する予定ある。
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