2012 Fiscal Year Research-status Report
子どもの疲労の神経基盤解明による治療法の開発-慢性疲労とPC・携帯電話依存の関連
Project/Area Number |
24600014
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
川谷 淳子 熊本大学, 医学部附属病院, 診療助手 (30423669)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 敬 独立行政法人理化学研究所, その他部局等, 研究員 (60464616)
上土井 貴子 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (90363522)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 小児型慢性疲労症候群 / インターネット依存症 / 機能的磁気共鳴画像法 / 自律神経 |
Research Abstract |
本研究では、小児型慢性疲労症候群(CCFS)と携帯電話・インターネット依存症という同じ「疲労」を主訴とする子どもにおいて、CCFSでは報酬系に関わる脳領域の賦活低下、携帯電話・インターネット依存症では過剰賦活といった相反する神経基盤が関与するのではないかという仮説を立て、両疾患における報酬の知覚に伴う脳賦活度および賦活パターンの相違を、機能的磁気共鳴画像法(functional MRI: fMRI)を用いて検証することを目的とする。 小児期や思春期は一生のうちでも最も成長発達が期待される時期であり、人格形成や脳の発達などにおいて重要な時期でもある。そのため、疲労の持続により学校生活や日常生活が破綻されることは小児の発達に非常に大きな打撃を与える。これらの報酬系の神経基盤仮説を客観的に評価し検証することができれば、治療法が確立していない「子どもの疲労」においても神経基盤に基づく治療法の選択が可能となる。 CCFS患者、携帯電話・インターネット依存症患者および健常者を対象とし、報酬系の神経基盤解明のため、金銭報酬の知覚に伴う賦活度・賦活パターンをfMRIにより計測・解析する。fMRI試験(報酬課題)前、試験直後、試験数時間後において、主観的疲労度は質問票により評価し、客観的疲労度は脈波計測から加速度脈波に変換し得られる交感神経と副交感神経成分比を用いた自律神経機能により評価し、労作後の易疲労性と疲労回復力を検証する。また、疲労・学習意欲・携帯電話・インターネット依存等の各種質問票により算出されたスコア、知能・認知機能、fMRIおよび加速度脈波パラメータ間の相関解析を実施する。さらに、得られた研究成果を活用し、報酬系の神経基盤に基づく薬物治療や自律神経機能調節に資する高照度光療法、サウナ療法等の治療を取り入れた治療法の検討を行い研究課題の達成を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CCFS患者と携帯電話・インターネット依存患者および健常者の報酬系の神経基盤・自律神経機能解析のため、fMRI用報酬課題(金銭報酬課題)を用いたfMRI実験、脈波計測を行った。本年度は、13-15歳(中学生)のCCFS患者7名、インターネット依存患者1名、健常児5名を対象にfMRI実験前に閉眼安静時の脈波計測、VASによる疲労感測定後、報酬課題を用いたfMRI実験を約40分程度実施し、VASと脈波をfMRI実験直後(易疲労性を評価)測定計測した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に引き続き同様の質問票、自律神経機能およびfMRI実験を行い、健常者、CCFS患者、携帯電話・インターネット依存症患者およびADHD患者(先行研究データを用いる)における報酬系の神経基盤および自律神経機能を主軸とした相関解析や多変量解析等を用いて各々の臨床像の類似性、相違性を解明する予定である。 可能であれば報酬系の神経基盤と自律神経機能を主軸としたCCFS患者と携帯電話・インターネット依存症患者の臨床像を明確化するバイオマーカー検査およびパラメーターを同定し、治療薬物(ドーパミン作動薬や遮断薬)の選択、自律神経機能調節機能が見込まれる高照度光療法とサウナ療法を候補とする治療効果を検証する。さらに、一連の成果から、疲労予防のための適切な成育環境について考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
MRI関連消耗品およびデータ統合解析用ソフトなどの実験関連費用を必要とする。 本研究を進めるにあたり、円滑な研究打ち合わせ(実験を含む)が不可欠であり、それに関連する旅費が必要となる。 本研究に関する専門職員(放射線技師など)、各種検査補助のための専門的知識、技術を有する技術補佐員の人件費、研究協力者(被験者)に対する謝金が必要となる。 以上、必要に応じ適切に使用する計画である。
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