2012 Fiscal Year Research-status Report
思春期のインターネット依存症の要因分析及び予防プログラムの構成要素の検討
Project/Area Number |
24593465
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima Bunka Gakuen University |
Principal Investigator |
成 順月 広島文化学園大学, 看護学部, 准教授 (00555055)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 秀美 広島文化学園大学, 看護学部, 教授 (10352006)
八島 美菜子 広島文化学園大学, 看護学部, 准教授 (40304381)
岡平 美佐子 広島文化学園大学, 看護学部, 准教授 (60441557)
原 ひろみ 広島文化学園大学, 看護学部, 講師 (90461318)
沢田 美代子 広島文化学園大学, 看護学部, 教授 (90565681)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | インターネット依存症 / 思春期 / 心身健康 / 生徒 / 前向きコホート |
Research Abstract |
生理的、心理的、社会的発達の重要な時期である思春期のインターネットの過剰利用は、学習能力の低下、社会スキルの欠如、社会的孤立、抑うつ、不眠症、無気力、身体機能や免疫力低下など様々な心身健康問題に悪影響を及ぼす。海外ではインターネット依存症に関する研究が活発に行われており、予防や治療に取り組んでいる。しかし、日本の思春期におけるインターネット依存症の実態はほとんど把握されていない。そこで、本研究は前向きコホート研究を通して、日本の思春期子どもにおけるインターネットの利用状況とインターネット依存症の有病率の実態を調べる同時に、インターネット依存傾向につながるリスク要因とインターネットの依存傾向が思春期子どもの心身健康に与える影響を明らかにすることで、インターネット依存症の予防プログラムの構成要素を検討することが目的である。 H24年度は、当初の研究計画の通り、本学の倫理審査委員会の承認を得た上で、広島県呉市にある中学校と高等学校を直接訪問し、学校長に調査協力を依頼した結果、6つの中学校と5つの高等学校から同意を得られた。H24年の12月から2月にかけて、同意が得られた学校の1年次と2年次の生徒全員に調査協力を依頼し、同意が得られた生徒に対して質問紙調査を実施した。その結果、3170人の生徒から質問紙への回答が得られた。 ベースライン時調査データを分析した結果、約18%の思春期生徒が中度のインターネット依存傾向であり、0.7%が重度の依存傾向にあった。また、女子生徒は男子生徒より、高学年は低学年よりインターネット依存傾向になりやすく、ネットの長時間利用、親と一緒に暮らしていないこと、部活に参加しないこと、ゲームや掲示板、性に関する情報を得ることを目的でインターネットを頻繁に利用することがインターネット依存症と関連する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画時には10月~12月の間に調査を実施する予定だったが、対象学校の確保に時間がかかり、実際に調査が実施できたのはH24年の12月からH25年の2月までの間で、調査期間は予定より少し遅れた。しかし、データ入力と整理、統計解析は予定通り進めることができたので、おおむね順調に進められたと言える。 本研究は、追跡研究であるため、対象生徒は記名や学生番号の記入が求められる。従って、中学校や高等学校から調査協力を得ることは容易なことではないことではなかった。そのため、目標対象者数4000人を集めることができなかった。しかし、それでも3000人あまりの対象者からデータ収集ができたことは大きな成果である。データの欠損値も予想より少なかったので、このデータ数であれば当初の研究目的を達成するための分析に耐えるには十分であると考える。 現在、統計解析を進めている段階であるため、なだ充分な分析はできていないが、分析結果の一部を海外の学会で発表するために演題を登録している。さらに、今年の日本思春期学会でも成果を発信し、インターネット依存症予防対策の検討に有力な情報を提供していく予定である。 今回収集できたのは、ベースライン調査データであるため、因果関係を明らかにするには限界があるが、日本の思春期生徒におけるインターネット依存症の有病率を把握することができただけではなく、インターネットの利用時間や利用機器、利用時間帯、利用場所、利用目的といったインターネット利用における実態を把握することができた。また、性別、学年別の違い、インターネット依存症に関連する属性、家族や学校関係、そして生徒のメンタルヘルスの関連を調べることができたので、今後の追跡研究を進めるにおいて、貴重な情報を得たことになる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の進め方 H25年度 6月まで:第1回目の調査データを徹底的に分析し、対象学校別に集計を行い、その結果をグラフや表でまとめ、協力校に報告する。7月~8月には、第2回目調査に用いる調査票を作成する。9月~10月には、第1回目調査データの分析結果を国内外の学会で発表する。10月~11月には、追跡調査が可能な協力学校を訪問し、12月からの第2回目調査協力を依頼する。12月~1月には第2回目質問票調査を実施し、2月~3月にデータ入力、整理、データ解析を行う。 H26年度 4月~6月に追跡研究結果に基づいて、インターネット依存症の予防対策について構想し、7月~8月に専門家を招いて、実行可能な予防プログラム作成のための検討を行い、9月~12月に予防プログラム素案作成する。1月~3月には予防対策パンフレットを作成し、学校に配布する。 以上を進める当時に、本研究で得られた成果を論文として国内がの学会誌で発表することで、得られた情報を幅広く発信していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
第2回目調査にかかる費用約50万円と予定している。対象校の訪問にかかる交通費、質問紙の印刷費、封筒、礼品、質問紙配布と回収にかかる交通費が含まれる。データ処理にかかる費用と人件費として約60万円を考えている。 協力校に渡す調査結果報告書や予防対策関連パンフレットの印刷や配布に約20万円、国内外の学会発表にかかる費用と旅費に約100万円、プログラム検討のために研究会議費用と専門家の交通費や宿泊費を含めて約50万円を予定している。 その他研究に必要な消耗品、結果発表に必要な書籍や論文投稿に必要な英文校正などを含めて約50万円を予定している。
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