2015 Fiscal Year Annual Research Report
小一プロブレム克服のための実行機能育成プログラム:就学前から小学校までの縦断研究
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24600009
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
松村 京子 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (40173877)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 実行機能 / セルフレギュレーション / STARTプログラム / 小1プロブレム / 抑制機能 / 就学前児 / 学習成績 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の教育現場では,「1年生で,教員の話を聞かない,指示通りに行動しない,授業中に立ち歩くなどの行動が数カ月にわたって継続した状態」とする(東京都,2009)「小1プロブレム」と呼ばれる現象が,大きな問題となっている。このような問題行動は実行機能の未熟さに起因する, と捉えることができる。 申請者は,北米の様々な実行機能向上プログラムの中から,注意集中とセルフコントロールを強調し,実行機能と社会情報処理能力の育成を意図したGOALS(Goal Orientation, Attribution Learning & Self-control)プログラム(Schultz & Betkowski, 2008)に注目した。彼らの了解のもとに,日本の教育実態に合ったSTART(Social Thinking & Academic Readiness Training)プログラムを開発した((株)医学映像教育センター)。本研究では,STARTプログラムの実行機能に関連する内容を就学前児に実施し,その効果を検討することを目的とした。 STARTプログラムを実施した実施群の5歳児の実施前と実施後の実行機能を測定し,従来の教育を行った対照群の5歳児の測定結果と比較した。その結果,プログラム実施群の実行機能の有意な向上が認められた。次に,5歳児で実行機能を測定した子どもの1年後の小学1年生時点で,算数、国語、社会性の成績について担任教師に5段階指標での採点を依頼した。その結果,実行機能と算数、国語、社会性との有意な相関関係が明らかになった。さらに,4歳児から5歳児までSTARTプログラムを実施し,縦断的に実行機能の変化を調べた。その結果,抑制機能は4歳児期,5歳児期ともに向上したが,ワーキングメモリ―への効果は5歳児において見られ,実行機能の各下位要素の発達の感受性が異なることが示唆された。
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