2012 Fiscal Year Research-status Report
がん看護臨床での「家族-医療者コンフリクト」の予防的看護介入スキルの開発
Project/Area Number |
24593531
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
柳原 清子 東海大学, 健康科学部, 教授 (70269455)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 玲子 東海大学, 健康科学部, 准教授 (80349414)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | がん患者・家族看護 |
Research Abstract |
がん臨床における患者・家族のコンフリクト研究で、今年度は2つの課題(テーマ)を実施した。 (1)家族システム(患者を含む)における「合意形成モデル」の作成と論文化 がん臨床におけるコンフリクトの多発としては、意思決定場面が最も多い。患者の治療をめぐってのことや終末期のセデ―ション(鎮静)、退院をめぐる行先、患者への予後告知等、倫理的問題を孕むことも少なくない。これまでの意思決定支援モデルは、患者、家族メンバーという個人を焦点化し、インフォームドコンセントのあり方が示されてきた。今回開発したのは、家族システム内と家族システム外における合意形成モデルで、論文化し専門誌に投稿した。また研修会等で、啓発活動をはかり始めている。 (2)がん臨床における看護師の意思決定支援とジレンマ(退院支援に焦点をあてて) がん患者の多い大学病院の看護師約400名に対して、量的調査研究を行った。焦点は退院支援である。医療の複雑化の中で、患者・家族とのコンフリクトは、退院をめぐっての場面が多い。一方で、看護師が実際どの程度、退院支援(意思決定支援)への認識とスキルを持っているのか、またジレンマ(=コンフリクト感情)として何があるのか、調査を行った。がん臨床の看護師は支援の必要性は認識しているものの、患者・家族に対する病状認識や意向の確認、チームへの働きかけなどの調整機能は、クリティカル領域看護師よりは高いものの、母子小児病棟との比較においては低い傾向が見られた。またジレンマとしては、家族アプローチではコーピングタイプや信条などの把握が難しく、チームアプローチでの連携を難しく感じていた。 、
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的1:コンフリクトを予防する「円環的コミュニケーションスキル」の開発 開発を計画した<がん臨床-システム的円環コミュニケーションアプローチ>は、アセスメントと、支援(介入)が同時に進行していく方法である。このスキル開発には、アセスメントと、それによって分類された個々に対する支援方法が提示されなければならない。アセスメントとしては「渡辺式家族アセスメントモデル」でパターンは明確になっているが、介入方法のパターン化は途上である。 目的2:開発した仮スキルのモニタリング 既存の、ジョイニングやリフレミング、ミラクルクエスチョンなどの多様なスキルを用いてのコミュニケーション方法を、学会、研修会、研究会等で看護職に広報した。その場での理解は良いが、日常的に臨床で実施していくには、「難しい」「高度でできない」という反応でハードルを高く感じている。一方で看護師の、暗黙知・実践知の調査研究からは、それなりの(コンフリクト予防対応)はできており、既存の対人関係スキルを、実践レベルまでにして、平易な型(パターン)にしていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
以下3つの課題を達成する (1)24年度の調査研究を、看護師の視点からの意思決定支援の実態とコンフリクトの視点で論文にして投稿する。 (2)「システム的円環コミュニケーションアプローチ」介入パターンを完成させ、特定の病棟での教育・研修会を年間3~4回程度開催して、その広報と効果を確かめる。研修では、実際にロールプレイをしながらスキルの普及をはかる。 (3)学会や関係する研修会等の場でも、積極的に「システム的円環コミュニケーションアプローチ」を紹介していき、25年度末には、書籍としてまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国際学会で2つ発表する。『IFNC:国際家族看護学会inミネソタ』では、家族と医療者間のコンフリクトパターンに対応した介入パターン(仮説)を提示する。また『IPOS:国際サイコオンコロジー学会in ロッテルダム』では、我が国のがん臨床における看護師の意思決定支援の状況とジレンマを発表する予定である。これらの国際学会参加費として、80万万円計上する。 コミュニケーションスキル洗練と広報のため、アルバイト、講演会などの謝金に50万円、研修、研究会等の運営費に10万円、その他雑費として10万円計上する。
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