2015 Fiscal Year Research-status Report
格差社会が子どもの健康と命に及ぼす影響の早期発見と自分で自分を守る力を育む教育
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24600025
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Research Institution | Aoyama Gakuin Women's Junior College |
Principal Investigator |
渡部 かなえ 青山学院女子短期大学, 子ども学科, 教授 (50262358)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 子ども / 健康 / 教育 / 格差 / 生きる力 |
Outline of Annual Research Achievements |
子どもの生きる力を支える行動学習について、ピンセットで対象物をつまみゴールに運ぶという運動課題の習得過程と、同じ課題のサルの結果の比較から検討した。実験の結果、ヒトの子どもは、当初は各動作を一つ一つ順番に行っていたが、すぐに一つの動作が完了する前に次の動作を開始するようになり、複数の動作を並行して、あるいはオーバーラップさせて行えるようになることが分かった。また、教える-学ぶという生育環境を持たないサルの結果との比較で、ヒトの子どもの行動学習は、教える-学ぶという学習環境があるか否かに依存すること、教える-学ぶ環境に恵まれない子どもは、探究動作、対象物との間のアフォーダンスの獲得、動作の統合・協調などの発達が遅れることが推察された。(渡部かなえ、小児の道具操作の適応と学習プロセスの事例研究、青山学院女子短期大学紀要, 第69輯, pp.141-149, 2015.) また、子どもの健康と健康教育の国際比較から、経済格差が大きいニュージーランドでは、公立学校間の教育格差、子ども達の学習格差や健康格差にも及んでいるという問題点が明らかになった。日本では、公立学校間の格差はほとんどなく、一定レベルの授業内容が保証されていたが、一方、10年に1度しか改訂されない学習指導要領に記載されていない、子どもが今、直面している健康問題を授業で扱えないという問題点が明らかになった。(Watanabe K., Dickinson A., Comparative study of children's current health conditions and health education in New Zealand and Japan. Contemporaly Issues in education research, Vol.8, No.2, pp117-122, 2015)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
子ども達が自分でじゅぶんを守る力の育成について、道具操作の学習プロセスの観察を通して、生きる力の獲得から検証することができた。また、格差社会が子どもの健康に及ぼす影響について、米国やスウェーデンよりも、国土の大きさや島国であるなどの地理的条件が日本により近く、しかし社会の経済格差が非常に大きいニュージーランドと、子どもの健康や学校での健康教育の実態の比較から、経済格差が子どもの教育格差、健康格差に大きな影響を及ぼしていることが明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、小学校以上の子ども(児童・生徒)の、学校での健康教育や健康の状態について検証してきた。今後は、就学後の健康と成長に影響を及ぼす幼児期の健康と、生きる力の基盤となる自然や命についての原体験の機会子ども達に与えていくことができる教育や保育のありかたを提言することを目指した検証研究を行う。
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Causes of Carryover |
次年度(2016年4月1日付)で他大学に異動することになり、異動前に依頼された多くの業務ため、研究に費やせるエフォートが著しく低下したため、2015年度に行う予定だった国際学会や論文投稿による研究成果の発表を2016年度以降に延期せざるをえなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究成果発表のための国際学会への参加や、ジャーナルに論文を投稿する上で必要な、研究資料(図書や論文)の購入、英文論文の校閲料やオープンアクセス料に使用する予定である。
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