2013 Fiscal Year Research-status Report
救急医療のためのポータブルX線機能イメージングシステム(診る聴診器)の開発
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24601007
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
田中 利恵 金沢大学, 保健学系, 助教 (40361985)
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Keywords | 肺機能イメージング / X線動画像 / コンピュータ支援診断 / 救急画像診断 / 肺換気 / 肺血流 / 呼吸器 / 循環器 |
Research Abstract |
H25年度は,腹部領域を対象とした出血部位検出のための画像解析法を開発,ゴールドスタンダードと本法の解析結果の比較,本法の診断能と適用範囲の解明,骨陰影除去による解析精度の向上を主に行った.以下にその概要を示す. まず,これまで構築した初期データベースを対象に,腹部領域を対象とした出血部位検出を検討し,血流動態をX線透過性(画素値)の変化としてとらえられることを確認した.次に,これまで取得した症例のうち,ゴールドスタンダート(肺シンチグラフィ・CT・肺機能検査の結果)のある83症例を対象に,評価用の本データベースの構築を行った.そして,これらゴールドスタンダードと本法の結果を比較することで,本法の診断能と適用範囲の解明を試みた.その結果,肺シンチグラフィ上で肺換気および血流欠損部として検出される部位を,開発手法でもX線透過性(画素値)変化量の減少部位として検出できることを確認した.さらに,本データべースの83症例を対象に,画像処理により肋骨陰影を除去した軟組織動画像と,その副産物として骨陰影だけの動画像(=骨動画像)を作成した.作成には,アメリカで開発されたソフトウエア(共同研究先の東陽テクニカ提供)を使用した.このソフトは胸部レントゲン検査における肺がん(=肺結節)検出率向上を目的に開発されたもので,胸部X線動画像への応用は世界初の試みである.軟組織動画像を解析対象とすることで,解析精度を大幅に向上できる可能性が示された.さらに放射線治療への応用を試み,肺がんの追跡照射精度を向上させることを確認した.一方,骨動画像を対象に肋骨動態の定量解析に成功し,解析結果は肺機能診断の一助となることを確認した.救急医療における簡便かつ迅速な機能イメージングの開発を最終目標に,開発から臨床評価まで,新しいイメージング開発に必要なプロセスを横断的に行うことができている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下にH25年度の計画を示す.これらはほぼ予定通りに進展している. H25年度:腹部領域を対象とした画像解析法の開発,臨床評価 (1) 腹部領域を対象とした出血部位検出のための画像解析法を開発する,(2) ゴールドスタンダードと本法の結果を比較し,本法の診断能と適用範囲の解明する,(3) 画像処理による骨陰影除去を行い,解析精度の向上を試みる. (1)は,構築した初期データベースに対象となる症例がなかったため,呼吸器疾患症例のうち撮像視野内に腹部領域を含むものを対象に,画像解析法の開発を行った.そして,血流動態がX線透過性(画素値)の変化としてとらえられることを確認した.出血部位をどれだけの精度で検出できるかが,来年度の課題である.(2)は,肺シンチグラフィ所見と比較することで達成した.解析は昨年までに開発した自作ソフトウエアを用いた.肺シンチグラフィ上で肺換気および血流欠損部として検出される部位は,開発手法でもX線透過性(画素値)変化量の減少部位として検出できることを確認した.しかし,フレーム間位置合わせが不十分な部位で,肋骨アーチファクトが発生し解析精度の低下を招いた.精度向上のための技術開発が次年度の課題である.特筆すべきは,(3)に期待以上の大きな成果があったことである.本研究の目的を達成するだけでなく,2つの応用技術開発につながった.開発技術は特許申請し,その有用性を国際学会で6回発表した.症例データの収集と画像解析プログラムの開発等を並行して行うことで,研究を効率的に推進できている.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,異常部位を自動検出する診断支援機能部の開発を行う.開発した画像解析プログラムを搭載した診る聴診器を試作し,ポータブルX線機能イメージングの可能性を明らかにする.異常検出は,①正常パターンからの逸脱,もしくは,②同一症例における左右肺での非対称分布,を根拠に行う.そのために,まず,正常と異常の範囲を明らかにする必要がある.開発は,換気・血流・肋骨動態の3項目を平行して行う.開発手法の評価は,本データベースに収録された症例を対象に行う.評価基準は,肺シンチグラフィ所見との一致度,及びCT・肺機能検査の各所見との比較など,総合的に行う.また,肋骨陰影を除去した動画像(=軟組織動画像)を対象とした解析も引き続き行い,肋骨陰影除去処理の動画応用の可能性を明らかにする.特に,フレーム間位置合わせが不十分な部位で発生する解析エラーの解決法として期待している.以下にH26年度の計画を示す. H26年度:診断支援機能の追加,試作機の開発 (1) 本データベースを対象に臨床評価を行い,正常と異常の範囲を明らかにする,(2) 正常パターンからの逸脱を根拠に異常部位を自動検出する画像解析プログラムを開発する,(3) タブレット型コンピュータで使用可能な汎用性の高いソフトウエアを開発する.(4)研究成果を国際社会に向けて広く発信するために,当該分野で最も影響力のある,北米放射線学会,米国医学物理学会,ヨーロッパ放射線学会などの各学会で初期研究成果を発表する.
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