2013 Fiscal Year Research-status Report
小一プロブレム克服のための実行機能育成プログラム:就学前から小学校までの縦断研究
Project/Area Number |
24600009
|
Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
松村 京子 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (40173877)
|
Keywords | 小1プロブレム / 実行機能 / STARTプログラム / 小学1年生 / 学習成績 |
Research Abstract |
日本の教育現場では現在,「小1プロブレム」と呼ばれる問題が起きている。教員の話を聞かない,指示通りに行動しない,授業中に立ち歩くなどの行動である。このような問題行動は実行機能(Executive Function)の未熟さに起因する, と捉えることができる。 筆者は,特に注意集中とセルフコントロールを強調し,実行機能と社会情報処理能力の育成を意図したSTART(Social Thinking & Academic Readiness Training)プログラムを開発した((株)医学映像教育センター)。そこで,本研究ではSTARTプログラムの中の実行機能に関連する内容を就学前児に実施し,その効果を小学校低学年まで縦断的に検討することを目的とした。 幼稚園,保育所へ通う5,6歳児207名(男児90名, 女児117名)を対象とし,実行機能の測定として,行動性セルフレギュレーションの指標として知られているHTKS (Head-Toes-Knees-Shoulders)課題(Cameron & McClleland, 2011), WISC-IIIの逆唱課題, K-ABCの手の動作課題を実施した。測定は年長児期の10月に行った。 それらの就学前児(5,6歳児)を対象とし,小学校入学後の学習成績について検討を行った。測定は小学1年生の3学期に行った。実行機能測定後16カ月経過していた。算数,国語,社会性について担任教師に5段階での評価を依頼した。得られた結果から欠損値を除外すると164名のデータが得られた。HTKS課題では算数(r=.165, p=.035)と社会性(r=.183, p=.019),K-ABC手の動作課題は算数(r=.326, p<.001),国語(r=.350, p<.001),社会性(r=.247, p=.001),WISC-IIIの逆唱課題では算数(r=.357, p<.001),国語(r=.293, p<.001)との有意な相関が認められた。これらの結果は,就学前時の実行機能が小学校入学後の算数,国語の成績に関係することを示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度実行機能を測定した就学前児を対象として,小学校入学後の算数と国語の成績,社会性の調査を行い,実行機能との関係性を検討できたことから,研究は順調に進んでいるといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,さらに上の学年での実行機能と学業成績との関連性を調べることと,諸外国での結果と比較検討を行う予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国際学会での発表を予定していたため。 フィンランドのユバスキュラ大学で開催されるEARLI SIG 5 Conference 2014に参加する予定。
|