2012 Fiscal Year Research-status Report
発達障害児者のための表情認知・同調スキル獲得支援システムの開発
Project/Area Number |
24600005
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
小越 康宏 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80299809)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 軽度発達障害 / 刺激表情 / 表情の認識 / 表情の同調 / 表情筋の活動 |
Research Abstract |
近年、LDやHFPDDなどといった社会性の発達において未熟のある発達障害児者に対し、教育機関が積極的に支援していくことは重要な課題とされている。発達障害児者における他者理解の特性を解明し、対人的スキル向上を支援するために、状況の中での表情認知の能力に焦点をあて、表情認識の弱さの原因を行動・認知・生理指標の特徴から解明し、それに基づく支援システムの導出を行う。主要な目的は、①発達障害児者の行動の特徴分析:学校、家庭内での行動履歴の収集・分析、②表情認識アプリケーションの開発、③コミュニケーション時の表情の同調性のための表情筋トレーニングシステム開発の3点である。 平成24年度は、次の(1)と(2)の項目を中心に研究を推進した。 (1)発達障害児者の日々の行動の特徴の検討:日々の行動履歴データベースの開発・分析 「保護者と学校と専門家をつなぐICTを用いた発達障害児者の行動把握システム」で蓄積された日々の行動履歴データベースのチェック項目を国際的な指標、国際分類(ICF-CY)を用いて標準化、コード化し、観測値を数値的なパラメータに置き直し、データマイニングにより発達障害児者の行動パターンを分析し、社会性への問題を計量化した。その際事例検討会において、保護者、専門家とともに特徴分析結果の評価を行った。特に、表情を介したコミュニケーションを苦手としている人達を対象に、表情認知や表情表出など、どこの過程に苦手な要素があるのかを分析した。 (2)表情トレーニングシステムの試作開発:訓練者の顔面に電極を貼付しコンピュータのモニタ(およびカメラ)と対面させる。モニタには、訓練対象の教師の表情と訓練者の表情を並べて表示する。コンピュータの指示に従い表情を模倣する。そのときの表情筋の活動状態を筋電図により分析し、結果を訓練者にフィードバックするとともに、訓練の履歴を記録できるシステムを開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
場面に応じて適切な自然な表情をつくることは、表情を介して円滑なコミュニケーションを行う上で非常に重要である。我々は、このようなことを苦手としている人達の対人スキルを向上させるための新しい表情トレーニングシステムの開発を進めてきた。 従来から我々は、画像処理を用いた表情訓練システム(訓練者の顔画像をモニタに表示し、表情筋のトレーニングメニューに従い、モニタを見ながら自分の表情を確認するシステム)の開発に取り組んできた。今回の研究テーマはその延長線上にある。銀皿電極を訓練者の顔面に貼付して顔面筋電図を計測し、目標の表情をつくるときに必要とされる表情筋の活動を調べ、訓練結果のデータを記録するとともに、訓練者にもその活動の様子をフィードバックする新しいシステムを作ることを目的としている。 平成24年度以前は、主に、表情トレーニングに必要となる基礎的なデータ(表情と表情筋電位活動に関するデータ)の分析を行ってきた。しかし、それまで用いてきた現有設備(生体アンプ収録装置)ではオフライン分析しか行えず、新しいシステムを構築するためにはリアルタイム分析が必要となった。 そこで、平成24年度はリアルタイムを行うためのシステムを設計・製作することとした。システムのハードウェア部分は、生体アンプ回路、アナログ・デジタル入出力を行うためのインタフェース回路、制御用と分析用のコンピュータなどで構成した。コンピュータを制御するためのソフトウェアも開発し、目指していたプロトタイプシステムを完成させることができた。 上記は平成25年度に計画していたことであるが、当初の計画以上に進展があり、早く達成することができた。さらに、画面上で動かすべき表情筋の指示を行うとともに、振動モータにて表情筋に指示やバイオフィードバックを与える新しい機能も付加することができ、それらの動作確認や調整なども順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の計画・方法は以下の(1)、(2)に従い推進する。 (1) 表情認識アプリケーションの開発・運用:コミュニケーションの時に相手の表情をリアルタイムに分析するアプリケーションを開発し、パソコン(あるいは、携帯端末)に実装する。それを、実際に発達障害児者に利用してもらい評価する。 (2)コミュニケーション時の表情の同調性のための表情筋トレーニングシステム開発:発達障害児者と定型発達児者の表情同調の実験分析結果より、発達障害児者の同調の弱さを解明し、発達障害児者が同調すべき表情を意図的に作るためのトレーニングシステムの開発を行う。具体的には、定型発達児者が表出する表情筋と発達障害児者が表出する表情筋に差がある部分に関し、以下のi)、ii)の方法によるトレーニングを実現するシステムを開発する。 i) 発達障害児者が表情の同調トレーニングを行う際に、顔面筋を計測しながら、定型発達児者が動かす表情筋の部分と差異がある部分を、顔面上に貼り付けた振動子によって振動を与えることでバイオフィードバックを行い、どこの表情筋を動かして表情を表出させるかを教示させる。 ii) 画面上に自分の表情を写しながら、顔面筋を自分で動かして、目標表情に合わせるように表情をつくるよう促す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1) 表情・脳波実験の被験者への謝金 (2) (1)の実験補助者への謝金 (3) 国際会議発表のための旅費 (4) 国内学会発表のための旅費 (5) 実験に必要とされる消耗品(電極やアルコール等)
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Research Products
(13 results)