2012 Fiscal Year Research-status Report
非線形的画質挙動のX線CT画像の画質測定法の開発と逐次近似的再構成の画質実態解明
Project/Area Number |
24601003
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
森 一生 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90375171)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
町田 好男 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30507083)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | エックス線・CT |
Research Abstract |
本研究の目的は次の通りである:近年のCTの逐次近似的画像再構成法の画質は非線形挙動をする。非線形的挙動の画質評価の方法は未確立であり、従来の画像評価法を用いることで全くの過大評価となっている。それらの報告の通りに被曝を減らせるのかも信じること はできない状況である。このような問題の解決が目的である。 まず、今年度の計画の第一は、一部のCT 実機の逐次近似的再構成の挙動の初期調査である。予定どおり、逐次近似的再構成のうち最も普及しているものについて、低CNR では雑音低減と倶に解像力低下する、実質的に画質の向上は無いということを定量的に確認した。今年度の計画の第二は、超低CNR 非拡大再構成の画像から正確にMTFを求める手法の開発である。予定通り、PSF法、ESF法、LSF法の全てについて雑音耐性を向上させた手法を開発し、精度維持のために必要なCNRのレベルを確認した。本件はH25年度の放射線技術学会および日本CT技術研究会で発表するとともに、論文化する。今年度の計画の第三は、一部のCT 実機の逐次近似的再構成のNPS を正確に把握する準備である。予定通り、特に重要な低周波域のNPS計測精度を確保する方法を得た。論文執筆中である。 さらに、逐次近似的画像再構成法の画質の誤評価問題について、二度の講演と論文による解説で全国の関係者に注意を促すことができた。 最新の学会の状況としては、解像力指標として従来の方法によるMTF測定を行う誤った例は激減しつつあり、また雑音評価にも雑音標準偏差ではなくNPSを採用する例が増えている。両点は我々の研究方向に近づきつつある。我々の活動が認知されたことも寄与しているだろう。しかしそれら研究報告ではMTF、NPSともに極めて低精度であり、逐次近似的画像再構成法を正しく評価できるレベルにはほど遠い。我々が最先端に位置していることは確かである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は概ね目標通りの成果を挙げた。主要な実績については、従前からの調査及び技術蓄積によるものが大きい。 超低CNRにおいてのMTF測定法は、過去5年間の研究蓄積に基づくものであり、今回はその技術を系統的にLSF法、ESF法、PSF法に適用し、慎重な性能評価を行った。元来各種のMTF計測法において精度や耐雑音性は検討されておらず、さらには技術的検討を重ねた上で得た耐雑音性能と精度は、従来では到底達成できなかったものであり、予定通りの成果だと考える。 NPS測定においては、本法で普及している方法は低周波域の誤差が顕著であり、逐次近似的再構成の評価には用い得ないことを従前から認識しており、問題解決のための技術基盤は相当に固めていた。今回は、その技術を元にしたものである。低周波域の誤差の由来とその対処法を明らかにした点で予定通りの成果だと考える。しかし、まだ論文化が完了していないこと、理論的基盤が確立していない部分があること、および今後は三次元的NPSまで拡張した考え方を整理しなければならない、という課題が残っている。 一部のCT 実機の逐次近似的再構成において、喧伝される画質向上は存在しないと言うことを画質の物理評価で結論できそうなデータを得られたのは、上記MTF計測法とNPS計測法の基盤によるものである。信頼度や誤差評価においてまだ残務があることと、他の逐次近似的再構成への展開が今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに多様な逐次近似的再構成および本格的な逐次近似再構成について画質改善実態の調査を進める。 これにあたり、一部の逐次近似的再構成においては、体軸方向すなわちSSP方向についての処理が入っていないと見られ、それらの場合は今年度積み上げた技術で調査を進められる。 しかし、最新の逐次近似的再構成および本格的な逐次近似再構成では体軸方向の処理が関わっていると想像される。その兆候を示すデータは部分的に得ている。この場合、低CNR条件で、かつ局所では無く大域でのSSP計測がmatched filter SNR(MFSNR)のような客観画質指標の算出に必須となってくる。低CNRかつ大域でのSSP計測は未だそのような取り組みの例は全く無く、新規の技術開発が必要である。まずはこの計測法の開発にチャレンジする。その上で、三次元的なMFSNRの理論検討を行い、最新の実機の逐次近似(的)再構成の真正な画質改善程度の算出まで行いたい。 低CNRかつ大域でのSSP計測と三次元的なMFSNRの成否はまだ保証の限りでは無いが、うまく行かない場合でも、体軸方向の処理を伴わない二次元アキシャル面内だけの逐次近似(的)再構成について集中的に取り組み、これらの「真正な」画質改善程度を定量的に明らかにすることで、事態の本質は捉えたと言えるであろう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次のように出費計画をしている。 物品費としては、特に低CNRかつ大域のSSP計測のためのファントム開発が必要で、さらに実機の画質挙動を観測した結果あらたな性能指標測定のファントム製作が要る可能性もあり、これらファントム製作費用が大部分を占める。 旅費としてはCT実機のデータ採取のための出張が2人×5回、今年度の成果発表のために国内学会2人×3回、海外学会2人×1回等の発生を予想している。 その他費用としては、3件前後の論文化費用があり、英文化費用も発生する。そして人件費・謝金の費用としては、各種CT実機のデータ採取にあたりCTを運転していただく病院技師や、視知覚試験の画像観察者への謝金が発生する。 今年度は研究を効率的に推進したことに伴い未使用額が発生したが、これは平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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