2012 Fiscal Year Research-status Report
認知症高齢者本人の意向を尊重した意思決定を行うための支援に関する研究
Project/Area Number |
24593502
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
杉原 百合子 京都府立医科大学, 医学部, 講師 (90555179)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 認知症 / 家族介護者 / 意思決定 |
Research Abstract |
本研究は、認知症罹患後の生活上の重要な選択において、認知症高齢者本人の意向を尊重する意思決定への支援方法の構築を目的として、高齢者とその家族が意思決定していく過程を、認知症罹患の早期から観察し、意思決定に影響する要因とその変化を明らかにしようとするものである。認知症の早期の段階から、1年後、2年後と継続して、認知症高齢者本人と家族双方にインタビューを行い、決定における本人の参加の程度、本人の意向についても焦点をあてる。さらに調査時の認知症高齢者と家族の状態について各種スケールを用いて測定し、医学的所見も含めた状態把握を行い検討する。そして、早期からの、かつ双方へのインタビューから得られた示唆をもとに、認知症高齢者と家族の意思決定過程における支援の構築を目指す。 本年度の成果は大きく次の2点に集約される。 第1点は、調査の準備として先行文献の検討を行い、さらに本調査に先駆けて行っていた重度認知症患者家族への意思決定に関する聞き取り調査を経時的に詳細に分析した。これは、本研究で行う認知症高齢者およびその家族への聞き取り調査の時期的な考察に役立つことを目的としており、①受診までの時期、②介護サービス開始検討時期、③施設入所検討時期の3時期の変化を検討した。その結果、時期を経るごとに意思決定に関連する要因が増加しており、またそこに介護負担感が強く影響することが示唆され、意思決定の複雑さが明らかになった。 第2点目は、早期認知症高齢者とその家族へ意思決定に関する聞き取り調査である。現在、3組合計6人への一回目のインタビュー調査を実施し、調査時には、認知症高齢者の認知機能状態、家族介護者の介護負担感、抑うつ度の調査も同時に行った。すべてのインタビューで録音を行い、逐語録を作成した。今後インタビュー調査を継続して行い、分析を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本調査に先駆けて行っていた重度認知症患者家族への意思決定に関する聞き取り調査の経時的な分析は順調に進行し、論文発表、学会発表を行った。 早期認知症高齢者とその家族へのインタビュー調査については、申請時の計画では今年度中に10組行う予定であったが、調査に該当する初回受診患者数が少なく、現在調査が終了したのは3組である。調査に該当すると思われる患者には早めのリクルートを行ったが、現代における認知症をめぐる社会環境が変化していることが、調査対象者が少なかったことに関連していると思われる。具体的には、MCIあるいは問題なしと診断されるケースが予想より多かったこと、独居で単身で受診される患者も多くなっていること、診断を受けて地域のかかりつけ医に戻る患者もいること、精神症状が強く調査に向かない患者も多いこと、などが挙げられる。今後も引き続き、該当する患者とその家族を対象に調査を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
認知症高齢者とその家族へのインタビュー調査を引き続き行う。現在4組の調査を予定しており、今年度内に10組に対する一回目の調査と、今年度一回目を終了した3組に対する二回目の調査が終了できる予定である。インタビューと並行し、すでに調査を終えたインタビューの逐語録の質的分析を実施し、認知症高齢者とその家族の意思決定に影響する要因とその変化を明らかにしていく。 また、平成25年9月に開催されるフィンランドとの2国間セミナーにて、現在までの研究内容の発表と情報交換を行う予定としており、福祉先進国での認知症ケアや意思決定に関する知見を得ることが期待できる。 上記の2つから得られた知見をもとに、認知症高齢者の意思決定に関する支援の方法を検討していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き実施予定のインタビュー実施の際、認知症高齢者の聞き取りを行う人員への謝礼、インタビュー内容の録音テープから逐語録を作成するためのテープ起こしの謝礼に使用する。 また、平成25年9月に開催されるフィンランドとの2国間セミナーにて、現在までの研究内容の発表と情報交換を行う予定であり、そのための旅費が発生する。
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